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自分はあと何回転職できる…?不安な時に現職でやることリスト

「自分はあと何回転職できるんだろう…?(本当にこれで最後にしたい)」

初めてそう思ったのは、20代後半で3回目の転職をした時(4社目に移る時)でした。採用面接のハードルが過去2回よりもぐっと上がって、「20代で3社というのは多すぎる」「専門性が身についているとは思えない」と、人物・技能以前に、経験社数で酷評されることが多くなりました。

ただその後、前職に当たる4社目で6年、現職に当たる5社目で6年、それぞれIT業種での在籍年数上は古株と呼ばれるラインまで働くことができています。また社会人15年を経て今年2冊の本を出版することができました。「専門性が身についているとは思えない」と言われた分野です(笑)。

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ちょうど時同じくしてこの秋、ついこの春に新社会人になった後輩たちから、「転職しました!」という報告が届くように。1年目・2年目の途中で最初の転職を迎える子たちは、すっきりと晴れがましい顔を見せてくれるとともに、未来に対する一抹の不安を抱えているのがわかります。

採用市場は今なお経験社数をベースに判断する傾向があるため、「こらえ性が足りない」「環境のせいにする」というレッテルを求職者側に刷り込みます。個々の採用判断はもちろん異なるのが当然ですが、この一律に人を判断する傾向は、求職者にとっては酷だな…と今でも思います。

だって、勤めている会社で、「中長期のキャリアパスが無い」「誰も技能を教えてくれない」「重大なハラスメントがある」「長時間労働が常態化している」となれば、その会社を継続する意味は無いですし、通常は何社か経験してみて自分の適性や語れる実績が出てくるものだからです。

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一方、仕事がどんどん細分化されていく中で、自分の強みを見える化していくことは求職側の課題であり、特に専門職ではその工夫が必要になります。なんなら専門分野で本を出していても、面接官がその分野をよく知らなかったら効き目はゼロです。まして書類だけで伝わりません。

本記事では、なんとなくこの先のキャリアに不安を抱えている=転職プレッシャーを持っている人に向けて、現職のままできることをリストにまとめました。転職は誰もが使える有効なカードではあるのですが、あくまで切り札のひとつであり、実は他にいくつかの選択肢があります。

主に私が語れるマーケティング専門職のキャリアを想定した内容ではありますが、「ぜんぜん転職先が決まらない」「いつまで経っても昇進しない」という悩みを持つ方に向けて、同じくキャリア形成を苦心してきた中で私が見出してきた7つのポイントをお伝えしたいと思います。

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▼ ①自分の職種価値を情報発信する


ふつうに会社勤めをしていると、過去の仕事実績の棚卸を行うのは主に転職時です。慌てて数年分の仕事内容を振り返り、職務経歴書の項目を追加していくのですが…

結論から言うと、転職時にだけ職務経歴書をアップデートしようとするとバタつきます。つまり、対応が遅くなるということ。いい求人案件が出た時にさっと対応できるようにしておきたいですよね。(=「定点対応」よりも「継続対応」が正解)

そこで、Twitter・noteなどのツールを駆使して、自分のノウハウ(+可能なら実績)を積極公開していきます。情報発信を試みる過程で、「探求~思考(インプット)」→「整理~発信(アウトプット)」が磨かれていきます。

ここでのポイントは、自分の「職種価値」をアピールすることです。
下記はTwitter・noteで活躍されている方のアカウントですが、共通点として、ご自身の存在だけでなく、「職種自体の価値」を上げることに長けています。

ジェイ@事業開発セールス/Rockets CSO @junta_suzuki さん

岡本剛典 @takaokamoto1 さん

|ノムラトモキ/クラシルマーケ @nounashi___ さん

出てくる皆さんとも要職に就かれている方ですが、個人としても・職種としても引き込まれるものがあります。

マーケティングの専門職は、伝統的な分野(ブランド・リサーチなど)では「直接的な収益を生んでいない」と言われ、最先端の分野(テクノロジー・SNSなど)では「もうそのツールは古い」と言われ、採用市場ではなかなか評価が安定しません。

でも、上記に出てくる皆さんの活躍を見れば、ご本人はもちろん、その職種がいかにやりがいがあって、会社に貢献していているか、一目瞭然です。誰もその仕事価値を矮小化して否定することができません。それだけのものを感じ取れるからです。

仮にノウハウや実績がここまでのクラスには達していないとしても、こうした日頃からの情報発信ができていると、「成長のために実践していること」「仕事へのプロ意識」が伝わるので、同じ業種の人からリスペクトを受けるきっかけになります。

仕事の評価軸が「上司」と「面接企業」だけになると、極めて狭い世界の中で過ごすことになるので、精神的にも不安定になりやすくなります。逆に、いつも好きな仕事(職種)の価値を発信していればポジティブでいられるので、精神的に強くなります。

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▼ ②副業サラリーマンとして備える


30代以降のマーケティング職の転職活動はけっこう難しく、「新しい技術を学びたくてもその技術に今触れていないといけない」「事業課題を解決する力はあっても面接時間内にそれを伝えないといけない」というように、なかなか20代の時のようにはいきません。

また、今の会社に居るにしても、評価される枠組みが無ければ、「自分はいったいいつまでここにいるのか…」と不安を抱きながら毎日を送ることに。自身が求める成長環境が無く、ビジョンへの共感も薄まっていれば、目の前の仕事に打ち込む気分になれません。

そこで、すべての中間的な動きとして、「副業サラリーマン」を視野に入れることをおすすめします。(※副業を持つ会社員の働き方の名称として、現在のところ一番浸透しているので、本記事ではそのまま「副業サラリーマン」の名称を使います)

副業サラリーマンは「キャリア過渡期の働き方」として最強です。
メリットは大きな「時間」少しの「収入」です。
たとえば以下のように今後の基礎固めにする修行期間にできます。

・社外コミュニティで専門家ネットワークを築く
・独立を仮想したサービスメニューの開発を行う
・英語学習、資格・技術習得に励む
・業界研究・会社研究を気長に行う
・社外の執筆や講演で副収入を得る

今の会社で何らか内的要因で活躍が遠のいている場合(人事体系の都合でキャリアパスが詰まっている、政治的な事情で干されているなど)、すぐに会社を辞めずとも、上記のように自分の手づくりの場所で社外でも成長する場はつくれます。

イケてる本業一本でないと成長効率が悪い…という考えはもっともですが、採用市場では経験社数が多いことは一般的にそれだけで不利に働くので、留まる見込みがあるならいったん留まって、会社の風向きが好転したら再起する手もあります。

また、副業サラリーマンは転職活動を続けていてもいいのです。「○月までに絶対決める」と決め込まずに、より多くの求人案件に触れていれば、業界研究・企業研究が本業に役立つこともあります。「転職活動=転職」と気負わないことです。

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▼ ③社内の最重要案件にもぐりこむ


ここまで書いてきた①②を通じて、個人のブランディングはだいぶ進みます。ところが、それでもまだ会社が価値に気づかない場合、「管理職が業務実績を実感しにくい」業務構造になっていることが予想されます。

相手が管理職とはいえ、社内の特定の人が「業務実績を実感できるかどうか」は本質的な議論ではないですし、もはやその会社に留まるかどうかも考えものですが、「今いる場所で最大限やりきる」原則を考える時、自分のスペシャリティを持って会社の本丸に踊り込むのがベストな選択です。

そこで、「社内の最重要案件にもぐりこむ」ことを試みます。

・新規事業
・リニューアル
・不振事業再建
・取締役案件
・親会社案件
・大型イベント

これらの「最重要案件」は、複数の上役が気にしています。もし自身のスペシャリティで上役が受けているプレッシャーを跳ねのける自信があるなら、是が非でも案件に関わるべきです。最重要案件は嫌でも成果が目に付く枠組みなので、安心してチャレンジできます。

各案件のプロジェクトリーダーは、たいてい人材不足で困っています。もともとの目標達成プレッシャーが強いうえに、チームの士気低下や複雑な社内調整に息切れしているものなので、仮にデータ分析など部分的な関わりであったとしても、「助っ人」は喜ばれます。

もちろん、相応の役職を持っていないと、そもそも話し合いに加われないケースも少なくありません。社内でプロジェクト情報がすべて共有されていればいいのですが、たいていはブラックボックスになっていて、アサインを取りに行くのが難しいことも多々あります。

そこでおすすめなのが「大型イベント」です。マーケティングとの紐づきが強く、各部門から労力を募るタイプの仕事なので、どんな専門職であっても関わりを見出しやすいです。社内でプレゼンスを上げる好機なので、まずは大型イベントの担当者と接触しましょう。

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▼ ④帰り道きっぷをスタンバイする


新規プロジェクトに挑む時には、決して心意気だけで動いてはいけません。この手の話になるとよく、「退路をすべて断って、背水の陣で臨もう」という話になりますが、それを連続的に繰り返してきた身としては、立場によって注意すべきことがあります。

もし20代であれば、新しいチャレンジは「片道きっぷ」でOKです。退路を断って選んだことを全力でやる。そこで得た経験値はすべて30代の時に肥やしになります。成功体験はもちろん、失敗体験からも「自分には不向きなこと」がハッキリするからです。

ただ30代であれば、「帰り道きっぷ」をスタンバイしておきましょう。30代以上は、失敗しても成功してもリスクがつきまといます。オプションプラン無しで心意気に任せてしまうと、その後のキャリアや、下手すると生活そのものが危うくなりかねません。

失敗するケースでは、新規事業に手を上げたものの、まったくうまくいかず、社内で「デキないやつ」「損をもたらす人」のラベルがつく場合が典型です。管理職ポジションを失うことはもちろん、元の部門からも出戻りを許されず、窓際配置になることも。

成功するケースでも注意が必要です。チャレンジが成功すれば、そのままライン上の事業部門長に昇格します。形式上は自分も組織もWINのように思えますが、専門職で歩んでいくことを決めている場合、興味関心を満たせず、結果的に退職に至ることも。

ご覧のように、チャレンジ自体は評価に値することながら、失敗すればそれを許さない文化の中で過ごすことになったり、成功しても見返りは長期キャリアには無関係だったり、こうしたリスクを思う時、「帰り道きっぷ」を用意することが欠かせません。

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▼ ⑤運用KPIと業績KPIを半々で持つ


最近は、研究志向の会社だけでなく営業志向の会社でも、マーケティング専門職の活動の場が広がっています。ところが、営業志向の会社では仕事の大変さの割に業務評価は辛口で、最も困るのは次のような最終評価が出てくることです。

「ウチでは運用業務をいくらこなしても評価しないよ」

たしかに、運用だけでは売上・利益につながらない仕事もあるものの…
一方で、マーケティング職の稼働の半分以上は運用業務だったりするので、極めてアンコントローラブルな目標を追うことになり、運用が基本実績に加味される業務文化を持つ他部門に比べて著しく不利です。

そこで、期首の目標設定で「業績KPIと運用KPIを半々で持つ」ことを薦めます。

評価理由がどうあれ、会社として日々の運用業務を止めるわけにはいきません。また、自分も専門分野に日々触れなくなると長期的にはスキルが劣化してしまいます。結論、運用業務は無くすわけにはいかないので、評価のうち半分は運用をキープします。

そしてもう半分は業績KPIを入れて、どちらかがうまくいっていなくても、カバーし合える評価体系にしておきます。もちろん業績KPIは本気で追いかけますが、マーケティング業務はとかく運用努力が認識されづらいので、しっかりと期首目標を握りましょう。

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▼ ⑥同志と仮想の機能連合をつくる


社内評価が実情より低くなる根本原因には、「仕事価値を理解してくれている人の絶対数が少ない」という状況が考えられます。社内横断的なスタイルで活動をしていても、専門職は「組織票」を得られる動きにはならず、結果的に仕事価値を認識されづらいのです。

本質的に自身の活動理解を得るには、仲間をつくるしかありません。この仲間は、同じチームとか同期とかではなく、活動ミッションを共にする「同志」です。すなわち、社内で類似した機能を持つ部門と仮想の連合体をつくってプレゼンスを高めるようにします。

たとえば分析の仕事の場合。仕事価値の高さはたぶん言うまでもないのですが、いかんせん人目には触れずらい仕事をしています。そこで、社内に点在する分析を主業務に持つ人/組織と連合を組んで、共同研究や合同発表を行い、専門性が評価されるようにします。

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▼ ⑦ミッションを盾に価値定義する


さて、ここまで見てきた取り組みは、いずれも組織への働きかけが必要です。もしあなたがメインストリームから外れた専門業務をしていたら、そもそも「無理な相談」かもしれません。

こういう時は、会社の「ミッション・ビジョン」を活用します。

ステップはこうです。
会社のミッション・ビジョンの中に、自身の専門領域が必要とされる部分を見出します。たとえばデータ分析を担当しているなら、ミッション・ビジョンである「顧客満足経営」に対して、「顧客データを分析する」スペシャリティを発揮できます。

ところが、仮に自社が営業会社だとすると、「顧客ファーストと言う割に顧客データが十分に無い」ことがあったりします。この現状認識を根拠に自身の仕事を価値づけしていけば、業務理解が浅い人からも業務の必要性を否定されづらくなります。

ただ、それでもなお「それは君のいち意見にすぎない」とみなされることもあります。その場合は、「取引先満足度調査」か「従業員満足度調査」で該当項目のスコアが十分かを調べて論拠とします。(ただし上長をやり込めない程度に抑えます)

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▼ まとめ


<あと何回転職できるか不安な時に現職でやることリスト>
①自分の職種価値を情報発信する
②副業サラリーマンとして備える
③社内の最重要案件にもぐりこむ
④帰り道きっぷをスタンバイする
⑤運用KPIと業績KPIを半々で持つ
⑥同志と仮想の機能連合をつくる
⑦ミッションを盾に価値定義する

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マーケティング職での情報発信や副業活動について、もう少し勉強してみようかな、と思っていただいた方は、私が10月に出版した『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)もぜひご覧ください。

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