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最新アルバム『One of Wun』:逆風を乗り越えたGunnaの自画像


ジョージア州カレッジパーク出身のラッパー、Gunna(ガンナ)ヤング・サグのレーベルであるYSL Recordsに見出され、その才能を開花させました。彼は2020年にリリースしたセカンドアルバム『Wunna』で、初めて全米アルバムチャートの1位を獲得し、その名を広く知らしめました。

その後、ガンナは3枚目のアルバム『DS4Ever』でも再び全米アルバムチャートの首位を獲得しました。しかし、2022年5月にRICO法(組織犯罪取締法)に基づく容疑でYSL Recordsの関係者28人と共に逮捕されました。当初、彼には禁固5年の判決が下されましたが、検察への協力(いわゆる「スニッチ」)を理由に減刑され、500時間の社会奉仕活動が命じられました。このことで多くのラッパーやファンから激しい批判を浴びましたが、その逆風の中でも彼は2023年にアルバム『A Gift & a Curse』をリリースしました。

このアルバムからシングルカットされた『FukUMean』は、ガンナにとってソロ曲として最高位となる全米シングルチャート4位を記録し、Spotifyではこれまでに7億回以上のストリーミングを獲得するなど、彼の代表曲となりました。

そして、2024年5月には5枚目のアルバム『One of Wun』をリリースしました。今回の記事では、この最新作に焦点を当て、その魅力を詳しく探っていきます。

レーベル  : 300 Entertainment, Gunna Music & Young Stoner Life
リリース日 : 2024年5月10日
名前    : Gunna
本名    :    Sergio Giavanni Kitchens
年齢    :    30歳
出身地   :    ジョージア州カレッジパーク

スニッチ疑惑を乗り越えたガンナの新たな挑戦と成長

前述したように、ガンナリル・ダーク21サヴェージリル・ベイビーといったラッパーたちから、スニッチ疑惑について楽曲やSNSで厳しく言及されました。このため、多くのファンやオーディエンスは、彼がラップシーンから干され、今後のキャリアが難しくなるのではないかという懸念を抱いていました。しかし、これらのガンナに向けられたと思われる楽曲について、ガンナは「正直、聞いていない。何か気になることがない限り、他のラッパーを聴くことはあまりない」と述べています。また、一方で、スニッチの件については数人のラッパーたちと電話で話をし、「みんなに誤解されている」と明かしています。

そのラッパーたちは、この件に関与していない。彼らは何が起こっているのか、法的なことは全く知らないんだ。たしか2、3人と電話で話したんだけど、みんな誤解してるんだ。
惑わされているときは、従うか自分で決断するかの選択を迫られる。それが今、示されていることだよ。フォロワーになるか、「彼らのビジネスが何なのか、本当に何が起こっているのかわからない」と思って中立的な立場を取るか、どっちかだ。

このように、ヤング・サグの事件をきっかけに、ガンナを取り巻く状況はますます複雑になりましたが、その中で彼は、自分の身の回りに注意を払い続けることが難しいという現実を認め、集中することが大切であると述べています。

人生の教訓のひとつは......常識的なことだけど、自分の身の回りを気にかけるのは難しいということ。そして集中すること。この2つは、みんなが忘れてはならない重要なことだと感じている。それが俺たちの助けになる。そして、君が自分自身を良くすることで、他のみんなも君を好きになるよ。

そう語るガンナは、出所後に体重が30〜40ポンド(約13kg〜18kg)ほど落ちたことを明かし、さらに現在もトレーナーをつけてワークアウトに励むなど、自分磨きを続けているようです。また、こうした自己鍛錬により、彼自身が進化し、それが彼の音楽にも反映されていると語っています。

トレーナーを雇って、週に6日トレーニングしてるんだ。食生活も改善して、毎日健康的な食事を心がけてるよ。それが気に入っていて、運動すると気分も良くなるんだ。自分自身を代弁している感じかな。自分で説明できるし、成長が見えるんだ。俺がアーティストとして進化しているのがわかるよ。俺が進化することで、俺の音楽も進化していくんだ。

24歳で『Drip Season 3』を出していた俺とは違う。今は30歳になって『Bittersweet』や『A Gift & A Curse』を発表してる。それが今の俺の生き方と共鳴しているんだ。当時も同じように感じてたけど、それはその時のためだった。だから今回は違う形で進化していて、それが音楽にも反映されているんだ。

ガンナ、音楽とアートが融合するアルバムアートの舞台裏

2022年のアルバム『DS4EVER』では、アニメ「ポケモン」とのコラボでも知られるアーティスト、ダニエル・アーシャムが手掛けた彫刻をモチーフとしたアートワークを採用しました。また、翌年に発表したアルバム『A Gift & a Curse』(2023)では、ドクロを頭に乗せた自身の肖像画をアートワークにするなど、ビジュアル面でも特に力を入れているガンナ

最新作『One of Wun』のアートワークは、ロサンゼルス在住の画家Calvin Clausell Jr.が手掛けたもので、彼はこの作品のために4日間、毎日12時間から15時間描き続けて完成させたそうです。Calvin Clausell Jr.は、アートワークの制作について、「ガンナが非常に協力的で信頼してくれたおかげで、クリエイティブなアイデアを実現できた」と明かしています。

彼の顔をずっとラッピングしていたんだ。その間、彼はとても冷静だった。俺たちを信頼してくれていたからだと思う。それが彼のエネルギーだったんだ。彼は俺たちを信じて、自分たちの仕事を任せてくれた。完成後、一緒にすべてを見て回った。彼は自分の好きなものや欲しいものをよく知っている。だから、彼が俺たちを信頼して、クリエイティブなことを考えさせてくれたのは、本当に素晴らしかった。まさに共同作業だったよ。彼はとても存在感があって、クリエイティブな意見もたくさん出してくれたんだ。

このように、ガンナはビジュアル面でも積極的にアーティストと協力し、独自の世界観を表現しています。彼の音楽とアートが一体となることで、リスナーや観客に強い印象を与えていることが伝わります。

収録曲について

アーティストとして脂の乗ってきた30代に突入したガンナの最新作には、全20曲が収録されており、ゲストにはRoddy RicchOffsetNormaniLeon Bridgesが参加しています。
以前のアルバム『A Gift & a Curse』ではスニッチ疑惑が浮上し、その影響でゲストアーティストは皆無でした。しかし、今作ではRoddy RicchOffsetなどのラッパーが参加し、徐々にですが、彼の信頼がシーンの中で回復しつつある兆候も感じられます。

また、ガンナは今作について、自身の成長を示すものであり、サウンド面でも新たな挑戦をしたアルバムになっていると語ります。

このアルバムはまだ成長を示している。より自分を律するようになって、大人になっていく様子を表している。いろいろなことに挑戦し、新しい環境で生活してきた。それが音楽にも表れていると思う。自分の声を活かしたり、異なるサウンドやメロディを試したり、クリエイティブに取り組んでいる。自分の進化を感じてもらえるはずだよ。

今回のアルバムのエグゼクティブプロデューサーであるTurboは、アトランタ出身のプロデューサーであり、リル・ベイビーガンナのヒットシングル『Drip Too Hard』トラヴィス・スコット『YOSEMITE』など、多くの名曲を手がけています。

Turboは、今回のゲストアーティストについて、一緒に作業していた中から最高の曲を選んでくれたと話し、また、過去のフィーチャリングは常に彼らの友人であったことを強調しており、音楽制作プロセスが友情や自然な流れの中で行われていることを強調しています。

彼らは一緒に仕事をしていたんだ。毎日スタジオに通っているね。ただの仕事さ。その週は、全てのフィーチャリングがそうなった感じ。俺たちは彼らと一緒に仕事をしていて、色々なことをしていて、彼らはベストな曲を選んでくれた。彼は決して「フィーチャリングしよう」というタイプじゃない。過去に彼がしていた多くのフィーチャリングは、いつも俺たちの友人だったね。彼とNormaniは友達。彼とLeon(Bridges)も。俺たちはみんな、ただつるんでいるんだ。音楽は成り行きなんだ。

『​​whatsapp (​​wassam)』

アルバム4曲目『whatsapp (​​wassam)』は、2024年5月にアルバムからのリードシングルとしてリリースされました。この曲は、成功とその変化、そして苦労をテーマにしています。ガンナは自分の成功や収入を誇示し、契約書を見せつけてそのことを証明しています。同時に、多くの人が彼の失敗を願っているため、自己防衛のために銃を携帯し、かつての夢だった車を手に入れ、成功を収めたことを強調し、その成長を誇りに思っています。
さらに、偽りの友人や裏切り者に対する謝罪は不要だと述べ、成功への焦点を維持しています。
彼はここ数年での出来事や経験を歌にし、自身の成功とそれに伴う困難や周囲の反応について改めて語っています。

Gunna - whatsapp (wassam)

『$$$』

アルバム13曲目『$$$』は、シンガーNormaniとのコラボ曲で、タイトル通りお金や成功に関するテーマを歌っています。ガンナのパートでは、成功への向かう姿勢や、その過程での苦労や後悔に焦点が当てられています。彼はお金を稼ぐことに集中し、自身の成功を祝福していますが、同時にその成功には価値観の変化や困難もついて回ることを認識しています。
Normaniのパートでは、お金が人々を変えたり、真実がお金の力で隠されたりすることについて歌われています。彼女はお金に囲まれても変わらず、大切なのは真実と誠実さであることを伝えています。

Gunna feat. Normani - $$$

『​​conscience』

15曲目『​​conscience』は、「このばかげたことにはうんざりだ」と、彼は自分を裏切る人々のせいで「気分が落ち込む」と告白しており、曲中では、苦労や困難に直面しながらも前進し続ける姿勢や、自分の信念を貫くことの重要性について述べています。また、周りの期待や圧力に打ち勝ちながら、自分自身を貫くことの重要性も強調されています。

Gunna - conscience

『the time』

前曲の『​​conscience』からスムーズに繋がって始まる16曲目の『the time』は、今作の楽曲の半数近くを手掛けたKenny Stuntinが共同プロデュースしたナンバーです。この曲では、自分の経験や感情、成功と挫折についての洞察を共有しています。歌詞は、諦めずに戦う精神や自己成長、偽りや詐欺に対する警戒心など、さまざまなテーマを取り上げています。自己肯定感や成功への信念が表現されており、個人の成長と自己理解の旅が描かれています。

Gunna - the time

​『let it breathe』

17曲目『let it breathe』は、Roddy Ricchとのコラボ曲で、ガンナのバースでは、成功への道のりや困難について語られます。彼は自らの成功を待ち望み、自分の目標を追求する中で嫉妬や欲望と戦うことがあると述べています。また、過去と現在の成功に感謝しつつ、まだ道のりが続いていることを認識しています。
一方、Roddy Ricchのパートでは、成功と葛藤の関係に焦点が当てられています。彼は自らの過ちや過去の困難を振り返りながらも、成功への道を進んでいます。彼は成功を追求する中で、誰かを信頼することの難しさや、金銭的な成功と内面的な満足感の関係にも触れています。曲全体を通じて、グラインド(努力や精進)と心の強さが強調され、成功への道のりが容易ではないことが示されています。

Gunna feat. Roddy Ricch - let it breathe

おわりに

前作『a Gift & a Curse』では、出所後にリリースされた初めてのアルバムであり、所属するレーベルYSL関連や、逮捕に至った事件についての楽曲が収録されていました。しかし、今回の作品では、彼が逆境に立ち向かう姿や、ラッパーとしての成功や目標、他人を信頼することの難しさなどが歌われています。ガンナが語ったように、彼の内面が一歩前進し、成長が感じられる作品になっています。

早くも新作アルバムは、全米アルバムチャートで2位を獲得し、R&B/Hip Hopアルバムチャートでは首位を獲得しました。これまでに彼が発表したアルバム全てがR&B/Hip Hopアルバムチャートで1位を獲得していることから、多くのオーディエンスやファンから注目を浴びていたことが再認識されました。

最後に、ガンナはこれからの目標について「もっとクリエイティブであり続けたい」と述べています。彼はラッパーとしてキャリアの成熟期を迎えており、今後の彼の一挙手一投足から目が離せません。

もっとクリエイティブであり続けたい。Gunnaにこんなことができるなんて知らなかったとか、Gunnaからこんなサウンドが出るとは思わなかったとか、気持ちの良いことをやり続けたい。あるいは、「ヤバい、Gunnaがこんなサウンドで戻ってきたんだ」と思わせ、この長寿を証明したいんだ。

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