二人のラップスター、不仲からの再結合:アルバム「Too Good to Be True」の舞台裏
RICK ROSS (リック・ロス)はこれまでに、音楽業界に多大な足跡を残してきました。彼は11枚のソロアルバムをリリースし、その大部分が全米チャートのトップ10にランクイン。その中でも5枚は1位を獲得する快挙を達成し、ラップ界における彼の影響力は絶大です。彼が設立したレーベル、Maybach Music Groupは、Meek Mill (ミーク・ミル)、Wale、Gunplayといった著名ラッパーたちを輩出してきました。
そして2023年11月、リック・ロスはミーク・ミルとのコラボアルバム「Too Good to Be True」を発表。この記事では、最新作にスポットを当て、その詳細に迫ります。興味をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
レーベル : Maybach Music Group
リリース日 : 2023年11月10日
名前 : Rick Ross, Meek Mill
本名 : Rick Ross / William Leonard Roberts II
Meek Mill / Robert Rihmeek Williams
年齢 : Rick Ross / 47歳
Meek Mill / 36歳
出身地 : Rick Ross / フロリダ州マイアミ
Meek Mill / ペンシルベニア州フィラデルフィア
リック・ロスの影響力とミーク・ミルの飛躍
リック・ロスは、Maybach Music Group (MMG)の設立者として知られ、2011年には音楽界の新星として脚光を浴びていたミーク・ミルを自身のレーベルに迎え入れるという大きな動きを見せました。この決断は、ミーク・ミルが同年に「XXL誌のFreshman Class」に選出されたことによる注目を集めた時期と重なります。
MMGは2011年に、その第一弾としてレーベルコンピレーションアルバム「Self Made Vol. 1」をリリースしました。このアルバムはミーク・ミルにとって大きな躍進の機会となり、彼は「I'm a Boss」および「Tupac Back」という2つのヒットシングルを生み出しました。更に彼のキャリアに勢いを加えたのは、翌年リリースされたミックステープ「Dreamchasers 2」で、この作品はリリースから24時間で250万回以上のダウンロードを記録し、ミックステープサイトのサーバーをダウンさせるほどの人気を博しました。また、同年にリリースされた彼のデビューアルバム「Dreams and Nightmares」は、全米チャートで2位を獲得し、彼の名声を不動のものとしました。
ミーク・ミルのキャリアはその後も順調に推移し、リック・ロスのMMGからリリースした5枚のアルバムがすべて全米チャートのトップ3にランクイン、うち2枚は首位を獲得しました。これにより、ミーク・ミルは2010年代のラップシーンで一線級のスターとしての地位を確立しました。
リック・ロスとの葛藤を越えて
表向きにはリック・ロスとミーク・ミルは順調な関係を築いているように見えましたが、2021年5月にはその印象に疑問符が付く出来事がありました。ミーク・ミルが自身の34歳の誕生日パーティーでリック・ロスを招待しなかったことが報じられ、これが両者の関係に亀裂が生じている兆候と見られました。報道によると、ミーク・ミルはMMGを離れたいと考えていたが、リック・ロスはこれを受け入れていなかったとされます。この関係の変化は、ミーク・ミルが後に削除した2021年10月25日のX(Twitter)投稿でさらに明らかになり、そこで彼はレーベルに対する不満を明かしていました。
リック・ロスとミーク・ミルは2018年以来、楽曲でのコラボがなく、その事実は、二人の関係に関する憶測をさらに悪化させました。しかしその後、ミーク・ミルのアルバム「Dreams and Nightmares」リリース10周年を祝うコンサートが開催された際、ミーク・ミルはリック・ロスをステージに招待し、彼らの共演曲「I'm a Boss」を一緒に披露しました。この出来事は、過去の憶測に対する意外な反転として捉えられ、二人の関係に新たな光を当てました。
ステージ上でのミーク・ミルとリック・ロスの抱擁は、多くのファンや観客にとって特別な意味を持ちました。この瞬間は、彼らの過去のコラボレーションの魔法が再び蘇ったような、ノスタルジックな感覚を呼び起こしました。
シャックとコービーのような最強な二人
リック・ロスは、新作をリリースする決断に至った経緯について、自分たちをNBAの選手であるシャキール・オニールとコービー・ブライアントに例えて次のように述べています。
※シャキール・オニールとコービー・ブライアントは過去に確執があると度々噂されていました。
こうしてビーフを超え、リリースされた新作には全17曲が収録されており、Future、Jeremih、Fabolous、The Dreamなど、2010年代初頭に隆盛を極めたアーティストがゲスト参加しています。さらに、MMGとの縁の深いFrench MontanaやWaleも参加しており、当時のヒップホップヘッズや彼らのファンにとって、たまらないメンバー構成となっています。
収録曲について
「Shaq & Kobe」
アルバムのオープニングを飾る「Shaq & Kobe」は、2023年9月にリードシングルとしてリリースされました。
この曲のタイトルは、前述したNBA選手のシャキール・オニールとコービー・ブライアントの確執に因んでおり、曲中では成功やお金、権力に関する話が繰り広げられています。
成功すると妬まれたり敵を作ったりすることを歌い、ミーク・ミルとリック・ロスは成功の裏側やその価値について言及し、成功への道のりやその後の生活についても述べています。彼らはお金と権力の増加が周囲の人々を変え、自分たちの生き方にも影響を及ぼすことや、成功がもたらす利点とリスクについてラップしています。
Rick Ross, Meek Mill - SHAQ & KOBE (2023)
「Go To Hell」
アルバムの3曲目「Go To Hell」は、経験豊富なプロデューサーデュオCool & Dreによって制作されました。このデュオはリック・ロスのデビューアルバム「Port of Miami」(2006年リリース)の複数曲を手掛けており、この曲にはリック・ロスの原点への回帰が強く反映されています。さらに、イギリスのバンドTears for Fearsの1984年のヒット曲「Shout」をサンプリングしていることも特筆すべき点です。Tears for Fearsの繰り返される歌声が、曲に強力なエッジを加え、新しい音楽的な次元を生み出しています。
Rick Ross, Meek Mill, Cool & Dre feat. BEAM - Go To Hell
Tears For Fears - Shout (1984)
「Above The Law」
9曲目の「Above The Law」は、多くの著名なラッパーやシンガーと交流を持ち、数々のクラブアンセムを生み出してきたDJ Khaledがプロデュースしています。この曲では、Snoop Doggの「Tha Shiznit」(1993)を大胆にサンプリングしており、そのエッセンスを取り入れた独自のスタイルが際立っています。特に、フックではTeyana Taylorが力強く歌い上げ、豪華な楽曲に仕上げています。このサンプリングは、曲全体にレトロな雰囲気を与えつつも、新鮮で現代的なサウンドを作り出しています。
Rick Ross, Meek Mill, Teyana Taylor, DJ Khaled - Above The Law
Snoop Dogg - Tha Shiznit (1993)
「Millionaire Row」
15曲目の「Millionaire Row」は、French Montanaがゲスト参加しています。この曲は、重厚なサウンドと繰り返されるフレーズが特徴で、French Montanaのクラブバンガー「Pop That」を彷彿とさせる雰囲気を持っています。これにより、2010年代初頭のヒップホップシーンを思い起こさせる1曲となっています。French Montanaの参加が、曲全体にThrowbackなエッセンスを与え、懐かしい時代の雰囲気を感じさせるものとなっています。
Rick Ross, Meek Mill, French Montana - Millionaire Row
「In Luv With The Money」
16曲目の「In Luv With The Money」は、プロデューサーチーム808 Mafiaの創設者であるSouthsideがプロデュースしました。Southsideは、過去にもFutureと共に「Fuck Up Some Commas」(2014)というクラブアンセムを生み出しており、今作も相性抜群の二人が参加したことにより、曲に独特のエネルギーが宿っています。
この曲では、重厚なシンセサイザーが効いたビートが特徴で、FutureとSouthsideのコラボレーションがもたらす独特の音楽性が際立っています。これによって、彼らの音楽世界にオーディエンスを誘い込むような魅力が感じられます。
Rick Ross, Meek Mill, Future - In Luv With The Money
おわりに
リック・ロスが明らかにしたところによると、この今作はわずか6週間で制作されたとのことです。さらに、ミーク・ミルはこの制作過程でお互いの存在がエネルギッシュであり、お互いを刺激し合い、モチベーションを高め合うものだったと述べています。彼らの関係性や存在が音楽制作において相乗効果を生み出し、制作期間の短さにも関わらず、その熱意やパワーが作品に反映されたようです。
リック・ロスとミーク・ミルの新作「Too Good to Be True」は、その名の通り「信じられないほど素晴らしい」サウンドとなりました。再び共演したこの二人の才能が結集したアルバムは、音楽の力を最大限に引き出した卓越した作品です。
彼らの再共演は過去のいざこざを乗り越えた成果であり、音楽ファンにとっては、彼らの進化と音楽への新しい挑戦を象徴する一枚となっています。
ヒップホップ界の重鎮であるリック・ロスとミーク・ミルが共に創り上げたこのアルバムは、彼らの音楽人生における新しい転機となることでしょう。二人の今後の動向が非常に楽しみです。
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