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Statcastデータから読み解くヌートバー選手の実力 (WBC前追記版)

2023年WBC大会のジャパンチームに参加が噂されているラーズ・ヌートバー選手はセントルイス・カージナルスに所属する25歳の新鋭。この記事ではヌートバー選手の実力をスタットキャストのデータから読み解きます。

打撃成績


まずは通常の成績から
2021年 打率.239 打点15 本塁打5 
2022年 打率.228 打点40 本塁打14 

この成績を見てメジャーリーガーだけどこんな打率の悪い選手いる?って疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

ではもう少し詳しくセイバーメトリクスの数値を見ていきます。

2021年 OBP.317 SLG.422 OPS.739 
2022年 OBP.340 SLG.448 OPS.788 

野球に詳しい方は2022年は打率は下がってはいるがOBPが上がっていることから選球眼が良く四球の数が多いことに気が付かれるでしょう。そして本塁打の数も増えSLGが上がっていることから長打の割合が増加している、即ちパワーも兼ね備えている選手であることが読み取れます。

ここで日本の野球ファンにはお馴染みで同じ外野手である鈴木誠也選手と比較していきます。鈴木選手の成績は

打率.262 打点46 OBP.336 SLB.433 OPS.770 HR14

日本の野球ファンの方は打率と打点を大事にするので鈴木選手の方が成績が良いとするかもしれませんがメジャー的にはセイバーメトリクスの数値で上回るヌートバー選手の方が高い評価になります。

スタットキャスト


ここから本題のスタットキャストのデータを見ていきます。

EV

メジャーで打者のポテンシャルを測るのに重要なのが打球速度(Exit Velocity:EV)です。打球速度が速いほどヒットになる確率が上がり飛距離も出ます。

ヌートバー選手 最速181.9キロ 平均147.6キロ 全体45位
鈴木選手    最速179.1キロ 平均144.2キロ 全体60位

日本では強打で知られた鈴木選手ですがヌートバー選手はそれを上回った数値を出しています。現在日本で活躍している選手の数値は公表されていないので比較出来ませんが鈴木選手を上回る数値を出す選手は余り多くないと予想されます。

ちなみにこの何年かの最速打球速度のトップの常連はスタントン、ジャッジ、大谷選手などで190キロ超。

このツイートによるとヌートバー選手はこのオフはドライブラインで練習をしているらしく、自己最高EVを記録したようです。ドライブラインは投手のトレーニングで有名ですがバッティングのトレーニングも充実しており今年はアレナド選手やベッツ選手も通っていたそう。

飛距離
ヌートバー選手 最高138m 平均51m 平均本塁打飛距離122m
鈴木選手    最高133m 平均52m 平均本塁打飛距離121m

ほぼ同じですがヌートバー選手が若干上回っています。

xwOBA
打者の実力を見るのにxwOBAという指標があります。大まかに言うと打球の角度や速度などの打球の質から推定した打者を評価する指標です。実際にはボテボテの当たりでヒットになることもあれば良い当たりをしても野手の真正面に飛んでアウトになることもありますが、それを打球の質を重視して打者の実力を見る指標と言えます。

ヌートバー選手 xwOBA .346 全体46位
鈴木選手    xwOBA .334 全体90位

規定打席に到達した252人中で46位なのでかなり良い数値です。

打球角度とゴロ・ライナー・フライ率

ヌートバー選手 平均角度10.7度 ゴロ46% ライナー24% フライ25%
鈴木選手    平均角度11.2度 ゴロ41% ライナー27% フライ26%

両者、特にヌートバー選手はもう少しゴロの割合が少なくなりライナーとフライの割合が高くなると成績向上に繋がるのでは。

打球方向
ヌートバー選手 引っ張り43.8% センター34.4% 反対方向21.9%
鈴木選手    引っ張り28.3% センター38.6% 反対方向33.1%

ヌートバー選手は典型的なプルヒッター。ホームラン14本中13本がライト方向に引っ張ったものでした。

球種別打撃成績

ヌートバー選手
鈴木選手

両者共に速球系に強いですが変化球への対応が課題であるようです。

守備


ヌートバー選手は2022年シーズンはレフトで11試合、センターで12試合、ライトで79試合出場。鈴木選手は全てライトで出場。

ヌートバー選手 DRS4.0 UZR4.9   OAA 1.0
鈴木選手    DRS-4.0  UZR1.0   OAA -4.0

舌を出すのが癖のようです

Arm Strength
ヌートバー選手 最速155.6キロ 平均149キロ 全体19位
鈴木選手    最速154.6キロ 平均144キロ 全体56位

日本では強肩で知られた鈴木選手を上回っています。

走塁速度
ヌートバー選手 8.59 m/秒

鈴木選手    8.63 m/秒 

両者共に足は速いほうではあるがトップクラス(秒速9m超)ではありません。大谷選手と鈴木選手は同じスプリントスピード。

まとめ

ここまで見てきた数値からヌートバー選手の実力をまとめると
 - 打率は高くないが選球眼に優れ四球が多く出塁率は悪くない
 - 強い打球を主に引っ張り方向に打つ
 - ストレート系に強くスライダー・カーブが弱点 
 - 守備は悪くなく強肩
 - 足は遅くはないが盗塁は少ない

と言ったところでしょうか。

最後に


今回の記事は主にNPBのファンでヌートバー選手のことをあまり知らない方に向けて書いてみました。打率だけ見ると不安に思われる方もいるかと思われますが日本代表チームで不動の地位であった鈴木選手と比べても引けを取らないかなりの実力をもった選手であることがこの記事でお分かりになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。またどこかの球場でお会いしましょう。

追記

WBC本戦を前に少しだけ追記。強化試合を見て評判通りの素晴らしい選手であることが確認出来て一安心。スイングスピードの早さと選球眼の良さに加えて出塁しなくても早打ちせずに球数を投げさせるスタイルが良い。

記事の中で触れませんでしたが左投手を苦にしないのもトップバッターにうってつけかと思います。

打率
対右投手.217
対左投手.273

もう一つ面白いのはホームゲームとアウェイでの差が大きいこと

ホーム   打率.184    OPS.617
アウェイ  打率.266    OPS.935

理由は分かりませんがアウェイで力を発揮するのは良いことだとポジティブに受け止めましょう。

短期決戦での成績
ヌートバー選手が属するカージナルスは2022年シーズンはポストシーズンに進出してフィリーズと対戦して2戦2敗で終戦となりましたが、その2試合でヌートバー選手は1番打者として出場してどちらの試合でも3打数1安打1四球でした。出塁率5割。まさに短期決戦にチームが1番打者に求めている役割を果たしたと言えるでしょう。WBCでも同様の活躍が期待されます。

弱点?
本文で触れたようにヌートバー選手は変化球、特にカーブ系を苦手としています。強化試合2試合でも1つずつ三振をしていますが、どちらも低めに落ちるカーブ。先に触れた昨年ポストシーズン2試合でも1つずつ三振をしていて、それもカーブ。

最も得意としているのは真ん中高めで、次いで内角ベルトゾーン、真ん中低め。バット軌道がフラットなのでメジャーに多いローボールヒッターではないようです。

WBCのような短期決戦では情報戦も大事になってきますが、その点メジャーの選手はSavantなどで情報を集めることが出来るのである程度対策を練ることが可能です。日本と対戦するチームがどの様にヌートバー選手に配球してくるか、またそれをどうヌートバー選手が打っていくかも注目するとより一層楽しめるかと思います。


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