数々の記録を更新！！ニッキー・ミナージュ『Pink Friday 2』：女性ラッパーの頂点へ
Nicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)は、これまでに4枚のソロアルバムをリリースし、そのすべてが米国チャートで上位3位以内にランクインするという輝かしい成功を収めてきました。
2010年のデビュー以来、彼女は米国シングルチャートに132曲をランクインさせ（コラボ曲を含む）、そのうち23曲がトップ10入りを果たしました。これは女性ラッパーとしては史上最多の記録です。
さらに、ビルボードはニッキーを2010年代で最も成功した女性ラッパーの一人と評価し、「史上最も偉大なラッパーの一人」として高く賞賛しています。また彼女は「ラップ界の女王」とも呼ばれています。
そして2023年12月、彼女の待望の5枚目のアルバム「Pink Friday 2」が発表されました。本記事では、この最新作にスポットを当て、その魅力に迫っていきます。興味のある方は、ぜひ最後までおつきあいください。
レーベル : Young Money, Republic Records & Cash Money Records
リリース日 : 2023年12月8日
名前 : Nicki Minaj
本名 : Onika Tanya Maraj
年齢 : 41歳
出身地 : ニューヨーク
ニューアルバムの制作とファンへの期待
ニッキー・ミナージュは、前作「Queen」を2018年にリリースした後、幼なじみのKenneth Pettyと交際を始め、2019年に結婚しました。その後、2020年9月に第一子である息子を出産し、妻や母としても充実した忙しい日々を過ごしていました。
一方、アーティストとしてのニッキー・ミナージュは、2019年のインタビューで、既に次のアルバムの制作に着手していることを公表しました。
彼女は、前作「Queen」の制作に時間がかかったことを振り返り、次のアルバムをより迅速にリリースすることを目指しているとし、リリースへの期待と自身の思いをこのように語っています。
アルバムのリリースに関して、これまでで一番興奮しているかもしれないわ。これまでのようにファンに次のアルバムを待たせることがなくなってうれしい。このアルバムには、みんながニッキーについて好きなことがすべて盛り込まれているけど、よりビッグなサウンドになっているから、コレクションと完璧にマッチしているわ。
成功から得た知恵と若手育成への熱意
彼女が心に描いていたのとは異なり、実際にアルバムが発売されるまでに約5年の歳月が流れ、彼女のキャリアの中で最も時間を要した作品となりました。この間、彼女は特に若手のアーティストたちとのコラボレーションに力を注ぎました。例として、Doja Catと共演したシングル「Say So Remix」（2020）は、全米チャートで1位を獲得し、2人の女性ラッパーによる楽曲が初めてトップに立ったことで、ギネス・ワールド・レコーズに認定されたました。
また、妊娠中のニッキー・ミナージュは、その半年後に6ix9ineと共に「Trollz」をリリースし、これもまた全米チャートで1位を獲得。1年のうちに2度も全米チャートの頂点に立つという偉業を成し遂げました。
その後も、Jesy Nelson、Coi Leray、BIA、Ice Spice、Kim Petrasなど、その年に大きく注目を浴びたアーティストたちとコラボを重ねており、彼女は若手の育成やフックアップに積極的に取り組んでいたようです。
彼女はその後も、Jesy Nelson、Coi Leray、BIA、Ice Spice、Kim Petrasといった、注目を集める若手アーティストたちとのコラボレーションに力を入れ続けています。彼女のこの行動は、ベテランアーティストとして成熟した段階に入っていることを物語っており、新しい才能の発掘と育成に対する彼女の熱心な取り組みが、音楽業界において持続的な影響力を持つことを示しています。
ニッキー・ミナージュが若手アーティストとのコラボレーションに熱心なのは、彼女自身の経験が大きく影響していると考えられます。彼女はラップのキャリアを開始した後、Lil WayneのレーベルであるYoung Moneyと契約し、その後、Mariah Carey、Usher、Ludacrisなど多くの著名アーティストと共演してきました。また、Young Moneyのレーベルコンピレーションアルバム「We Are Young Money」(2009)では、当時若手だったDrakeやTygaと共演し、全米中から注目を集めました。
これらの経験は、彼女のデビューアルバム「Pink Friday」(2010)が全米チャートで1位に輝く大成功へと繋がったのです。
キャリアの成功はもちろん、若手アーティストとのコラボレーションへの情熱は、自身が成長する過程で得た恩恵を他の才能ある新人たちと共有したいという願望からも生まれています。ニッキー・ミナージュは、成功の秘訣には単独の努力だけでなく、他の才能あるアーティストとの連携やサポートも含まれると学びました。彼女は自身のキャリアを築く際に支援してくれた人々への感謝を込めて、若手アーティストの育成や共同作業に積極的に取り組んでいます。
収録曲について
ニッキー・ミナージュの新たなる章「Pink Friday 2」は彼女のデビューアルバム「Pink Friday」の精神を引き継ぎ、全22曲の充実したトラックリストを誇ります。このアルバムでは、Drake、J. Cole、Future、Lil Wayne、Lil Uzi Vertといったトップラッパーたちが豪華なゲストとして参加し、音楽の幅を広げています。
「Are You Gone Already」
アルバムのオープニングを飾る「Are You Gone Already」では、ニッキー・ミナージュが家族関係や別れの体験に心を込めて歌っています。彼女は過去のできごとや感情に触れ、途切れた縁や家族への深い思いを表現しています。特に、この曲では、彼女の父親であるRobert Marajが2021年に交通事故で64歳で亡くなった悲しい出来事を歌っており、息子が祖父に会えなかったことの悲しみを歌っています。この曲にはその哀愁が込められており、家族への強い想いが切なく表現されています。
さらに、ビリー・アイリッシュの「when the party's over」(2018)がサンプリングされ、そのメロディと歌詞が合わさり、彼女の切実な感情が深く伝わる楽曲となっています。
Nicki Minaj - Are You Gone Already
Billie Eilish - when the party's over (2018)
「Barbie Dangerous」
アルバムの第2曲目「Barbie Dangerous」は、疾走感あふれるエネルギッシュなラップが特徴的な楽曲です。ニッキー・ミナージュはこの曲で自信と強さを全面に押し出しています。彼女は自身の地位や才能に対する堅固な自信を表明し、他のラップアーティストとの競争をテーマに取り上げています。また、自分を模倣しようとする他者への言及もあり、自らの成功と確立した地位に対する誇りを歌っています。
この曲では、The Notorious B.I.G.の1997年の楽曲「Notorious Thugs」がサンプリングされています。これはミナージュがB.I.G.の音楽に深い敬意を表している証拠で、実際彼女は以前の楽曲「Barbie Dreams」（2018）でもB.I.G.の「Just Playing (Dreams)」（1994）をサンプリングしています。これらの事例から、The Notorious B.I.G.はニッキー・ミナージュのラップキャリアにとって重要な影響力を持っていると言えるでしょう。彼女の音楽はB.I.G.の影響を受けつつも、彼のレガシーを尊重しながら独自のスタイルを築いています。
Nicki Minaj - Barbie Dangerous
The Notorious B.I.G. feat. Bone Thugs-n-Harmony - Notorious Thugs (1997)
「Let Me Calm Down」
アルバムの6番目のトラック「Let Me Calm Down」は、意外にもミナージュとJ. Coleが初めてコラボレーションを果たした楽曲です。この曲では、ミナージュが自身のパートナーシップについて、心の奥深くから歌い上げています。彼女は複雑な感情を抱え、相手にもっと余裕を与えて欲しいと願う様子が描かれています。感情やストレスを言葉にすることの難しさを通じて、彼女は自分の時間とプライバシーを大切にする思いを吐露しています。
対照的に、J. Coleのパートでは、彼がミナージュのパートナーとしてのアドバイスや共感を表現しています。彼は彼女の強い志向を認めながらも、それが二人の関係を複雑にしていると語ります。愛する人へのサポートや忍耐、そして家族との絆について歌い、困難な状況でも共に対峙することの大切さを訴えています。
「Let Me Calm Down」は、恋愛における複雑な感情や困難、さらにはパートナーや自己への深い愛と忍耐を巧みに描き出した楽曲です。
Nicki Minaj feat. J. Cole - Let Me Calm Down
「Red Ruby Da Sleeze」
アルバムの13曲目「Red Ruby Da Sleeze」は、2023年3月にリードシングルとしてリリースされた注目の楽曲です。この曲では、Lumideeの「Never Leave You (Uh Oooh, Uh Oooh)」（2003）をサンプリングしており、そのトラックの上でミナージュが攻撃的で自己主張の強い歌詞を披露しています。特に、彼女は俳優クリストファー・リーヴが落馬事故により半身不随になった事件を引き合いに出し、同業者のMegan Thee Stallionへの非難を込めています。
加えて、過去にMegan Thee Stallionがドリトスのスーパーボウル広告用にリリースした「Flamin' Hottie」を引用し、「Dorito—b*tches mad that they nachos / ドリト・◯ッチがナチョスに怒ってる」という、皮肉たっぷりのラインを投げかけています。さらに、2020年のMegan Thee StallionがTory Lanezから受けた発砲事件にも触れ、「That .40 cal a make 'em dance like a go-go／あの40口径は彼らをゴーゴーのように踊らせる」という過激なリリックで、事件を連想させるような過激な表現を用いています。
Nicki Minaj - Red Ruby Da Sleeze
Lumidee - Never Leave You (Uh Oooh, Uh Oooh) (2003)
「Super Freaky Girl」
16曲目に収録された「Super Freaky Girl」は、2022年8月にアルバムからのリードシングルとしてリリースされました。この曲は、2019年の「Megatron」以来のミナージュの初のソロリリースであり、リリース前に彼女は自身の妊娠中に性的な楽曲をリリースすることに不快感を抱いていたと述べています。
レーベルは、私が妊娠しているときにシングルを出したり、あらゆることに全力投球することを望んだ。息子が私の体の中で育っているのに、下ネタの歌をリリースするなんて。
Rick Jamesの「Super Freak」(1981)をサンプリングしたこの曲は、Spotifyの女性ソロ・ラップ曲の最大デビュー記録を樹立し、全米シングルチャートで1位を獲得し、彼女のキャリアで3枚目のナンバーワンシングルとなりました。
Nicki Minaj - Super Freaky Girl
Rick James - Super Freak (1981)
新アルバムで歴史的な記録を樹立
新作は、早くもリリース初週に1億6000万回以上のストリーミング数を達成し、ニッキー・ミナージュにとって過去最大の記録を打ち立てました。このアルバムは、2023年の女性R&B/ヒップホップアルバムとしても記録を更新し、2作目の「Pink Friday: Roman Reloaded」(2012)以来となる3度目の全米アルバムチャート1位を獲得。
これにより、彼女はこれまでFoxy Brownと並んでいた記録を塗り替え、女性ラップアーティストとしての地位を一層固めました。
さらに、2010年代に2作、2020年代には1作のNo.1アルバムを出し、異なる年代でのNo.1を獲得し、女性ラッパーとしての新たな偉業を達成しました。
また、このアルバムからの14曲が全米シングルチャートにランクインし、ミナージュのチャート入り曲数を147曲にまで伸ばし、女性ラッパーとして史上最多の記録を樹立しました。
アルバムリリース1週間後には、50 Cent、Monica、Keyshia Coleなどのベテランアーティストをフィーチャーしたデラックスエディションがリリースされ、ファンをさらに驚かせました。
おわりに
「Pink Friday 2」は、ニッキー・ミナージュの輝かしいキャリアに新たな光を放つ作品となりました。彼女の情熱的で深い表現力は、音楽業界において彼女の地位を不動のものとし、ラップ界の女王としての称号に新たな意味をもたらしています。
このアルバムは、彼女の独創性と進化し続けるアートの精神を証明するものであり、次世代のアーティストたちとのコラボレーションを通じて、彼女の才能が未来の音楽シーンにも大きな影響を与えることを確かなものにしています。
ニッキー・ミナージュの音楽は、このアルバムによって新たな章を開き、その足跡はHIPHOP史において永遠に輝くものとなるでしょう。
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