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思考力を伸ばすには? 【第4回】地頭力は鍛えられるのか

こんにちは、データインサイトの中西です。
思考力を伸ばすことをテーマとしたnoteを少しずつ連載しています。

前職BCGでの経験と、2020年に創業した弊社「データインサイト」でのインターン生等の思考力を伸ばすサポートをしてきた経験をふまえ、ロジカルシンキングなどの書籍を読んでも思考力の鍛え方がわからない多くの方に向けて、思考力を伸ばすためのプロセスをできるだけわかり易く解説しています。

まずは【導入編】として、思考力を伸ばすサポートをしているなかで、多くの方から質問される以下の点を説明していきます。これらはいずれも今後の記事を通じて読者の皆様に思考力を伸ばしていただくためにも重要な内容となりますので、ぜひお読みください。

【導入編】
1.BCGにおける人材育成のトレーニングプログラムはどのようなものか?
2.そもそも思考力とは何か? 地頭力は鍛えられるのか?
3.なぜデータインサイトではインターン育成に注力するのか?
4.どのようなインターン生が大きく成長するのか?


地頭力は鍛えられるのか?

本日は "地頭力" とは何か?そして地頭力を鍛えられるのか?についてお話します。

戦コン志望の学生さんや転職を考えている社会人の多くの方から、地頭力をどう鍛えたら良いのか?という質問を多くいただきます。
また、地頭力というものが何を指すのか?考える力/思考力のようなものだけれども具体的には良く分からないという方が大半ですが、それもそのはずで「地頭力」という言葉には明確な定義が無いのです。

そもそも、地頭力とは?

"地頭力(じあたまりょく)" とは、経営コンサルティング業界において思考力の高さ、とりわけ論理的思考力や戦略思考力(仮説思考力、論点思考力など)においてポテンシャルの高いさまを示す「地頭 (じあたま) が良い」から派生した言葉で、コンサルティング業界の特に採用関連において2000年代から使われるようになってきたようです。

多くの方の持つ地頭力のイメージとしては、表面的な思考力ではなく、真の思考力、
もう少し具体的なイメージとしては、試験などで測れる学力や学歴、これまで見聞きしてきた知識や経験は、自分や他者が見てとれる表面的な(顕在化した)思考力であり、地頭力のイメージとちょっと違う。
逆に、自分にも他人にも見ることが難しい真の(潜在的な)思考力が、地頭力というイメージを抱かれている方が多いのではないでしょうか。

何かに例えるとすれば、
例えば氷山では、海上に浮き目に見える「氷山の一角」が顕在化した表面的な思考力で、表面を支え海中に佇む大きな全体像が潜在的な思考力であり地頭力であるといった印象でしょうか。目に見えない、より大きいという点で、まさに地頭力は潜在的な思考力であり、この感覚は概ね正しいでしょう。

地頭力を氷山に例えたイメージ

そして、ここ数年で急速に就活生にコンサルティング業界が注目されるようになり、それに伴って "地頭力" という言葉も、就活生や転職を考えている社会人の多くの方に注目される言葉となりましたが、未だ明確な定義はない状態です。そこで、経営コンサルティング業界において潜在的な思考力の高さを示す "地頭" を "地頭力" の語源と仮定し、次のように定義して話を進めます。

"地頭" とは、
"答えの無い課題に対して、知識や経験を活かして考え抜くことで、最善であると多くの人が感じる解決策を導き出せるような思考力のこと"

そもそもコンサルティング業務において地頭が良いという言葉は、経営コンサルティング、とりわけ経営戦略領域におけるコンサルティング手腕に長けた人に対して使われます。
そして、経営戦略領域のコンサルティングとは、「クライアントの経営等に関する未来の答えの無い課題に対して、思考力を活かして、最善策を導き出し、それをクライアントに伝えて理解や納得を得ながら経営のサポートを行う仕事」です。

ここで、「答えの無い」とは、答え合わせのしようがないケースや、いくらでも答えがあり得るようなケースなどが該当します。つまり誰にも答えが分からないのです。そうした答えの無い課題に対して、知識や経験だけを頼りにしても、最善策を導き出すことはできません。自分が最善策だと思っていても、クライアントに納得して動いてもらえるとは思えません。
なぜなら、知識や経験は過去に得たものであり、今後どう変わるか分からない「未来の」課題に当てはまるかどうか分からないからです。

経営コンサルティングのアプローチでは、多くの場合、フレームワークなどを用いて、知識を活かし、経験則に照らし、調査した事実などを一定の法則やロジックにあてはめるなどして最善策を模索する取り組みが行われますが、そうしたフレームワークを用いることで思考がしやすく、クライアントにも伝わりやすくなるからです。

フレームワークや知識で答えが分かるようになるわけではありません。フレームワークは思考整理のツールとしては優秀です。しかし、あくまで思考のいち手段として活用するもののなかに、それら(フレームワーク、知識、経験、事実、法則等)が含まれるという関係性であることを忘れてはいけません。

つまり、経営戦略領域のコンサルティングの仕事の定義「クライアントの経営等に関する未来の答えの無い課題に対して、思考力を活かして、最善策を導き出し、それをクライアントに伝えて理解や納得を得ながら経営のサポートを行う仕事」における、

「答えの無い課題」に対して、「思考力を活かして」「最善策を導き出し」ていくことこそが、コンサルティングの本質であると考えます。そして、その最善策を導くために思考する過程において、フレームワークや知識・経験を活かしていくこととなります。

そのため、"地頭" とは先に定義した通り、

"答えの無い課題に対して、知識や経験を活かして考え抜くことで、最善であると多くの人が感じる解決策を導き出せるような思考力のこと"

であり、そうした思考をする力を、"地頭力" と呼んでいくこととします。
(つまり地頭≒地頭力と捉えて差し支えないでしょう)


では、その地頭力は鍛えられるのでしょうか?

地頭力というものは鍛えられるものなのでしょうか。言い換えれば、地頭は良くなるのか?

地頭≒IQと捉える考えの中には、地頭自体は幼少期等に確立されているものであり不変のものである。ただし、鍛えることで地頭の性能(ポテンシャル)を引き出すことはできるというスタンスもあります。

しかし、私の考えや経験則からいえば、適正な方法で思考に関する努力を重ねれば、(ほとんど誰もが)地頭を良くしていくことができます。

地頭力を鍛えるというようなトレーニング本やセミナーなどがありますが、それらの効果がどれほどかは(やったことも見たこともないため)わかりませんが、
考えること自体を繰り返すことで、脳の働きとして思考のスピードや柔軟性が高まり、思考力が高まり、結果として地頭が良くなることはあり得るでしょう。

ただし、トレーニング本やセミナーなどでインプットをするだけでは、知識が増えるだけで、思考力の高まりや地頭力向上にはほぼ貢献しませんので注意してください。
思考力を伸ばすことについてロジカルシンキングなどの書籍を読んでもピンと来ない多くの学生さんや社会人の方の一番の原因はこれです。

この連載の最初から何度も伝えていますが、インプットをもとに、考え、そしてアウトプットすること、さらにそのアウトプットから学び思考のPDCAを回すことが、地頭力を鍛えることにも超重要であることは改めて再認識してください。

思考のPDCAを回す;インプット→思考→アウトプット >> 試行錯誤のプロセスイメージ


また、地頭の定義が明確化されていないなかで、地頭ぽいものを鍛えようとするなんちゃって本やセミナーが乱立しているため、それが本当に自分の求める "地頭" を鍛えられるものであるかは、しっかり見定める必要があります。
地頭力を~と言いながら、単にIQクイズみたいなことをやっているようなセミナーもあると聞きます。もう少し良いものですとフェルミ推定などの問題をひたすらこなすものがありますが、フェルミ推定は地頭力を鍛えるトレーニングのひとつとしてとても良い手法である一方、フェルミ推定だけで高いレベルまで地頭力が鍛えられるものでもありませんので勘違いの無いように留意してください(地頭力を鍛える入口としては、フェルミ推定は非常に良い手法のため、初学者のトレーニングにはうってつけです)。


戦略コンサルタントを目指す場合や、そうでなくとも仕事においてより良い課題解決や企画立案をご自身の思考力によって実現していきたい方々にとっての「地頭の定義」を、ご自身の頭でしっかり考えてもらい、その地頭を伸ばすための正しいトレーニングを行ってもらうことを期待します(もちろんここで述べている定義を正しく理解してもらえればそれで問題ないです)。

さて、ここでは、地頭とは、経営戦略領域のコンサルティングで求められる "答えの無い課題に対して、知識や経験を活かして考え抜くことで、最善であると多くの人が感じる解決策を導き出せるような思考力のこと" であると定義しました。
この定義に従うと、地頭とは単なる論理思考力ではありません。IQのことでもありません。

上記定義に沿うと、地頭とは、「論理的思考力」に加え、戦略的思考力とも言われる「論点思考力」と「仮説思考力」の3つの思考力の掛け合わせであるといえます。
それぞれの思考力の詳細な説明やそれぞれの力の具体的な伸ばし方は別の連載で詳しく行いますが、まずは3つの思考力について、以下の通り理解してください。

①論点思考力:
論点を正しく把握する力と、その論点を構造化することで、難解な問題を解くためのアプローチを設計する力
・論点とは、立場により争い/疑義が生じるような重要な問いのこと
・構造化とは、因数分解など一定の法則に従って論点をブレイクダウンしたり、情報をフレームワークなど活用しながら整理・再構築したりすること

②仮説思考力:
論点に対して常に仮の答え(仮説)を持ち、物事の全体像を捉え、足りない情報を想像力で補いながら、思考のPDCAを回していく力
・論点/結論から逆算的に考えていくトップダウン型の思考法
・仮説思考には想像力が必要で、知識や経験が想像力を補うサポート役を果たす
・直観力は、知識や経験に基づいて、筋の良い仮説を生み出す力といえる

③論理的思考力:
物事の関係性を正しく捉え、矛盾/飛躍なく筋道を立てた思考により、妥当な結論を導く力
・情報を論理的に組み立てていくボトムアップ型の思考法(実際はボトムアップのことだけを論理的思考力というわけではないですが、仮説思考との対比でここではこのように表現しています)
・抽象化思考力は、論理的思考力を活用して、集まった情報を単純化したり共通項から示唆を見出したりする力といえる

地頭が良い人は、
・"答えの無い課題" に対して ①論点を正しく把握・構造化し、
・答えを導くために "知識や経験も活かしつつ" ②仮説を立てながら、
③論理的に、考えを繰り返し進化させて "考え抜く" ことで、
"最善であると多くの人が感じる解決策を導き出す" ことができます

ロジックツリーのイメージ図

この①②③は、ロジックツリーをイメージするとわかりやすいかと思います(上図参照)。
地頭が良い人は、弊社のインターン生/卒業生の皆さんにはお馴染みの、よく描いているロジックツリーで示す思考そのものの筋が良いということです。

①論点 を目的・主体とともに把握し、まずそれに対する②仮説を持ち、その理由を③論理的にピラミッド構造のロジックツリーで組み立てていく。
調査や分析、議論等を経てロジックや論点/仮説を進化させていく(思考のPDCAを回す)。


そしてこれらの思考力のうち、①論点思考力と③論理的思考力は左脳的思考力で、②仮説的思考力は左脳的思考力であると整理できます。

③論理的思考に関しては、数学や言語処理など多くの方にとって過去に馴染みのある思考であることから比較的感覚を掴みやすいものの、
①論点思考力と②仮説思考力は多くの方に馴染みが薄く、初めは感覚を掴むのに苦労します。

いずれにしても、③論理思考力は繰り返し論理的に考えることで鍛えられ、また、①論点思考力と②仮説思考力は初めて考え方に触れる方も多いもののその分伸びしろも大きく、正しい方法論によって適切に鍛えることができます。

なお、前述の通り地頭力を鍛える取っ掛かりとしてフェルミ推定がうってつけである理由は、フェルミ推定をする過程で①論点思考力、②仮説思考力、③論理思考力の全ての思考力がまんべんなく必要となるからです。


そして、これから地頭力を伸ばしていくうえで、皆さんに留意いただきたいことが2点あります。

1点目は、
先に述べた通り、インプットだけでなく、考え、アウトプットすることを重視し、躊躇せずに、思考のPDCAをガンガン回してください

2点目は、
決して苦手意識を持たないで欲しいということです。
数学が苦手だから③論理的ではないとか、ちょっとやってみて感覚がわからないから①論点思考や②仮説思考の素養がないとか、そんなことで諦めないでください。

もちろん人によって体得するのが早い/遅いはありますが、これまで見てきた限り、また自身の経験を踏まえても、学力や経験などに関係なく必ずすべての人が地頭力を鍛えることができると確信を持っています(もちろんどこまで伸ばせるかは人によります)。


本日の最後に、
戦コン志望の学生さんや、志望してはいないが興味はあるという方向けに、本日見てきた地頭力と、採用プロセスにおいて戦略コンサルティングファームから求められる資質の全体像の関連性をご紹介しておきます。

戦略コンサルティングファームから求められる資質について

先ほどの氷山の一角の図を活用するのが分かりやすいと思い、過去や現在の顕在化した能力と、将来発揮されるであろう潜在能力について対比させています。

このスライドのメッセージにも書いている通り、戦略コンサルティングファームからは、将来のポテンシャルがあるか?を最も重視されます。

その中でどのような要素をどのように評価するかについては、またの機会に説明したいと思います。もしどうしても早く知りたいという方は、BCGの元同僚が代表を務めるThe Professional Coarching というサービスで、戦コン内部の視点からそれらを解説するセミナーなどを展開していますのでチェックしてみてください。


今回も長いブログをお読みいただきありがとうございます。

ここまで読み進めていただいた方は、前回の「思考力とは何か?」に引き続き、「地頭力とは何か?地頭力は鍛えられるのか?」に関して、理解を深めていただけたことでしょう。

そして、今後この連載で思考力を伸ばすアプローチを説明していくなかで、「思考力」「地頭力」に関する正しい理解が重要であることも理解いただけたことと思います(また、思考力と地頭力は似た概念であることも)。

・・・もし、分かりづらい!よくわからない!という方はぜひコメント等でご指摘ください。思考力を伸ばすためより具体的なアプローチを今後展開していきますので、ここまでの理解は前提となります。


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