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中国、奥深い「食」のお話し ~その1~

今回は、仕事にはまったく関係ない話です。
6年間の中国・武漢生活で口にした、食べ物の話をしたいと思います。
中国人たちに勧められ、食べざるを得ない状況で、貴重な経験をしました。

赴任が決まった後、武漢をよく知る友人から言われました。
「あそこには、なまずとレンコンしか食べ物がない
「町のレストランでは、ネズミが店の中を走り回っている

武漢という都市は、起伏の少ない低地にあって、あちこちに沼が点在しています。沼で獲れる「なまず」と「レンコン」がとてもポピュラーな食材なのです。ほかにはこれといった特産物もないし。

こりゃまた、とんでもないところに行くことになった、と思ったもんです。
できれば行きたくない。
とはいえ、転勤命令なので行くしかない。
これが日本の会社で働くサラリーマンの宿命だ。

着任したのは、日中合弁自動車会社。
早速、会社の中国人同僚たちとの食事会。
丸テーブルに並ぶ大皿のひとつが、なまずの料理。
ご覧の通り、たっぷりの油と唐辛子で炒めた「なまず」。
沼で獲れた淡水魚ではあるが、意外にも臭みもクセもまったくなく、
そして食感はふわっふわ。上品な四川料理というかんじ

なまず

そしてレンコンはスープとして登場することが多い。
土鍋でやってきて、一人ひとりに取り分ける。
これがまた、思いのほか美味い。
ジャガイモのようにほくほくで優しい味わい。
スープは辛くはなく、田舎の素朴な野菜スープのような安心感。
写真の通り、アクセントとしてナツメは欠かせない。

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赴任前に、なまずとレンコンと聞いて、かなり後ずさりしていたのだが
この2品、まったく問題なし。というか、美味いです。
武漢に行く機会があったらぜひお試しを。

この他にも「辣子鶏(ラーツージー)」という鶏のから揚げがとても美味。
ただのから揚げではない。山盛りの唐辛子のなかにから揚げが埋まっていて、掘り出して食べる。チョー辛い典型的な四川料理。

ラーツージー

そして、スッポン鍋。これも定番のひとつ。

スッポン鍋

まあ、スッポンは日本でもよく食べられているので、とくに違和感はないですけどね。日本のように、生き血を酒に混ぜて飲んだりはしなかった。

そして日本でも市民権を得つつある「火鍋」。火鍋は武漢やそのほかの都市でも食べられますが、本場は重慶
重慶は、武漢から西に1000kmほど走ったところに位置していて
人口3000万人。
なんと、北京や上海をおさえて中国で最も人口の多い都市なのです。
この重慶と、その南に位置する成都が四川料理の中心地です。
初めて重慶で火鍋を食べた衝撃は忘れられません。

重慶火鍋

鍋がラー油スープと白湯スープに2分割されているものが多いですが
重慶の火鍋は写真の通り。真っ赤な麻辣(マーラー)スープが正統です。
これを食べないと死ねません。
いや、こんな辛いもの食べたら死にます(笑)。
火鍋のこわいところは、その辛さだけではありません。
具材です。
豆腐、野菜類、きのこ類、白身魚のすり身を団子にしたもの、
これらは全然OKなのですが、様々な動物の内臓系が入ります。
火鍋は「モツ鍋」に分類されることもあります。
牛の胃袋、動脈、カモの腸など、が登場。
そして極めつけが、豚の脳みそ

重慶の地元の人から招待された火鍋なので、断るわけにはいかない。
彼らからすると、客人をもてなすごちそうなのです。
豚の脳みそは、目をつぶって口に入れると、まるでフォアグラかあん肝のようなツルっとした舌ざわり。
味は覚えていないが、淡泊だったような。
ここまでくると、「何でも来い」って気分になります。

ここ内陸の重慶では、新鮮な食材が手に入りにくく、庶民はホルモンなどの安い食材を唐辛子の辛さで殺菌して食べるという工夫をしたのが、火鍋のはじまり。

火鍋の歴史を心に刻みながら、豚の脳みそを口に放り込み、「好吃(ハオツー)美味しい!」と笑顔で応えるわけです。

そして、重慶まで来たら、そのすぐ西に位置する成都にも寄って、陳麻婆を食べないわけにはいかない。

陳麻婆豆腐

言わずと知れた、成都の陳ばあさんの元祖麻婆豆腐。麻辣の極めつけ。花山椒が効きまくり! 頭皮の毛穴から汗が吹き出します。
これぞ、本場のマーボー!
がんばって成都まで行っちゃいましょう。麻婆豆腐食べに。

麻婆豆腐は重慶でも有名ですが、成都でも重慶でも高級レストランではメニューに載っていませんのでご注意を。
庶民の食べ物ですので、火鍋は専門店へ、麻婆豆腐は町の安食堂へ。

中国の食の話はなかなか止められません。
次回も 中国、奥深い「食」 のお話を続けます。

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