アルバム「RAW」で見せるシティ・ガールズの新境地
ドレイクの2018年のシングル「In My Feelings」は、「Kiki, do you love me? Are you riding?」というフレーズで一世を風靡し、TikTokを始めとするSNSでのダンスチャレンジが大きな話題を呼びました。
この曲でクレジットこそされていないものの、フィーチャーされたことがきっかけで、Yung MiamiとJTによるフィメールラップデュオ、City Girls(シティ・ガールズ)が脚光を浴び、彼女たちは同年にデビューアルバム「Girl Code」を発表しました。
このアルバムには、Cardi Bをフィーチャーしたシングル「Twerk」や「Act Up」が収録され、これらの曲はクラブシーンでヒットしました。シティ・ガールズはその後、2020年にセカンドアルバム「City on Lock」をリリースし、その成功を基盤にさらに飛躍を遂げています。
本記事では、シティ・ガールズの最新アルバム「RAW」(2023年)にスポットを当て、収録されている各曲の背景や特徴を解説していきます。
レーベル : Motown Records, Quality Control, Universal Music Group
リリース日 : 2023年10月20日
名前 : City Girls
本名 : Yung Miami / Caresha Romeka Brownlee
JT / Jatavia Shakara Johnson
年齢 : Yung Miami / 29歳
JT / 30歳
出身地 : Yung Miami / フロリダ州マイアミ
JT / フロリダ州マイアミ
度重なる悲劇とオーディエンスからのバッシング
前作、「City on Lock」のリリースは、予期せぬ困難に直面しました。アルバムは公式発表前にオンラインで全曲がリークされ、シティ・ガールズは急遽リーク翌日にリリースを決定。加えて、この時期にはYung Miamiの元恋人であり息子の父であるJai Wiggins氏が亡くなるという悲劇が重なりました。Yung Miamiは「あのアルバムについて考えると、いつも心が重くなる」と述べています。アーティストとしての挑戦と、個人としての試練が交錯する、彼女にとって非常に困難な時期でした。
その後2年が経過し、ポッドキャスト「Caresha Please」のホストを務めるYung Miamiは、BETヒップホップアワードで2年連続で「最優秀ヒップホップ・プラットフォーム賞」を受賞しました。
しかし、その一方で、このポッドキャストが賞を受賞したことに対して、ファンや視聴者からは疑問の声が挙がっています。過去1年間にわずか4エピソードしかリリースしていないにもかかわらず、より頻繁にコンテンツを発信している「Drink Champs」「The Breakfast Club」「The Joe Budden Podcast」のような著名なポッドキャストと競い合い、勝利したことが、多くの人には不透明で説得力に欠けると感じられているようです。特に、Yung Miamiがどのようにして勝利を収めたのかについて、視聴者は様々なソーシャルメディアで疑問を投げかけています。
視聴者が指摘する通り、Yung Miamiはラッパーのディディと恋人関係にあり、ディディは彼女のポッドキャスト「Caresha Please」の放送元である「REVOLT」を設立しています。さらに、ディディは2023年にBET自体の買収を目論んでいるという報道もあり、このような背景から視聴者には不満が生じたようです。
そういった噂や諍いについて、Yung Miamiは有名人としての経験について語り、人々からの批判や注目されることは慣れていて動じないと述べています。
収録曲について
3年ぶりの新作には、全18曲が収録されており、Juicy J、Lil Durk、Usher、Muni Long、Kim Petrasがゲスト参加しています。また、前作「City on Lock」では18組のプロデューサー陣によって制作されましたが、今作では35組以上のプロデューサーが制作に参加し、アルバムに対する期待値の高さが窺えます。
「No Bars」
アルバムの4曲目「No Bars」は、7月にリリースされたJTの先行シングルです。これは、彼女の2019年のシングル「JT First Day Out」以来のソロ曲となります。JTは「No Bars」の制作について、フリースタイルで創作し、気分が沈んだある日に書いたと語っています。
JT - No Bars
「Fancy Ass Bitch」
8曲目の「Fancy Ass Bitch」は、メンフィスのラップグループThree 6 MafiaのメンバーであるJuicy Jをフィーチャーした曲です。このトラックでは、Three 6 Mafiaの「Ghetto Chick」(2003年)を冒頭からサンプリングし、さらにUGKの「Int'l Players Anthem (I Choose You)」にも使われたWillie Hutchの「I Choose You」(1973年)を取り入れています。これらのサンプリングは、南部ラップやギャングスタラップのファンにとってたまらない魅力的な要素でしょう。
City Girls feat. Juicy J - Fancy Ass Bitch
Three 6 Mafia - Ghetto Chick (2003)
Willie Hutch - I Choose You (1973)
「Good Love」
9曲目の「Good Love」は、2022年にアルバムからの最初のシングルとしてリリースされ、ゲストにはアッシャーが参加しています。この曲はLathun Gradyの「Freak It」(1997)をサンプリングしており、原曲に劣らずアッシャーの透明感のある美声が映える1曲となりました。
また、この曲は元々はクリス・ブラウンが参加する予定でしたが、制作の進行状況が不透明だったため、Yung Miamiは個人的にアッシャーに連絡を取り、曲を完成させることになったと語っています。
City Girls feat. Usher - Good Love
Lathun Grady - Freak It (1997)
「Flashy」
12曲目の「Flashy」は、ドイツ生まれのトランスジェンダーシンガーKim Petrasをフィーチャーした曲です。この曲は、ニッキー・ミナージュやマイリー・サイラスなどのヒット曲を生み出したプロデューサーDr. Lukeが共同プロデュースしています。ヒットメーカーDr. Lukeらが手掛けたこの曲は、80年代のR&B要素とマイアミベースを取り入れたビートに仕上がり、これまでにないシティ・ガールズが新たな音楽の領域に挑戦している様子が窺えます。
City Girls feat. Kim Petras - Flashy
「Face Down」
14曲目の「Face Down」は、アルバムからの5番目のシングルとして、2022年8月にリリースされました。この曲は、ケンドリック・ラマー、エミネム、レイ・シュリマーなどを手掛けたプロデューサーMike WiLL Made-Itがプロデュースしており、シティ・ガールズが得意とするブーティーなナンバーとなっています。
City Girls - Face Down
おわりに
メンバーのJTは、自分たちの最新作は非常にエキサイティングで、多くのファンが注目し、その成果に満足するだろうと述べています。
JTがそう語るように最新アルバムは、音楽の新境地を切り開く試みが光る、特別な作品となりました。
紹介した他にも、スヌープ・ドッグの「Drop It Like It's Hot」(2004年)やLil Kimの「Not Tonight」(1996年)など、クラシックヒット作をサンプリングした心地よい楽曲が豊富に収められており、彼女たちの特徴であるダーティーな曲だけでなく、ミッドテンポやR&Bの要素を巧みに融合させた楽曲は、新しい音楽の世界への挑戦を感じさせます。
さらに、「Flashy」や「Good Love」では、彼女たちの故郷であるマイアミの音楽スタイル「マイアミベース」を基盤にしつつ、それを進化させたサウンドが特徴的で、地元の音楽の先人たちへの敬意を表しつつ、マイアミの多様な文化とエネルギーを鮮やかに描き出しています。
このように、アルバムは彼女たちのキャリアの中でも特に実験的な一面を見せ、ただのパーティーソング以上の深みをリスナーに届けてくれるでしょう。
総じて、「RAW」はシティ・ガールズが新たな領域に踏み出した、非常に特別な作品と言えます。
また、DJにとって、このアルバムは現場で使える多くの楽曲が含まれ、まさに宝の山と言えるでしょう。
ぜひあなたのお気に入りを見つけて、プレイに取り込み、新しいプレイスタイルを探求してみてください。
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