Appleから1億ドルのオファーを蹴り、新作は独自プラットフォームで公開！ Kanye West - Donda 2 (2022)
2021年、度重なる延期を経て8月にようやくリリースされたKanye West(カニエ・ウェスト)のアルバム「DONDA」(2021)。
発売初日には世界で約1億回のストリーミングを記録し、Spotifyでは2021年の初日ストリーミング最大記録を更新、Apple Musicのトップアルバムチャートでは初日に152カ国で1位を獲得し、新記録を打ち立てました。
本国アメリカでは初日に6000万ストリーミングを記録し、2021年のストリーミング記録を更新し、この年を賑わせたアルバムになりました。
そんな彼が、2022年に11枚目のアルバム「DONDA 2」をドロップ。
この作品は、彼のデバイス「Stem Player」からのみのリリースで、Def Jamからの脱退を表明していたため、このアルバムはカニエにとって初ののインディペンデント・リリースとなりました。
ここでは、このアルバムのリリースと「Stem Player」について解説します。
レーベル : Columbia Records & RichFish
リリース日 : 2022年2月24日
名前 : Kanye West
本名 : Kanye West / Kanye Omari West
年齢 : Kanye West 44歳
出身地 : Kanye West イリノイ州シカゴ
Stem Playerとは
Stem Playerは、イギリスのテクノロジー企業Kano Computingがカニエと共同で開発したオーディオリミックスと編集デバイスで、タッチセンサー式の触覚スライダーを多数使用して楽曲を編集ができるようです。
ユーザーは自分自身のプロデューサーとなり、ボーカルのステム、ベース、ドラム、サンプルを使ってアルバムをリミックスすることができ、それぞれのステムはデバイス前面のスライダーに割り当てられているようです。
2021年8月25日に行われた「DONDA」のアルバムの試聴会の後、本機の発売に関する事前アナウンスはなく「DONDA STEM PLAYER」というプレネームのもとで先行販売されました。
同年10月に購入者への出荷が開始されたこのデバイスには「Life of the Party」を含む3つの独占新曲とアルバム「DONDA」の楽曲のリミックスが多数収録されており、その後11月に「DONDA」のデラックス・エディションに収録されています。
現在200ドルで販売されているこのデバイスは、主にワイヤレスでファイルをダウンロードできないこと、ストレージ容量が限られていること、ナビゲーションスクリーンが省略されていることなどで批判も集まっているようです。
Stem Playerのみでの配信
リリース前からApple Musicでライブ配信され大きな話題となった「Donda」ですが、InstagramではStem Playerでの配信に踏み切った理由を明かしています。
Donda 2は、俺自身のプラットフォームであるStem Playerでのみ利用可能だよ。
Apple、Amazon、SpotifyやYouTubeではないんだ。
今日、アーティストが手にするのは、業界が稼ぐお金のわずか12％なんだ。今こそ、この抑圧的なシステムから音楽を解放する時だ。
今こそ自分たちの手で音楽をコントロールし、構築する時だ。
今すぐstemplayer.comにアクセスし、注文してくれ。
「DONDA 2」はアップルから1億ドルの契約の話があったようですが、前作「DONDA」がカニエの許可なくリリースされ、不満を漏らしていた為、契約を蹴って自分の道を切り開いたように伺えます。
また、カニエはこの契約破棄を「初めてニューヨークに引っ越してきたときと同じだ」とも明かしています。
音楽界で成功するために初めてニューヨークに移住したときと同じような感覚を覚えている。
何が起こるか分からないが、動かなければならないことは分かっていた。
10枚のアルバムの後、10回の契約の下にあった。
アップルとの1億ドルの契約も断った。
誰も俺を見下すために金を払うことはできない。自分たちの芸術には自分たちで値段をつける。
企業(アップルなど)は音楽を実質的に無料にし、グッズやスニーカー、ツアーをしなければ食べていけないようにしたんだ。
ジェイ・ZはTidalを作ったが、フェイクメディアは彼を攻撃した。
俺のブラザーの言葉を借りれば
俺を捕まえに来い。
もう膝をついて生きるのは嫌だから、立って死んでもいいんだ。
神様、どうか俺を見守りください。
カニエは、自分にとって新たな挑戦であることを自覚しているようですが、将来、若いアーティストが業界の第一人者として生きていけるような状況を作りたい為にこのような行動に出たようです。
DONDA 2
多くのメディアが2月22日発売と報じる中、この日マイアミでリスニングパーティーが開催されましたが、アルバムの発表はありませんでした。しかし、翌日にはStem Playerで4曲が公開され、24日ついに全曲が公開されました。
そこには全22曲が収録され、2018年に他界したXXXTENTACIONをはじめ、Travis Scott、Future、Migos、Don Toliverなどの若手・中堅の南部勢や、Jack Harlow、Baby Keemといった若手を起用しています。
中でも目立ったのは、シングル「Crank That」(2007)で全米No.1ヒットしたSoulja Boy(ソウルジャ・ボーイ)の起用。
2000年代後期までヒット曲を放ちチャートを賑わせていましたが、その後は鳴かず飛ばずで、インターネット上でいじられるだけの存在になりつつありました。
ソウルジャ・ボーイの記事はこちら。
また「DONDA」から続けての参加となったFivio Foreign(ファイヴィオ・フォーリン)とは、2月に発表したAlicia Keys(アリシア・キーズ)とのコラボシングル「City of Gods」も収録。ただし、アルバムに収録されたバージョンは、以前リリースされたものとは異なるそうです。
Fivio Foreign, Kanye West, Alicia Keys - City of Gods (2022)
終わりに
私生活では、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)との離婚について多くのメディアで報じられているカニエ。しかし、カニエは公私の区別がつかないようで、キム・カーダシアンの恋人であるコメディアンのPete Davidson(ピート・デヴィッドソン)とKid Cudi(キッド・カディ)が仲良くしているのが気に食わず、キッド・カディを今回のアルバムから外したとも言われています。
しかも、カニエは女優でモデルのJulia Fox(ジュリア・フォックス)と交際しており(現在は破局した模様)、キッド・カディは単に巻き添えを食ったようです。
DONDA2の発売によりStem Playerのデバイスは、24時間で200万ドル以上の売り上げを記録したと言われています。ただし、こうした試みは過去にも行われており、2016年のアルバム「Life of Pablo」は当初Tidalで独占配信されましたが、その後ストリーミングサービスでも配信が開始されています。
そのため、今後はStem Playerの売れ行きと共に状況が変わっていくかもしれません。しかし、今のところ「Donda 2」を楽しむには、Stem Playerしかないようです。
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