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決断には「合意」が必要? それとも「トップダウン」が優れている?

「決断する」「意思決定する」って勇気のいるものです。

まして、会社の重要案件の実行を決断する役割って、できるものならば避けたいと思うのがフツーではないでしょうか。
自分の決断によって会社に大きな損害をもたらしたりしたら、どのような責任を取らされるのか、わたしなんか想像するだけで胸が苦しくなります。

この「意思決定」のプロセスは大きく分けて2通り存在します。

ひとつが「トップダウン」、もうひとつが「合意による意思決定」

どっちが良いとか悪いとかではありません。

起業して間もない会社やオーナー企業では当然「トップダウン」による意思決定が主流となりますが、
日本の大企業では、「合意による意思決定」という企業文化が広く行き渡っているようです。
なぜなら日本の大企業は、会社の成長に伴い、世襲制から脱皮しサラリーマン社長制へと移り変っていき、また集団による経営体制へと変化していくからです。

ところが、世界どの国の大企業でも同じというわけではありません。

中国では、社会全体が階層主義的であり、大会社の中でも上司には逆らえない、意見できない、という文化が根付いていて、集団による合意ではなく、決めるべき人がトップダウン式に意思決定するのが普通です。

また、アメリカも典型的なトップダウン式の意思決定という文化が根付いています
アメリカのベストセラー作家のパトリック・レンシオーニ氏は、ビジネスに関する講演でこのように発言しています。
「私の知る限り、”合意”という言葉は禁句になっています。合意は誰の想いも満たすことができず、合意を目指すことによって平凡なものが生まれてしまう」

一方、日本は世界の中でもっとも「合意志向の意思決定」がなされる文化であるとされています。

私が38年間勤めた日本の会社には、稟議書という書類があって、会社としてモノゴトを意思決定するときには、稟議書を回覧して関係部門長にサインをもらう必要がありました。
稟議とは、下級のマネジャーたちが彼らのなかで新しいアイデアについて検討し合意に至ってから、ひとつ上の役職のマネジャーたちへ意見を渡してサインを求めるものです。
そして各関係部門の責任者たちも含めて合意しサインが入った稟議書は、担当役員など意思決定者の手元にわたり、彼は関係部門の責任者たちが合意していることを書面で確認したうえで、最終決定者としてサインをいれるのです。

まさに、「合意志向の意思決定」の最たるシステムです。

あなたの会社の意思決定は、「トップダウン志向」か「合意志向」かどちらのタイプでしょうか?

ビジネススクール INSEAD 客員教授の エリン・メイヤー は、「THE CULTURE MAP(異文化理解力)」のなかで、「”決断”の各国分布」を次の通り整理しています。

異文化理解力

決断の各国分布

著者は、日本は世界の中でも最たる合意志向の文化だと位置づけているのです。

合意による意思決定の特徴として、議論と合意に至るまでのプロセスに多くの時間を費やす代わりに、ひとたび意思決定した後、実行段階に入ると議論の再燃はなく、修正や変更も少なく、スムーズで迅速にコトが運び、費やす時間は短い。なぜなら計画も慎重に練られているし、メンバー間で十分な議論が行われていて誤解が少ない。そしてチーム全体が同じベクトルを共有している。

一方、トップダウンによる意思決定の特徴はその逆で、意思決定がトップにゆだねられているので、決断は素早く、実行への移行も早い。
ところが実行段階に入ってから、更なる議論や決断の修正や変更が気軽に行われる。なので、実行にかなりの時間が割かれることになる。

前述しましたが、「合意」と「トップダウン」、どちらが良いとか悪いとかはありません。
問題はクロスカルチュラルなチームでは、チーム内でふたつの方式が衝突してしまうことです。

上の「”決断”の各国分布」にあるように、ドイツは日本と同様合意志向が強いのですが、たしかに私がドイツに駐在していた時には、ドイツ人たちと意思決定のプロセスにおいて違和感を感じたことはあまりなかったように思います。

ところが同じく私が駐在していた中国では、上司の極端なトップダウンに驚くことが多かったのです。その素早い決断と、実行段階に入ってからの心変わりも含めて。

もし、あなたが異国の地の現地法人の社長や責任者として赴任したら、意思決定プロセスには注意が必要となるかもしれません。とくにその国の文化が、日本とは対極のトップダウン志向が強いようであれば、現地のスタッフがあなたに求めているのは、強いリーダーシップによる素早い意思決定や決断だからです。

日本人は、部下に意見を求めたり、ときには自分の考えに同調することを強要したりする傾向があります。
ところが、トップダウン志向の強い国では、部下に意見を求めても反応がないこともあります。なぜなら、決めるのは上司(あなた)だからです




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