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TDEきってのリリシストが、自分をさらけ出す5枚目のアルバムをドロップ! Ab-Soul - Herbert (2022)

前回の記事でご紹介したカリフォルニア州カーソン出身のラッパーAb-Soul(アブ・ソウル)

ここでは、彼がこの度ドロップした5枚目のアルバム「Herbert」(2022)について解説します。

レーベル  : Interscope Records & Top Dawg Entertainment
リリース日 : 2022年12月16日
名前    : Ab-Soul
本名    :    Ab-Soul / Herbert Anthony Stevens IV
年齢    : 35歳


出身地   :    カリフォルニア州カーソン

リリースに至るまで

前作のアルバム「Do What Thou Wilt.」(2016)の発表以降、作品のリリースペースを落とし、2020年までにリリースしたシングルはわずか5枚に止まりました。
これについては、1年半の活動休止の後、2020年にアルバムのリリースを予定していたようですが、パンデミックの影響もあり、6年が経過してしまったようです。

前作のアルバムから1年半の休みを取ったんだ。
2016年に「Do What Thou Wilt」をドロップして、
2017年にはツアーに出て、2018年の終わりくらいに活動の再開をした。
アルバムは2020年にドロップする予定だったけど、パンデミックに見舞われ ちゃってね。
俺たちはこれを経験し、それは贈り物であり呪いでもあった・・・
俺はようやく自信がついて、その裏にあるエネルギーを感じるようになったんだ。

そして、2022年4月に今作のリードシングルであり、2022年初となるシングル「Hollandaise」をリリース。
この曲のプロデュースは、Dreamvilleのコンピレーションアルバム数枚を手掛けたことで注目を集めたTDEのプロデューサーKal Banxが担当しています。
※アルバムには、シングルとは別のバージョンが収録されています。

Ab-Soul - Hollandaise

9月にはセカンドシングル「Moonshooter」をリリース。
シングルはソロでのリリースとなりましたが、アルバムではJoey Bada$$をフィーチャーしており、彼はこの曲を自分の経験をもとに書いたと明かしています。

俺がこの曲で表現した事は、経験してきた試練や苦難がフラッシュバックしたものなんだ。「ジャンキーなプロモーターにいつも振り回された」
俺は今、ラップ界のビッグホーミー、ベテランだ。
最初はWi-Fiもなかった。集会やストリートバトルをした。
ネットゼロの無料お試し版やダイヤルアップでネットバトルをした。
タレントショーもやった。お金を払ってラップもした。
チケットを売って、みんなの前で演奏した。ダンスもやった。
リアルなミックステープを配った。
高校時代、最もスターになりそうなアーティストに選ばれた。
最初のデモはカセットで、DJ Quikに渡した。
トランクの中でずっとやってたんだ。
俺はこの地域出身なんだ。
だから「辞めない」っていうリリックは、その時のことを言ってるんだ。
俺は決して辞めないよ。

Ab-Soul - Moonshooter

10月、アブ・ソウルケンドリック・ラマー「Love.」にゲスト参加したシンガーZacariをフィーチャーしたシングル「Do Better」をリリース。
このMVでは、ビルから飛び降り自ら命を絶った元恋人であり、レーベルメイトのAlori Johを連想させるようなシーンが描かれています。

そのため、当初はテーマのシリアスさとビジネス上の注目度からリリースを渋っていましたが、以前、ファンから命を救ってもらったと感謝されたことを思い出し、改めて人の役に立てることの重要性を感じ、リリースに踏み切ったようです。

これは、兄弟のMosaのおかげなんだ。
彼は、俺の証言を共有することを勧めてくれたんだ。
当初は、マーケティングやビジネスの観点から、そういったことがいかに効果的であるかということを理解していたから、抵抗があったね。
でも、これは本当に俺の身に起こったことなんだ。
立ち直った当初は、これを売りたいとは思わなかった。
しっくりこなかったんだ。
でも、今言ったようにみんなが俺のところに来て、俺が命を救ったと言う人たちのことを思い出したんだ。
ということは、俺が証言することで、これからも人を助け、役に立ち続けることができるってことなんだ。
そして多分、本当に、本当に俺の人生を救ってくれるだろう。
多くの場合「君は俺の命を救ってくれた」と言われるのは、ある種の表現だ。
でも今、俺は本当にその権利のために役に立っているかもしれない。
だから、俺は勇気を出してこれをやって、俺の証言を共有するようになったんだけど、どんな形であれ、みんながそれに感動してくれたことを嬉しく思うよ。

Ab-Soul - Do Better

翌月、ラッパーのFre$Hをフィーチャーしたシングル「Gang'Nem」をリリースし、Twitterでアルバムのリリース日を明らかにしました。

Ab-Soul feat. Fre$H - Gang'Nem


アルバムについて

アブ・ソウルは前作で言葉にこだわりすぎたことを反省し、今作では反省を生かしつつ、周囲の意見を取り入れながら自分の音楽を探求し続けているようです。

「Do What Thou Wilt」はとてもダークだったね。とてもヘビーだった。
チームとして、もっと明るい音楽でコントラストをつけるべきだという意見があったんだ。
でも、自分の理論や哲学は本来の目的から逸れてしまっていたんだ。
音楽がどのように感じられるかよりも、言葉にこだわっていた。
だから今回はもっと音楽にこだわりたかった。
12歳で初めてラップを書いてから、今35歳だけど「Do What Thou Wilt」までは、正直言って、毎日1回くらいはラップを書いていたかもしれない。
一歩下がってリセットし、新しい脳みそで取り組むことが必要だったんだと思うね。
あとリズムを取り戻すのが大変だった。かなりね。
でも、自分自身に挑戦したかったし、コンフォートゾーンから抜け出して、提案に対してもっとオープンになって、エゴを捨てて、傲慢さを捨てて、知ったかぶりをするのではなく、今回は助けを求めたかったんだ。

そう語ったニューアルバムは全18曲が収録され、ゲストにはBig SeanRussJhene Aiko、そしてTDEの社長であるPunch、レーベルメイトのSiRLance Skiiiwalkerが参加。

アルバムの5曲目「FOMF」には、クレジットはされていないものの、彼の所属するBlack HippyのメンバーSchoolboy Qが曲に参加しています。
また、ヒットメーカーのBoi-1daと、さらにケンドリック・ラマーのヒット曲を手掛け、TDEのプロデューサーであるSounwaveが共同プロデュースしています。

Ab-Soul - FOMF

12曲目「GOTTA RAP」は、名プロデューサーDJ Premierがプロデュースしたブーンバップなナンバーに仕上がりました。
そんなレジェンドとのコラボについてアブ・ソウルは「夢が叶ったんだ」と語り、昔からの夢であった彼のビートでラップができることに興奮を覚えたようです。

「Gotta Rap」で夢が叶ったんだ。
正式なステージネームが決まる前、まだSnap Gだった頃、ずっとプリモのビートが欲しいと思っていたんだ。
プリモはずっとストリートに耳を傾けている。
正直なところ、俺はリリシストの最後の一人であるという尊敬を集めているんだ。
以前にも偶然会ったことがあるんだけど、彼がPRhymeとしてDJ PremierとRoyce Da 5'9"とのデュオをやったときにつながったんだ。

Ab-Soul - GOTTA RAP

おわりに

アブ・ソウルは最後に、アルバムのタイトルであり本名でもある「ハーバート」こそが、自分の本当の姿であり、アブ・ソウルはキャラクターであり、ブランドだと語っています。
今回、本当の自分をさらけ出したからこそ、「ハーバート」というタイトルを選んだのかもしれません。

俺たちは普段、ラップではエゴが素晴らしいと考えるよね。
そして、そこには威勢の良さがあった。それは競争力のあるスポーツだ。
変身できる、なりたい自分になれる。ラップする男になれるんだ。
俺は自分のことをラップの神様と呼びたいんだ。
でも、本当はラップをするようになっただけなんだ。
これがHerbertだ。このアルバムがHerbert。
俺がHerbertなだけなんだ。
Ab-Soulはキャラクターであり、ブランドだ。
Herbertは本当の俺の姿。
だから、俺が神であるということは、俺たち全員が神であるということ。
みんな神の子なんだ。
それは俺だけじゃない。
今回はそれをはっきりさせたかっただけなんだ。

TDEの数ある個性の中でも、ひときわ異彩を放つアブ・ソウルのアルバムはいかがでしたでしょうか。
活動休止後、パンデミックの影響で発売が遅れましたが、その間にラッパーとして、人間として成長し、より重みのある作品になったと感じます。

そんな彼の実像を映し出す「Herbert」で、アブ・ソウルの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。


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