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昭和初期のひな人形と

我が家には、100年近くの歴史を持つひな人形があります。

2022年のひな祭り、今日久しぶりに家のひな壇飾りに参加したので、人形の歴史と共にその様子をご紹介したいと思います。

アンティーク人形の歴史

時は1927年(昭和2年)今から95年前。

私の祖母は長女である伯母を出産しました。その翌年、初節句の日に祖母は町でひな人形を一対だけ買います。

本当は一式全て欲しかったのですが、戦時中で家が貧しかったため少ししか買うことができなかったのだそうです。それから年を重ね、祖母は6人の女の子を生み育てながら、お人形を一段ずつ買い揃えていきました。

* * *

4女である私の母がそのひな壇を引き継いだのは、それから約50年後のことでした。

結婚して子どもが生まれ、東京の実家から引っ越す日に突然思いついたように「あ!おひな様も持っていきなさいよ!」と祖母に託され急いでトラックに詰め込んだといいます。祖母にとってはとても大切にしてきただろう家宝です。何を思ったのか今では謎ですがそれ以来、母は祖母の思いを受け継ぎ毎年ひな祭りには欠かさずに飾ってきました。

2022年のひな祭り

今年、3月に入るとすぐに我が家のひな壇飾りは始まりました。和室の押し入れの天袋から13箱の木箱を引っ張り出し、リビングに運び入れます。

若い頃から実家にいなかった私は、とても久しぶりにこの一大行事に参加。時間をかけてゆっくりと、母の語りを聞きながら並べるのを手伝いました。

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天袋から出してきた箱の数々。どこに持っていくでもないのに、この頑丈な梱包!笑

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まずはじめは、梯子の組み立て。結構、ぐらつきます・・

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木製の梯子の組み立ては、昔ながらの継手法「ほぞ組み」。毎年どの穴に入れるか迷うため、ある年から母がわかりやすいように各部にシールを貼ってマークを付けて以来、迷わなくなったそうです。笑

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毎年、しまう前にはティッシュを新しくして、防虫剤なども入れています。

一体ずつ、ティッシュを取ってこんにちは・・とおめ見えしていきます。

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箱を包んである新聞紙も、いちいち年代物で懐かしい!!これは1993年のものでした。笑

* * *

なお、母には「こだわり」があるらしく、お人形はいつも下の段から並べていくのだそう。

ということで、まずは三仕丁の木箱を開けました。

【5段目】 三仕丁(さんしちょう)
【4段目】 右大臣、左大臣
【3段目】 五人囃子(ごにんばやし)
​【2段目】三人官女

段に並べたら、道具も一つひとつ持たせてあげます。刀、靴、銚子、太鼓、大皮鼓、小鼓(こつづみ)、笛そして扇など。

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そして最後に、

【最上段】内裏びなのお殿さまとお姫さま

が登場し、全てが揃いました。

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つくづく眺めると、昔のお人形は本当に端正な顔をしているんですね。品よく、小さく開けた口からは舌や歯も見えます。職人さんの手で一つひとつ丁寧に作られた様子が目に浮かびます。

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みんな表情も違うし、座り方、立ち方、着物や髪型もそれぞれ。でも、全て揃うときちんと統一感があり、華やかで品もあります。

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「これは何?」という私の質問に、母が平安時代のおもちゃだと教えてくれました。「貝合わせ」といって同じ模様の貝を探して合わせて遊ぶのだそうです。

* * *

最後に。

母の初節句に祖父母が買ってくれた、という土人形が出てきました。母が生まれた年は、ちょうど戦火が激しくなってきた頃。そのためか母がもらった人形は、6人姉妹の中でもとてもみすぼらしく(感じ)、今でも見る度に心が寂しくなってしまうのだそう・・。

そんなことを言われながらも、先輩のお人形さんたちの一員として端っこに加えられる2体のお人形に、私は人知れず愛着が湧くのでした。

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うれしいひな祭り

【1番】
あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓
今日はたのしい ひなまつり

【2番】
お内裏様(だいりさま)と おひな様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした 姉様に
よく似た官女の 白い顔

【3番】
金のびょうぶに うつる灯(ひ)を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒 めされたか
あかいお顔の 右大臣

【4番】
着物をきかえて 帯しめて
今日はわたしも はれ姿
春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひなまつり


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