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「低」コンテクスト文化には気を付けろ

前回、コンテクスト(文脈)文化についてお話ししましたね。
「高」コンテクスト、「低」コンテクストの違いをもう少し実例を挙げてみます。

イタリアに駐在していた時、
同じ会社の日本人の先輩はマンション住まいでした。
ある日、上の階の住人(イタリア人)が仲間と騒いでいて
階下に住んでいる先輩の部屋まで騒音が届いていました。
夜中過ぎても続いていたため、さすがに我慢しきれず、
先輩は上の階へ怒鳴り込みに行きました。

先輩が「コンコン」とドアをノックしたら、すぐに若い兄ちゃんが顔を出したので、
先輩はイタリア語で「今、何時だと思っているんだ!」と多少声を荒げて、眉を吊り上げながら、責めるように言いました。

すると若者は、なぜわざわざ時間を聞きに来たのだろうと
不思議そうな顔をしておもむろに時計を見て、「12時40分ですよ」。

まったく想定していなかった反応に、先輩は返す言葉も思いつかず、すごすごと階下の部屋に引き返したそうです。

そう、日本語の「今何時だと思っているんだ」は
時間を聞きたいわけではないですよね。
日本人なら誰でもわかることです。
ところが、「低」コンテクスト文化の国においては、
言葉の裏にある先輩の真の意図はまったく理解されなかったのです。

またこんな例はどうでしょう。

ある日本の会社で働く20代のアメリカ人のDavid。
ハネムーンのため、上司に頼み込んで3週間の休みをもらい
ヨーロッパへ新婚旅行
帰ってきて出社すると、上司は
「David、おかえり。会社に君の机があってよかったね
と強烈なイヤミ。
ところがDavidは上司の発言の意味が全く分からず、
同僚にこっそり聞いてみた。
すると、3週間も休みを取りやがってと不満をもっているとのこと。
Davidにしてみたら、休みの許可を与えたのに
いまさらなぜそんなことを言うのか全く理解不能。
だったら、許可しなけりゃよかったじゃん。

奥歯にモノがはさまったような、発言の裏の真の意図なんて
外国人にはまったく通じないと考えるべきなんです。
まあ、いまどき日本人でも、こんなベタなイヤミを言う上司はいないと信じたいですけどね。

さて、前回(vol.2)の最後に前振りしましたが、
欧米人にも、なかには日本人の言葉の裏を読むことができる人がいるのです。
つまり「低」コンテクスト文化圏にも「高」コンテクストの傾向をもった人が一定の割合でいるということです。

これが日本人にとってキケンな場合があります。

海外の日系現地法人は、日本から派遣された日本人が社長をやっているケースが多いですよね。
この日本人社長は、「低」コンテクスト文化のローカルスタッフたちに囲まれて、多くのストレスを感じながら毎日の仕事をこなしています。
そんななかで、
多くを語らなくても思っていることを理解してくれる
そして空気が読めるローカルスタッフがいたら、
とても頼れる存在に思えてくるわけです。
ココロを開ける貴重な相手に思えてくるわけです。
そして優秀な人材にも見えてくるわけです。
ここが落とし穴です。

こういう人材を日本人社長は優秀だと感じて昇進させていくわけです。
気が付くとそういう人材ばかりがエラくなり、社長の取り巻きとなっていく。
空気が読めるローカルスタッフが必ずしも会社の業績アップに貢献しているわけではなく、単に日本人に取り込むことが得意なタイプなのかもしれないのに。

ローカルスタッフの勤務評定は
あくまでも計画・目標の達成度合いが基本です。
いつも日本人社長のそばにいて、社長の意図を素早くくみ取り
小間使いのように動くスタッフを昇進させてしまうと、
空気は読めないけれど業績貢献度大の優秀なスタッフたちは納得いかずに
会社を去っていってしまうこともあります。
結果として会社全体の業績にも影響してきてしまいます。
なにしろ海外の現地法人は、日本人のチカラだけで業績を伸ばしていけるわけではないですからね。
ローカルスタッフのチカラが必須です。
誰が空気を読めるかではなく、誰が業績を飛躍させられるか、
それを見極めるのが日本人社長の大事な役割のひとつです。

なんて、かなり偉そうに上から目線となってしまいました。
まあ、「経験者は語る」ということでお許しを。

異文化理解、海外現地法人マネジメントについて、まだまだ書き続けますが、次回は少し路線を変えて、英語表現の話をしましょう。
英語の苦手だった私が(というか今でも苦手ですが)、
22年間も海外で英語を使いながら仕事をしてこられたのには訳があります。

外国人とのコミュニケーションに苦しみながらも、
必要にして十分な英語表現を身に着けたからです。
簡単だけどこれさえ身に付ければ海外駐在OKという英語表現50
と題して次回以降、お伝えしていきましょう。

これから海外に出て仕事をしたいけれど、「英語はちょっとなあ」という方にはぜひ読んでいただきたいです。

ではまた、次回お会いしましょう!

次号の記事のURLです。ぜひ読み進んでみてくださいね。
https://note.com/dinokoba/n/n12259d5a4ebb

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