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北京オリンピック金メダルの獲り方@中国・武漢

私が、2007年から2013年の間、中国・武漢で働いていたのは、
日本の会社と中国の会社が50%ずつ出資した合弁自動車会社。
いわゆる対等合弁
すべての経営判断を合弁相手と合意しなければならず
マネジメント層にとってこの上ないストレスフルな状況

社内の中国人社員たちのほとんどは英語が得意ではないので、
社内の共通言語は中国語
日本の親会社から派遣された日本人駐在員はほぼ全員中国語ができないので
通訳があてがわれる。
わたしにも通訳さんがついていた。もちろん中国人です。
中国の大学の日本語学科を卒業し入社したての新卒の女性だ。
中国人との会話はすべてこの通訳を介して行われることになる。

みなさん、まだ記憶に残っていると思うが、
2008年の北京オリンピック。中国の金メダル獲得数は48個
アメリカの36個、ロシアの24個を差し置いて第1位だった。

通訳と雑談していて、話題がオリンピックに及んだ。

「金メダル獲得数が世界で一番多かったね。すごいね、おめでとう。」
通訳「ありがとうございます。」
「でも、日本の雑誌に、中国がこれだけたくさんメダルを取れたのは
ロシアにメダルの取り方を教えてもらったからだ、なんて記事があったよ。メダルの取り方なんてテクニックがあるのかどうかわからないけどね(笑)」
すると彼女は、まじめな顔でこう反応した。
通訳「悔しいなら、日本も、ロシアにメダルの取り方教えてもらえばいいじゃないですか。」

おそらくアドバイスのつもりだったと思う。
私はあっけにとられて、返す言葉を失った

この短い会話の中に、価値観の違いが浮き彫りになっている。

「目的を達成するためには手段を選ばない」とか「結果がすべて」という考え方には、日本人はときとして抵抗を覚える。

日本人は、「目標に向かってどれだけ努力をしたのか」
「逆境をどのように克服したのか」のような「物語」を大事にする。
さらに言うと、「日本人全体に共通の倫理観」が存在し、
各個人は、その倫理観をときには結果以上に重視する。

一方、中国は、数字に表すことができる「結果至上主義」が社会全体を包んでいるように感じた。

この価値観の違いは、オリンピックでの金メダルにとどまらず、様々な場面で浮き彫りになる。

ユニクロそっくりのロゴを使って消費者を惹きつけたり、アニメの海賊版を作りだしたりして、ビジネスとしての結果を出す。
それらの手段に倫理観は感じられない。

中国の経済発展の一段階として、みんなが金銭的豊かさを求めてきたことがひとつの理由なのかもしれない。
しかし、今や世界第二位の経済大国となった中国。
模倣や知的財産侵害などとは縁のない、世界に誇れるビジネスモデルや付加価値を生み出してほしい。

2022年北京冬季オリンピックでは、また中国が世界一たくさんの金メダルを獲るのか注目している。
ちなみに、2018年冬季平昌オリンピックでは、
中国の金メダル数は「ひとつ」で、世界で第16位だった。

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