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映画「RESPECT」ーアレサ・フランクリンを偲んで。影響を受けたアーティストたちのサンプリングを集めてみた

現在公開中の映画「RESPECT」は、2018年にこの世を去った Aretha Franklin(アレサ・フランクリン)の伝記映画となっています。
生前から彼女を題材にした映画制作の話は浮上しており、アレサ本人が自分の役を演じるのはJennifer Hudson(ジェニファー・ハドソン)しかいないと言っていたそうです。

ご指名通りクイーン・オブ・ソウルの生涯を演じきったジェニファー・ハドソン。本人に負けず劣らずの圧巻の歌声と教会音楽の荘厳さは映画館でしか体感できないものです。

内容としては、アレサ・フランクリンがいかにブラックミュージックの地位を押し上げ、黒人そのものの尊厳や権利を勝ち取ってきたかが分かるストーリーとなっています。

日本人にはあまり馴染みのないアメリカ人にとっての「ゴスペル」の意義を理解できますし、彼女自身が心の支えとしていた「教会」という場所についても改めて考えさせられます。
彼女の楽曲のテーマとしては、黒人や女性という当時の差別対象であった弱者に対して「RESPECT」を与えるようなものが多くを占めています。

歴史的にアメリカの音楽に大きな影響を与えたアレサ・フランクリンですが、往年の名曲たちが現代の音楽シーンで数多くサンプリングされています。

今回は、Apple Musicで出されている「サンプリング:アレサ・フランクリン」の中からいくつか紹介したいと思います。
元ネタとサンプリングされた曲を聴き比べてアレサ・フランクリンの世界観に浸りましょう。

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「サンプリング:アレサ・フランクリン」説明文

50年以上に渡るキャリアでソウル界の女王として君臨しつづけた、アレサ・フランクリン。ヴィンテージな風味を持つ彼女の曲は、ジェイ・Z、ア・トライブ・コールド・クエスト、モス・デフといった俊英なヒップホップアーティストのクリエイティビティを刺激。レコードの早回しという画期的なサンプリング手法を広めたKanye Westは"Spirit In The Dark"を引用し、新たなビートをつくりだしている。

「School Spirit」(2004)

「School Spirit」- Kanye West(2004)

この曲はアレサ・フランクリン「Spirit in the Dark」(1970)がサンプリングされています。

「School Spirit」カニエ・ウエストのデビューアルバム「The College Dropout」(2004)に収録されています。ギリシャ文字でカウントするようなカニエらしい面白いリリックが特徴的。タイトルの「Spirit」を元ネタとかぶせています。

Ms. Fat Booty(1999)

Ms. Fat Booty-Mos Def(1999)

この曲はアレサ・フランクリン「One Step Ahead」(1965)のコーラスをイントロから贅沢にサンプリングしています。

「One Step Ahead」はアルバムには収録されておらず、今でも彼女の最もレアなリリースの一つとなっています。
そんなアレサの名曲を使用した「Ms. Fat Booty」は、モス・デフがとある女性と出会って失恋するまでのストーリーをドラマ仕立てでラップしています。

Man, duke I was in love with this girl, duke
あの子にマジで恋してたんだ
I was tore up dog, I'm telling you man
二日酔いみたいにぼろぼろなんだ、ちょっと聞いてくれ
Shit is wild man, for real
マジでかなりいい女なんだ
It's, she's from, let me tell you about her
あの子の話をさせてくれ

実は、アレサ「One Step Ahead」も切ない失恋ソングなのです。歌詞の内容もインスパイアされているようですね。

I'm only one step ahead of heartbreak
傷心の私はたったの1歩をやっと踏み出したところなの
One step ahead of misery
惨めな1歩なの
One step is all I'd have to take, backwards to be the same old fool for you I used to be
たったの1歩なんだけど、もしこの1歩を引き下がってしまったら、あなたを愛していた時の昔のダメな自分に戻ってしまう。

Let's Get Away(2003)

Let's Get Away - T.I. feat. Jazze Pha(2003)

「Let's Get Away」はプロデューサーのJazze Pha(ジャジー・フェイ)が参加しています。実は、このミュージックビデオは T.I.が禁固刑の服役中に撮影されました。そんなことを感じさせないラッパーとしての余裕のある雰囲気がスター性を感じさせます。

この曲はアレサ・フランクリン「Day Dreaming」(1972)をサンプリング。
「Let's get away」や「 I'm thinking of you」などのリリックの一部も大胆に使用しています。

「Day Dreaming」は、ホット・ソウル・シングル・チャートで2週連続首位を獲得し、ビルボード・ホット100では5位、イージー・リスニング・シングル・チャートでは11位にランクインしたヒットソングです。

タイトルにある「白昼夢」をフルートと電子ピアノの音色でダイレクトに表現したこの曲は、モータウン・レコードを代表するThe Temptations(テンプテーションズ)のリード・ボーカルだったDennis Edwards(デニス・エドワーズ)のことを歌っているとアレサ本人が認めています。恋多き彼女ですが、デニスは当時の恋人だったようです。

Daydreaming and I'm thinking of you
昼間に見た夢であなたのことを考えているの
Look at my mind floating away
ほら、私の心は宙にうかんでいるみたいよ
He's the kind of guy that would say
彼はこんなことを言うような人なの
Hey, baby let's get away
なあ、どっか行っちゃおうって
Let's go some place, huh Where I don't care
何にも気にならないような場所へ行っちゃおうって
He's the kind of guy that you give your everything
彼はすべてを捧げてくれるような人なの
You trust your heart, share all of your love
自分の心を信じて すべての愛を分かち合おう

Revolutionary Generation(1990)

Revolutionary Generation - Public Enemy(1990)

リリックの内容はパブリックエネミーらしい黒人差別に反抗する内容で、楽曲の雰囲気もオールドスクールHIPHOPを楽しめるチューンです。

この曲は映画タイトルにもなっているアレサ・フランクリン「Respect」(1967)がサンプリングされています。他にもいくつかの楽曲をミックスして制作されていますが、「Respect」のファンクなノリはそのまま活かされています。

映画のストーリーも踏まえて歌詞は、当時の夫に対して女性蔑視を改めてほしいというような内容です。自分の実力が世間に認められ、自信もついていたアレサは一番身近な人にもっと「リスペクト」してほしいというメッセージを表現していたと思われます。

おわりに

ここで紹介したものはほんの一部です。多くのブラックミュージシャンがアレサ・フランクリンに影響を受け、それをクリエイティビティの源にしてきました。

ジャジーでソウルフルな彼女の楽曲はこれからの季節にピッタリなものがたくさんあります。

ヒットソングを聞き直してみたり、サンプリングから新しい1曲を見つけるのも楽しいでしょう。
彼女の楽曲を一通り聴いたら、映画「RESPECT」を見に行ってみてはいかがでしょうか。







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