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マナーやエチケットは、国によって異なり、世代によって変化する

これまで海外転勤により、22年間、4カ国(イタリア、カナダ、中国、ドイツ)に駐在してきました。
それぞれの国で、現地のビジネスマンや同僚たちとともに行動してきましたが、日本と異なるマナーやエチケットには驚くことが多かったです。

中国でのマナーやエチケットは、いろいろなところでよく話題に上がります。
食べ物を口に入れて咀嚼しているときに口を閉じずに、くちゃくちゃ、むしゃむしゃ音を立てて食べるのです。日本や欧米ではマナー違反とみなされますが、中国ではごくありふれた風景です。
その人の人格とは関係は無いのですが、われわれ日本人にとってはやはり不快感は否めません。

中国の料理では、豚肉などを骨付きのままこま切れにして、煮込んだり、炒めたりします。そのこま切れ肉を口にいれると口の中で肉と骨を分離して、肉は食べ、骨は口から出す必要があります。そのとき、口から「ぺっぺっ」とテーブルの上や足元の床に吐き出します。食事が終わるころには、テーブルの上は、同席者たちが吐き出した小骨が散乱した状態となります
そのテーブルで一緒に食事をするとたいていの日本人は食欲が失せてしまいます。

マクドナルドの北京一号店の開店は1992年。当時、日本人がその北京のマクドナルドでオーダーするのに1時間かかったという笑い話があります。
中国人は、縦一列に並んで自分の順番を待つという習慣に疎い。マクドナルドでもカウンター沿いに横に並んで、われ先にと店員にオーダーするので、おとなしい日本人が彼らに交じってしまうと、いつになってもオーダーできなかったようです。

空港のチェックインカウンターでも割り込みは当たり前。
エレベーターに乗り込むのも順序良くという感覚はなし。
図々しいもの勝ち。

一方、ドイツやイギリスでは紳士らしいマナーに目を見張りました。

日本もクルマの運転マナーはだいぶ改善されてきましたが、ドイツやイギリスのそれは別格です。2本の車線が合流する地点では、必ず譲り合う
急車など緊急自動車が近づいた時には、かなり早い段階からすべてのクルマを脇に寄せてきっちり大きく道を空ける
歩行者や自転車に対する徹底した思いやり運転。
駐車場ではアイドリングはしません。(法律で禁じられている)周囲への騒音や環境対策です。

オフィスの会議室の入り口のドア。自分がドアを開け通り過ぎた後、そのあとに後ろから人が歩いてきたら、ドアを手で押さえて開けたまま後ろの人を迎え入れる。5メートル後ろから歩いてきている人にも辛抱強く開けて待っている。日本人には過剰とも思える心遣いです。

そしてレディファーストも日本人には気恥ずかしいと感じるほどの徹底ぶり。

ところがそんな欧米でも、歩きタバコにはけっこう寛容です。日本では条例で禁止されるところが増えてきていますね。欧米では建物内での禁煙は徹底されていますが、屋外で歩きながら吸っていても人々はあまり気にしません。


ところで、マナーとエチケット。これって外来語ですよね。

「manner」をジーニアス英和辞書で引いてみると、「行儀、作法」と出てきます。
そして、「etiquette」を引いてみると、「礼儀、作法」と出てきます。

しかし、われわれ日本人が「マナー」や「エチケット」という言葉を、「行儀」や「作法」と同じ意味合いで使っているでしょうか。

「行儀」は、主に子供の立ち振る舞いについて使い、「作法」は、茶道や華道、あるいは弓道や剣道などの日本の伝統的な習い事に主に使います

一方、「マナー」や「エチケット」は、周囲の人を不快にさせない、身近な態度や行動について使っているように、私は感じています。

そして、「行儀」や「作法」は、時代が変わってもこうあるべきという姿はあまり変化しません。一方、「マナー」「エチケット」は時代の要請や世代の交替によって移ろっていきます

英語の「manner」や「etiquette」は、時代に左右されない行儀や作法、そして時代と共に変化する身近な(日本語的)マナーやエチケットの両方の意味を持っていると思います。

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外来語としての「マナー」や「エチケット」がそのまま使われることになった背景は、それに該当する日本語が無かったからだと私は考えます。

つまり、以前の日本には「マナー」や「エチケット」という概念がなかった。

たとえば昭和の時代には、路上や駅のホームは、タバコの吸い殻で溢れていました。

ポイ捨て

また、長距離電車の車内の床はごみで溢れかえっていました。

ゴミだらけの車内


タバコの吸い殻のポイ捨ても車内の通路にゴミを捨てることもマナー違反ではなかったなぜならマナーという概念がなかったから、です。

中国でも過去にはマナー、エチケットという概念は無かったが、欧米人との交流機会の増加により、次第に意識されるようになってきました。

「列に並ばない」習慣(マナー?)も、海外から大勢の観光客が訪れた北京オリンピックと上海万博を機に、かなり改善してきました。
中国人の多くが海外旅行にでかけるようになったことで、口を閉じてものを食べる先進国のマナーが浸透してきました。

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「マナー」「エチケット」という言葉が日本に浸透してきて以降、そのレベル感は世代によって、変わりつつあります

私は、スポーツジムに通っていて、広めのストレッチエリアに仰向けに寝転がって、ストレッチをするのですが、ときどき、私の顔のすぐ脇を人が歩くことがあり、とても不快に感じます。

また、風呂場には、サウナルームと水風呂があるのですが、水風呂に頭を入れて髪の毛を手でこすっている人がいて、これも不快に感じています。

こういう不快に感じる行動に出ている人はたいてい年配の人です。若者の振る舞いから不快を感じることは少ないように感じています。

また、世代によって、人と人との距離感も変わってきているでしょう。年配者ほど人との距離が近いように感じます。

わたしもすでに高齢者の仲間入りをしているので、周囲の若者たちが不快に感じる行動かどうかは常に気にしなければいけないなあと自戒するしだいです。

また、海外に出かけた時には、その国の「manner」「etiquette」を意識するよう心掛ける所存です。




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