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誰に嫌われようと自分に正直に生きるドイツ人、長いモノには巻かれて生きる日本人

覚えていますか?
2016年11月にトランプ氏がアメリカの大統領に選出されるや否や、まだ就任もしていないのに、ニューヨークのトランプタワーに高級ゴルフクラブを持って駆けつけた日本の安倍総理大臣。にこやかに握手する姿が印象的でした。

トランプ&安倍


覚えていますか?
トランプ氏が大統領に就任した(2017年1月)から2か月も経った3月に、ドイツのメルケル首相は大統領執務室でトランプ大統領と面会しましたが、二人は握手をしませんでした。

トランプ&メルケル

メルケル氏は訪米前に、イスラム圏の国民に対する二度の入国禁止令など、トランプ氏の政策を繰り返し批判していました。

2020年は米国がG7の議長国になっています。トランプ氏はコロナ禍でありながら、6月にワシントンでG7を開催する意向を示しました。
安倍首相が出席の意向を表明したのに対し、メルケル氏は訪米しない方針を示しました。

同じ敗戦国でありながら、米国との接し方が日本と大きく異なるのはとても興味深いことです。

どちらの件も、メルケル氏の言動はとてもドイツ人らしいし、安倍氏の言動は日本人らしいといえます。

日本では、「長いモノには巻かれろ」といわれます。つまり、「生きるための術(すべ)を大事にしろ」という教えです。

一方ドイツでは、「誰に対しても自分の意見を主張せよ」「誰に嫌われようと自分に正直に生きよ」「自分の美学を大切に」と親などから言われて育ちます。

そしてこれはドイツだけに限りません。
欧米では、このような価値観を大事にする人が圧倒的に多いのです。

それぞれどちらが良い悪いということではありませんが、この対極ともいえる価値観の両者が一緒に仕事をするとなると、軋轢(あつれき)が起こってしまうことがあるのです。

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山田君は、日本のA社のドイツ支店に駐在する30代の営業担当です。
Joe は、同じA社ドイツ支店の営業Managerです。
ふたりとも、日ごろから工藤支店長の方針や指示に対して、不満を持っていました。
この日も二人は、会議室で工藤支店長の方針に対する批判でこっそり盛り上がっていました。
そこへ突然、工藤支店長が現れ、ふたりは口をとざしました。

工藤支店長 : 山田君、来月の売り上げ目標を達成するために、値引き幅を少し拡大して、販売量を確保することにしよう。値引き幅をどこまで拡大するのか、Joeと相談して提案してくれないか。

山田君 : はい、わかりました、支店長。早速、Joeと打ち合わせします。

Joeは、あっけにとられてしまいました。
ついさっきまで、支店長の安易な値引き方針に対して批判していた山田君が、その指示にまったく反論もせず、素直に従っている。なぜ彼は自分の意見を言わないのか、と。
Joeは、山田君に対して強い不信感と嫌悪感を抱きました。

しかし、山田君には作戦があったのです。
指示を受けたその場で反論しても、支店長はプライドを傷つけられて、聞く耳を持たないだろう。
いったんは支店長の指示を受けておいて、機会を見て別の販売拡大施策を提案することによって、値引きを回避しようという作戦だったのです。

しかしJoeには、反論することが支店長のプライドを傷つけるなんてことはまったく想像できず、山田君の「相手に合わせて自分の意見や言動を変える」一貫性のなさが許せなかったのです。
山田君の発言は彼の人間性を疑うほどのものだったのです。

一方、山田君からすると、Joeがそんなふうに思ったとは全く気がつかない。

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こういうちょっとしたすれちがいで、信頼関係が崩れていってしまうことがあります。

日本人どうしであれ、外国人との関係であれ、信頼関係に悪い変化が生じると、相手の態度や表情に現れるはずです。
違和感に気づいたら、傷口が広がる前に問いかけることが大切です。
相手が胸のうちを開くまで問い続ける。そして聞き出す。
自分の考えや、日本人の物事の進め方を説明する。相手が納得できるまで説明する。
これしかないのです。

どっちが良い悪いではない。文化、習慣、生き方が違うだけなのです。
それをお互いに気づかないことがある。
ちょっとした相手の変化を見逃さずに、理解しあえるまで会話することによって、異文化の壁を乗り越えるのです。


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