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ニューアルバム『INSANO』: Kid Cudiの最後の楽章か新たな始まりか?
Kid Cudi(キッド・カディ)は、カニエ・ウェストに見出され、2008年にリリースされたデビューアルバム『Man on the Moon: The End of Day』で全米チャートトップ5入りを果たしました。そのアルバムに収録された曲『Day 'n' Nite』は全米チャートで3位にランクインし、彼の成功を印象付けました。
キッド・カディはその後も7枚のアルバムを発表し、彼独自のスタイルとメランコリックな歌詞で知られています。彼の音楽は、ヒップホップ、ロック、エレクトロニカの要素を融合させたもので、2022年には初の来日公演も行い、幅広いファン層から支持を集めました。
そして2024年1月、彼の9枚目のアルバム『INSANO』が発表されました。この記事では、キッド・カディの最新作にスポットを当て、その魅力を紹介します。
レーベル : Wicked Awesome Records & Republic Records
リリース日 : 2024年1月12日
名前 : Kid Cudi
本名 : Scott Ramon Seguro Mescudi
年齢 : 39歳
出身地 : オハイオ州クリーブランド
ラストアルバムと引退の示唆
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2022年11月にキッド・カディは、自らのX(旧Twitter)を通じて、所属レーベルであるRepublic Recordsとの契約が残り1枚のアルバムのみとなっていることを公表しました。彼はそれに続いて、アルバムリリース後の将来についてはまだ不透明であることを示唆しました。さらに、その1ヶ月前には、自身の音楽活動が「終焉に近づいている」と言及し、将来は幼稚園の教諭になることを検討していると明かし、話題となりました。
あと1枚のアルバムを作って、それで契約が終わるんだ。その後は何をするかまだ決めていないけど、そうだね、あと1枚。 来年はないだろうけど。また近況をお知らせするよ。
Im doin 1 more album and then im done w my deal and not sure what ima do after that but yea, 1 more. Wont be next year. Keep u posted.
— The Chosen One (@KiDCuDi) November 6, 2022
2023年3月、キッド・カディは自身のInstagramのライブ配信で、新作アルバムに対する強い自信を表明し、それが人々の心に響くとの確信を表明しました。
初めてこれほどパワフルなプロジェクトに取り組んでいるんだ。このアルバムがみんなを感動させることを心から信じているんだよ。きっと大きな反響があると思うし、本当に興奮しているんだ。
言いたいのは、俺がみんなを失望させることはないということ。これが今年のアルバムになるんだ。冗談抜きで、真剣な話だから。知り合いにもぜひ伝えてほしいんだ。
しかし、2023年5月、キッド・カディはインスタグラムのライブ配信で、これまでの発言を撤回し、まだ音楽活動から引退しないことを明らかにし、このアルバムが最後ではないことを認めました。その配信の中で、彼はこのアルバムが「おそらく自分がこれまで作った中で、本当に100%満足している初めてのアルバム」であると述べました。
ケンドリック・ラマーの影響:新たな音楽の方向性
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新作について、キッド・カディはケンドリック・ラマーの影響を受けたと述べ、彼のパリ公演を観て深い感銘を受け、自身の音楽プロジェクトに新しい方向性を見出したようです。
これまで様々なタイプのアルバムを制作してきた。クリエイティブな側面も、サウンドにおいても、多様な空間を経験してきた。それでも達成していない目標は何だろうかと考えることがある。そして、次のアルバムがどのようなサウンドになるかについても、まだ模索している。パリでのヨーロッパツアーを終えた後、Kendrickに会いに行ったんだ。彼のパフォーマンスは、まさに衝撃的だった。コンサートの始まりから終わりまで、観客の反応を観察していた。皆がパーティーモードで、すべての曲に合わせて歌っているのを見て、自分のショーでも同様のことが起こらないわけではないが、ここまでのものはまだなかった。そこで、「これこそが求めていた反応だ」と感じたんだ。観客が良い気分になり、私がパフォーマンスをする際に楽しい場であってほしいと思っている。
過去に彼は、ケンドリック・ラマーとのコラボ曲『Solo Dolo Part II』をリリースしており、キッド・カディはこの曲にどれだけ誇りを持っているかを明かしました。
Kendrickは常に俺の世界のトップ3に入るアーティストだ。実際、俺たちの曲「Solo Dolo Part II」にとても誇りに思っている。その曲から受けたインスピレーションでスタジオに向かい、「さあ、やるぞ」と気合を入れたんだよ。エネルギッシュな作品を作り出すことが必要だった。俺は今、幸せで人生でより良い場所にいるんだ。こんな気持ちでアルバムを制作するのは初めてだよ。だから、このアルバムはまさにアリーナやライブパフォーマンスを意識してデザインされている。セットリストを考えるのは、結構な挑戦だったね。
Kid Cudi feat. Kendrick Lamar - Solo Dolo Part 2 (2013)
カニエ・ウェストとの和解を語る
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2022年にカニエ・ウェストが音楽プレーヤー「ステムプレイヤー」で独占的にリリースしたアルバム『DONDA 2』の発表時、キッド・カディをアルバム参加から除外したことが、両者の不和を示唆する事例として数多くのメディアで取り上げられました。しかし、新たな作品のリリースを機に、長年にわたる確執が話題となっていたキッド・カディは、カニエ・ウェストについて語り、両者の和解について言及しました。
友情みたいなものさ。友情を超えている。兄弟のような、姉妹のような、家族のような。ちょっと複雑なんだ。そして兄弟同士が一番傷つけるものだよ。 いろいろなことがあっても、家族はいつもそばにいる。家族を諦めないでね。
さらに、キッド・カディはカニエとの距離を置きたいと考えていたことを認めつつも、カニエが自身の人生に与えた影響や、キャリアの初期における支援に対しては強く感謝の意を表しました。
彼は、究極的には俺の兄弟で、俺の人生に入ってきて、俺を支持してくれて、俺のキャリアの初期に誰もしてくれなかったことをしてくれた人なんだ。Kanyeが最初の「Day'N'Nite」ビデオの制作費を、俺が契約していなかった時に払ってくれたことさえ、みんな知らないんだ。彼は学び、成長している。彼は自分が間違いを犯したことを知っているし、それが美しさだと思う。これは素晴らしいことなんだ。彼は一部の領域、一部の空間、特定の人々から、取り返しがつかないようなことを言ってきた。しかし、俺たちは成長し、俺は彼のために祈るよ。それが俺の兄弟だから。そして、俺たちが再び仲良くなった理由は、彼が俺に謝罪したからで、それは誠実だった。俺はただ驚いた。Kanyeは誰にも謝らないし『Sorry』なんて言わないんだって思ったよ。
収録曲について
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新作のアートワークは、世界的なデザイナーKAWSが手掛けたもので、過去にKAWSはトラヴィス・スコットとキッド・カディのコラボシングル『THE SCOTTS』のアートワークも手掛けました。
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アルバムには、全21曲が収録されており、トラヴィス・スコット、A$AP Rocky、Lil Wayne、Pharrell Williams、Young Thug、XXXTENTACIONなど、錚々たるメンバーがゲスト参加しています。
さらに、数々のアーティストのミックステープやアルバムなどのホストを務めたDJ Dramaも加わっており、キッド・カディはこのアルバムをイベントのようなものにしたいと思い、DJ Dramaに声をかけたといいます。彼はすぐに参加を快諾し、アルバムに祝祭性を加えました。
『GET OFF ME』
3曲目「GET OFF ME」は、トラヴィス・スコットと共に制作され、ドレイク、DJ キャレド、エミネムといったアーティストのプロデュースで知られるMike Zombieが共同で手がけた楽曲です。この曲で、彼らは重厚で心に響くビートを背景に、自信と成功を祝福し、目標達成への努力と自己表現の価値を強調しています。歌詞では、自己肯定、成功への渇望、そして自己表現の重要性が中心テーマとして扱われており、特に自分たちの音楽が持つ力と影響力を「魔法」と称えています。
Kid Cudi, Travis Scott - GET OFF ME
『WOW』
5曲目の『WOW』は、A$AP Rockyとの曲で、キッド・カディのブレイクソング『Day 'n' Nite』を手掛けたDot Da Geniusとの共同プロデュースです。この楽曲を通じて、キッド・カディとA$AP Rockyはマリファナをシンボルに用い、解放感と自己実現の喜びを描写しています。二人は自らの世界観における自由と楽しみを祝福し、信念に基づいて進む道の重要性を強調します。自己の強さを信じ、人生の困難に立ち向かう決意を表明しながら、生活を楽しむことが人生の真の喜びであると伝えています。
Kid Cudi, A$AP Rocky - WOW
『ELECTROWAVEBABY』
6曲目『ELECTROWAVEBABY』は、金曜の夜の自由と楽しみ、自己表現の喜びを祝福する内容です。主題は、日常からの一時的な逃避、マリファナとワインを楽しむリラックスした時間、そして自己実現への渇望に焦点を当てています。キッド・カディは、自分自身を信じ、困難に立ち向かいながら、人生の楽しみを最大限に享受することの重要性を強調しています。
歌詞全体を通じて、自由で楽しい瞬間を楽しむこと、そして自分の内なる星を信じるメッセージが込められています。
また、この曲はイントロからスウェーデンのポップグループAce of Baseの『All That She Wants』(1992)をサンプリングしており、キッド・カディは子供の頃から彼らのファンであると話しています。
Ace of Baseは子供の頃から好きで、小学校1年生の体育の授業で、先生がAce of Baseをかけてエアロビクスをしていたのを覚えている。その音楽は青春の一部として深く心に残っている。彼らの音楽は、俺にインスピレーションを与える独特の魅力がある。
Kid Cudi - ELECTROWAVEBABY
Ace of Base - All That She Wants (1992)
『X & CUD』
15曲目「X & CUD」は、XXXTENTACIONとの共演作であり、2017年にリリースされた彼の曲「Orlando」をサンプリングしています。この曲で、二人は初めてコラボレーションを実現しました。キッド・カディは、XXXTENTACIONとのコラボレーションに至った背景について次のように語りました。
「Speedin' Bullet 2 Heaven」の俺のトラックをXが手がけたバージョンを初めて聴いた時、その驚きをツイートした。「これって本当?」って。そしたら、Xと非常に密接に働いていたJohn Cunninghamとつながったんだ。彼は俺に会いに来てくれて、スタジオで少し話し合い、その曲を聴かせてくれたんだよ。それが本当に素晴らしいものだったんだ。いずれこの曲をリリースする必要があると感じたけど、バースを直接求めるのは避けたいと思ったんだよね。そんな中で、「Orlando」というドラムのない楽曲が最も衝撃的だったんだ。そこでJohnに連絡を取り、セッションのピースとヴォーカルをもらって、「これをプロデュースして新しいものにしよう」ということになったんだ。
この曲はまるで贈り物のようで、サンプリングする準備ができていたし、ドラムもなく、本当にむき出しだった。だから、天からのお告げだと思い、スタジオに行って、何かを思い浮かべたり、パーツをつなぎ合わせたりしたんだ。
Xの節回しやメロディが大好きだったから、ファンにとっては、俺が彼にインスパイアされ、そして彼の世界に少しだけ足を踏み入れることが新鮮であると思うんだよね。そして、曲の後半は高揚感のあるパートにしたかったんだ。
Xはまるで若かった頃の俺を映し出す鏡のようだ。傷ついた若者を見ると、俺も共感するんだ。この曲からは、彼の痛みを感じたし、以前からあるバースだけど、俺のリミックスのようなもので、愛を示す方法であり、XとCudiのコラボレーションがどのように聞こえるかを皆に示すための作品なんだ。
Kid Cudi, XXXTENTACION - X & CUD
XXXTENTACION - Orlando (2017)
『PORSCHE TOPLESS』
19曲目の『PORSCHE TOPLESS』は、2023年6月にアルバムからのリードシングルとしてリリースされ、この曲では、ドレイクやトラヴィス・スコットのプロデュースで知られるBNYX®が手掛けています。
この楽曲では、キッド・カディがポルシェを操りながら、自由かつ陽気なひと時を謳歌する様子が描かれています。彼は自身に満ち溢れ、人生を存分に楽しんでいるようで、青い空を駆け抜け、楽しい夜を祝い、街が賑やかになることを待ち望んでいます。
Kid Cudi - PORSCHE TOPLESS
おわりに
キッド・カディの最新アルバム『INSANO』は、彼の音楽キャリアの中でも特に目立つ冒険的な作品として注目されています。基本となる彼のサウンドに新しい試みを加え、アルバム全体に新鮮さをもたらしています。しかし、全21曲を通じての多様性と豊かさが評価される一方で、曲やゲストアーティストが一貫していないとの意見もあります。特に「TOO DAMN HIGH」のような曲がアルバムの流れにそぐわないとの指摘や、「WOW」と「ELECTROWAVEBABY」のような曲が際立っているものの、アルバム全体の中で場違いに感じられるという意見もあります。
しかし、アルバム『INSANO』は、彼自身が最も満足している作品であり、彼のこれまでの作品と比較しても、特に自信に満ちたパフォーマンスと革新的な楽曲が印象的で、キッド・カディが音楽的な枠を超えて挑戦を続けていることが明確に感じられます。
『INSANO』に対するレビューは様々ですが、キッド・カディのファンであれば、彼の音楽的探求と成長を感じ取ることができるはずです。アルバムは、彼の過去のプロジェクトを新たな視点で再評価し、過去の音響風景を全く新しい光で再活性化させています。キッド・カディの音楽を深く理解し、彼の冒険心あふれる音楽旅行に同行することで、リスナーは『INSANO』の魔法を最大限に感じることができるでしょう。
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