部下を叱らない欧米人 上司から叱ってほしい日本人
「子供は褒めて育てる」は欧米での常識。そして子供だけではなく、部下も褒めて育てるのが欧米式。
アメリカの心理学者 マーシャル・ロサダ は60のマネジメントチームのコミュニケーションを詳しく分析した結果、褒めと叱りの黄金比は3:1であると導き出しました。これは欧米だけではなく、どこの国でもあてはまる法則と言ってよいのです。つまり、3回褒めて1回叱る頻度が最も効果的な比率だということ。
マーシャル・ロサダによれば、高いパフォーマンスを実現するためには、人の心のなかがポジティブな感情「3」、ネガティブな感情「1」の比率で維持されていることが重要だそうです。
ところが日本人は褒めるのが苦手で、叱ったり怒鳴ったりするのは得意のようです。
部下の言っていることややったことが正しいと感じた時には何も言わない傾向。そして、部下の失敗や不手際などに対して、あるいは業務が期待どおり進まないことに対して、大声で怒鳴ったり乱暴な言葉を投げかけたりして、感情を爆発させる。
日本では、こういった上司の態度に対して、仕事に対する熱心さの表れと見る向きもあります。
また、就学時代から先生や先輩に叱られて育ってきた日本人には、叱られることで意気に燃えるタイプの人も一定数います。特に体育会系の部活動など出身の学生に多く見られます。
日系企業の海外現地法人では、日本から派遣された日本人が社長を務めているケースが多いです。
日本人の部下にするように、欧米人の部下に対しても怒鳴り散らす日本人社長は少なくないようです。
怒鳴り散らすことが部下の育成になにか効果があるとは思えません。
上司のストレス解消にはなるのでしょうが。
効果がないどころか、欧米人にとってupset(興奮して取り乱す、混乱する、感情を爆発させる)する上司は軽蔑の対象になってしまいます。
「あの上司は仕事に対して情熱がある」なんて尊敬してくれることなどありません。
そもそも上司という立場にある人に対して、部下が抱くイメージは、「Directionを提示して、それに沿って部下が仕事をするために寄り添ってくれるコーチ、サポート役」ぐらいのもんです。
そして常に冷静で論理的な上司を尊敬します。
怒鳴っても、「サポート役がなぜ私に対して」という反発や疑念を生むだけです。
さて、あなたが現地法人の社長で、ローカルスタッフになにか仕事の指示をしたとしましょう。
すると、その部下がこの写真のような態度で、"why?" (なぜ今その仕事が必要なんだ?)と質問してきました。
こんなとき、あなたが
"Because I said so"
"I'm your boss. You have to accept my order!"
などと返事をしたらあなたは部下の信頼を失うでしょう。
平等意識の高い文化圏の人の多くは、指示されたことの必要性を自分なりに納得しようと考えます。
指示する側は、必要性や背景に「説得力」が求められます。
指示される側は、自分の行動が理にかなっていると判断する責任を感じているのです。
日本人のように「上司の指示には、納得できなくてもとりあえず従う」ということはありえません。
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自分の心の中で怒りの感情がこみあげる原因は、他人の言動に接したとき自分のコアビリーフ(価値基準)と照らし合わせて食い違いを感じることです。自分のコアビリーフが、自分や周りの人にマイナスになるような「怒り」を生み出すようであれば、コアビリーフを見直すことが必要です。(「アンガーマネジメント入門」安藤俊介著)
とくに文化や習慣が異なる外国においては、自分のコアビリーフが現地の文化や習慣とずれていることは当然起こりうることです。
自分のコアビリーフに合わないから怒りの感情が起き、そしてその感情を言葉にして相手にぶつけても、相手はまったく理解不能となります。
このように海外で働く、しかも部下を持つ責任ある立場で働くには、自分のコアビリーフと現地の文化・習慣のギャップを理解し、感情をコントロールすることが重要です。
これを怠るとローカルスタッフからの信頼を得るのは難しくなります。
日本でとてもよく仕事ができた人なのに、海外に転勤したらなぜか現地のスタッフとうまくいかない、という話を聞いたことありませんか。
IQ (Intelligence Quotient:知能指数)が高い人が優秀とよく言われますが、海外で働く場合には、CQ(Cultural Intelligence Quotient:多様性に適応する知能指数)がより重要と言われ始めていて、CQの高い人材は企業間で引っ張りだことなっています。
現地の文化・習慣・価値観に向き合い、尊重する姿勢や態度がとても大事だという考えが認知されてきているのだと思います。
怒鳴り散らすのは論外だとしても、欧米人を頻繁に叱るのも効果薄です。
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