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CMからアニメまで、超マニアックな日本語ネタをサンプリングした彼らの話題作とは? JPEGMAFIA & Danny Brown - SCARING THE HOES (2023)

前回の記事でご紹介した、メリーランド州ボルチモア出身のラッパー兼プロデューサーのJPEGMAFIA(ジェイペグマフィア)と、ミシガン州デトロイト出身のラッパーDanny Brown(ダニー・ブラウン)について、今回は彼らがリリースした最新アルバム「SCARING THE HOES」(2023)から収録曲の解説と紹介をします。

レーベル  : Warp
リリース日 : 2023年3月24日
名前    : JPEGMAFIA, Danny Brown
本名    :    JPEGMAFIA / Barrington DeVaughn Hendricks
        Danny Brown / Daniel Dewan Sewell
年齢    : JPEGMAFIA / 33歳
        Danny Brown / 42歳


出身地   : JPEGMAFIA / メリーランド州ボルチモア
        Danny Brown / ミシガン州デトロイト

リリースに至るまで

2022年3月、ジェイペグマフィアはロンドンで開局したオンラインラジオ局NTS Radioに出演し、今作に収録された「Burfict!」を初公開しました。
そして、翌月に行われた音楽フェスティバルで同曲を披露した後、ダニー・ブラウンとのコラボレーションアルバムのリリースを発表。
この曲のタイトルは、元NFL選手Vontaze Burfictにちなんで名付けられました。彼は、アグレッシブなプレースタイルで知られ、しばしば違反行為を犯しては退場や罰金を繰り返す悪童として知られています。
彼の最も有名な出来事は、2015年のピッツバーグ・スティーラーズとのプレイオフゲームで相手選手の頭部に強烈なタックルをしたことで、当時のNFL史上最高額の罰金と5試合の出場停止処分を受けました。

JPEGMAFIA x Danny Brown - Burfict!

翌年の1月、ジェイペグマフィアダニー・ブラウンとスタジオで作業している写真をTwitterに投稿しました。
その後、ダニー・ブラウンは自身のポッドキャスト「The Danny Brown Show」にジェイペグマフィアを招き、この番組でアルバムのリードシングル「Lean Beef Patty」が初めて披露されました。

JPEGMAFIA x Danny Brown - LEAN BEEF PATTY

この曲は、3月にストリーミングプラットフォームでリリースされました。
タイトルの「LeanBeefPatty」は、人気Twitchストリーマー兼フィットネスYouTuberで、TikTokで600万人以上のフォロワーを持つ女性を指しています。
また「The Danny Brown Show」でも彼女の写真が紹介されています。

LeanBeefPatty

アルバムについて

アルバムのアートワークは、ジェイペグマフィアが両手に銃と聖書を持ち、胸に十字架を身につけている姿を描いています。
このアートワークは、アメリカのアクション映画「Sweet Jesus, Preacherman」へのオマージュとして作成され、この映画は1973年に公開されています。

Sweet Jesus, Preacherman

インパクトのあるアートワークが印象的なこのアルバムには、全14曲が収録されており、全曲をジェイペグマフィア自身がプロデュースしています。

2曲目のダブステップ調の「Steppa Pig」は、2001年にリリースされたフロリダ州オーランドで結成されたポップグループ*NSYNC「Gone」をサンプリングしています。

この曲は、*NSYNCの3枚目のアルバム「Celebrity」に収録されており、メンバーのJustin Timberlakeがリードボーカルを務めた*NSYNCの最初のシングルで、グラミー賞「Best Pop Performance by a Duo or Group with Vocals」にノミネートされています。

JPEGMAFIA x Danny Brown - Steppa Pig

*NSYNC - Gone (2001) 
「Steppa Pig」の0:13〜

アルバムタイトルにもなっている3曲目の「SCARING THE HOES」は、今作からの2枚目のリードシングルであり、リリースと同時にMVが公開されました。

また、この曲で耳に残るクラップ音は、Dirty Beaches「Untitled - Take Away Show」(2012)をサンプリングしています。

JPEGMAFIA x Danny Brown - SCARING THE HOES

Dirty Beaches - Untitled - Take Away Show (2012)

4曲目の「Garbage Pale Kids」は、楽しげな日本語のフレーズ「ジンギスカン♪」がループされ、時折激しいギター音が入る斬新な1曲となっています。
この曲では、1985年の日本の食肉加工会社「ニチロ(現:マルハニチロ)」のCMと、TVゲーム機「ニンテンドーファミリーコンピュータ」のCMからサンプリングされています。

JPEGMAFIA x Danny Brown - Garbage Pale Kids

ニチロ CM (1985)

ニンテンドーファミリーコンピュータ CM

9曲目の「Kingdom Hearts Key」は、アルバムの中でも唯一のゲスト参加者である、メリーランド州プリンスジョージズ出身の18歳ラッパーRedveilをフィーチャーした曲です。

JPEGMAFIA x Danny Brown feat. Redveil - Kingdom Hearts Key

この曲でも日本語がイントロからループされ、声優・歌手として活躍する坂本真綾のデビューシングル「約束はいらない」(1996)がサンプリングされています。

坂本真綾 - 約束はいらない (1996)

この曲は、日本のTVアニメ「天空のエスカフローネ」の主題歌に抜擢され、まだ無名であった坂本真綾の知名度を上げるきっかけとなりました。
また、ジェイペグマフィアは、この曲を手掛けた菅野よう子「羽化」(2007)も過去にサンプリングしており、彼がヒップホップマナーに沿ってプロデューサーをディグしていたことが窺えます。

JPEGMAFIA - Beta Male Strategies (2019)

菅野よう子 - 羽化 (2007)

おわりに

ジェイペグマフィアダニー・ブラウンのアルバム「SCARING THE HOES」はいかがでしたでしょうか。

このアルバムでは、ジェイペグマフィアが米軍に所属していた際、日本に駐留していたことが影響しており、アニメや日本のカルチャーから得たインスピレーションが随所に見られます。そのため、日本人にも親しみやすいサウンドが特徴的です。

さらに、過去にジェイペグマフィアカニエ・ウェストに憧れて楽曲制作を始めたと明かし、多くの楽曲をサンプリングしていることで知られています。そのため、現代のヒップホップの枠にとどまらず、斬新なビートが数多く収録されています。

その影響を反映した今作では、90年代のヒップホップに似たサウンドを、ローランド製のサンプラー「SP-404」で制作し、彼は「これがPro Toolsの無かった90年代のサウンドだ」と語っています。
このサンプラーは、J DillaMF DoomMadlibといった大物ミュージシャンたちにも愛用され、Lo-Fiヒップホップの発展に貢献しています。

アメリカの現行ラップシーンに飽きた方や、アングラヒップホップを好む方にとって、この1枚は必聴のアルバムと言えます。
この斬新なビートとサウンドは、多くのヒップホップアーティストたちに影響を与え、今後も多くのファンを魅了し続けることでしょう。

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