守るプライドを間違えないということ
※本記事はゲームソフト『ぼくのなつやすみ4』のネタバレを含みます。
今からするのは小難しい話ではなくて、『ぼくのなつやすみ4』というゲームの実況動画を見て感動したっていう話だ。
『ぼくのなつやすみ』(通称”ぼくなつ”)シリーズは、都会育ちの小学生"ボク"を操作して夏休みの期間を大自然に囲まれた親戚の家で過ごすゲームだ。虫を獲ったり魚を釣ったり、地元の子供と遊んだり、ちょっとほっこりしてちょっと切ない感じの作品だ。
『ぼくなつ4』のボクは小学4年生で、瀬戸内の島に暮らす伯父の家に泊まりに来ている。夏休み7日目、同学年で足が速いのが自慢のいとこ”キミコ”が男子にも負けないと言うので、ボクはキミコとかけっこ勝負をすることになる。
この場面でプレイヤーは、正々堂々勝負するかズルをして近道を通るか選ぶことができる。ズルをした場合キミコに勝つことはできるが「許さないからね」と言われ嫌われてしまう。(正々堂々走ると負ける。)
9日目の夜、肝試しをすることになり集合場所に向かう道中で怖くて立ちすくむキミコに会ったボクは、ここから先は一緒に行こうと誘う。この時、かけっこで正々堂々勝負した場合はすんなり誘いに応じてくれるのだが、ズルをした場合「ズルする人とは一緒に行きたくない」と拒否されてしまう。問題はこのシーンだ。
誘いを断られたボクは「じゃあズルしてごめんなさい」と謝る。そして、何故急に謝るのかと聞くキミコに「女の子を一人で暗い山の中に置いていくことはできない」と答えるのだ。
かっこいい。かっこいいぞボクくん。何がかっこいいって、自分の中で本当に守るべきプライドを間違えていないところがかっこいい。
それまではズルだと言われて「あれは作戦」と言い返していたボクには、ズルをしたと認めたくない、謝りたくないという意地があったはずだ。それでも誘いを断られてすんなり謝ったのは、ボクにとって本当に大事なことはズルに関して意地を張り続けることではなくキミコを危険から守ることだと、小学4年生のボク自身がちゃんと分かっていたからだ。かっこいい。
女の子を守ろうとする”男らしさ”がかっこいいのではない。”男らしさ”なんて社会が勝手に決めた概念だから、ズルをしていないと主張することの方がボクにとって大事ならそれを貫けばいいと思う。でも多分”男らしさ”を抜きにしてもボクにとってはキミコを守ることの方が大事で、そうしなければ後悔するのは自分だということをボクは直感的に理解しているように思える。かっこいい。
何故かっこいいのかって、大人でもそうそう出来ないことを小学4年生の男児がやってのけているからだ。
人はいくつになっても守るべきプライドを間違える。大人になればなるほど背負うものは大きくなり間違えた時の代償も大きくなるのに、どうしてもつまらない意地を張り続けてしまう。そして最後には本当に大事なものを失い、要らないものだけが手元に残るのだ。小学生が「ごめんなさい」の一言で守りきるものを守りきれない大人が大勢いる。
私自身もかなりのかっこつけで、そのせいで失った物がたくさんある。一番近くにいる家族や友達のこともたくさん傷つけ、その度に後悔してきた。だから今はせめて「ありがとう」と「ごめんなさい」はきちんと言うようにしている。ボクくんのように、そして、謝ってまで一緒に行こうとしてくれるボクくんにきちんと「ありがとう」を言うことが出来るキミコちゃんのように。
でもまあ、ズルは良くないよ、ボクくん。
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