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「リスナーのことは一度も考えなかった・・・」あくまで利己的な本音を凝縮したニューアルバム!! Stormzy - This Is What I Mean (2022)

前回の記事でご紹介したロンドン出身のラッパーStormzy(ストームジー)

ここでは、彼がこの度ドロップした3枚目のアルバム「This Is What I Mean」(2022)について解説します。

レーベル  : 0207 Def Jam, Def Jam Recordings, Hashtag Merky Records Limited & Universal Music Group
リリース日 : 2022年11月25日
名前    : Stormzy
本名    :    Stormzy / Michael Ebenezer Kwadjo Omari Owuo Jr.
年齢    : 29歳


出身地   :    イギリス、ロンドン

リリースに至るまで

2022年3月、ストームジーは前作のアルバム「Heavy is the Head」のUKツアーの幕開けとなるカーディフでのライブで、サードアルバムのリリースをアナウンス。
それから半年後の10月、3年近くSNSを休止をしていた彼は、自身のSNSでカバーアートとトラックリストを明らかにしました。
(今作のリリース後、再びInstagramなどのSNSのアカウントが削除されています。)

同月、アルバムからのリードシングル「Hide & Seek」をリリース。

この曲のMVには、イギリスの女優Saffron Hockingを起用し、ナイジェリア出身のシンガーOxladeÄyannaTeniがバックコーラスを務め、Temsがソングライターでクレジットされています。
ナイジェリアのアーティストが際立つこの曲について、ストームジーは「俺のキャリアにおいて、ずっと自信を持って書こうと思い描いていた曲だと思う」
と話しています。

(この曲を)本当に誇りに思っている。
俺のキャリアにおいて、ずっと自信を持って書こうと思い描いていた曲だと思う。ラップと歌で、本当に暖かいものを作ることができた。
俺は暖かみのあるのが大好きで、ソウルやメロディーも大好きなんだ。
他の人がそういう曲を作っているのを聞くと、なんだかそれが目標みたいで、ちょっと嫉妬しちゃうね。
だから、自分で作ることができるようになったのは、ちょっと丸くなった感じだね。

STORMZY - HIDE & SEEK

11月10日にはセカンドシングル「Firebabe」をリリースし、バックコーラスにはJacob CollierSamphaDebbieと、イギリス出身のシンガーが参加しています。
その中でもストームジーは、まだキャリアが浅いDebbieを絶賛し、その才能はDef Jamも認めたほどのようです。

この曲は、Debbieという素晴らしいシンガーソングライターと一緒に始めたもので、彼女は本当に素晴らしいよ。
俺が最近出会った人の中で最も才能のある人かもしれない。
信じられないくらいね。
彼女はDef Jamとも契約したんだ。
彼女とスタジオに入り、ヤバいプロデューサーのGeorge Mooreがコードを弾き始め、メロディーをいじりながら、この物語を書き始めたんだ。
この曲は、パートナーに出会ったときの最初の輝きと、その気持ちについて歌っているのさ。
初めて人に会うときは、その人をよく観察する。パーティーやディナーでは、相手の動きや部屋の使い方を観察するんだ。
俺はいつも歌ったり、メロディーを使ったりしてきたけど、そのことを恥ずかしがっていた。
5年前、俺は勇気を出してメロディに足を踏み入れたけど、ここできちんと取り組まなければならなかったんだ。
StevieやFrank Ocean、Whitneyのような歌い方をしたいんだ。
Whitneyみたいには歌えないけど、自分のやり方で歌える。
自分の正直さと真実で歌えるんだ。
それは俺がずっとやりたかったことなんだ。

STORMZY - FIREBABE

アルバムについて語る

今作は全12曲が収録されており、ゲストアーティストはクレジットされていませんが、前述のJacob CollierDebbieなどバックコーラスに15人以上のアーティストが参加しています。

また、制作の過程では、ミュージックキャンプを行い、サッカーなどの音楽以外での活動を通じて、アーティスト同士の親交を深める良い機会になったようです。

ミュージックキャンプというと、いつも激しく、地味な印象があるよね。
「アルバムを作らなきゃ」「ヒット曲を作らなきゃ」と。
でも、このキャンプはとても自由な感じがしたよ。
俺たちは皆ミュージシャンだけど、いつも音楽をやっていたわけではないよ。
サッカーをする日もあれば、写真を撮りながら歩く日もあった。
その副産物として、とても美しい音楽が生まれたんだ。
なぜなら、その精神を世界一流のミュージシャン、世界最高のプロデューサー、ライター、アーティストを結びつけ、ひとつの空間に集まれば、誰も想像できないような何かが生まれるんだ。
何が生まれるか、計算すらできない。
そして、このアルバムの大部分はそうなったんだ。

そう話すストームジーのアルバムの1曲目の「Fire + Water」は、8分と長尺ですが、自分の真実を語りかけるように歌い、このアルバムのあるべき姿を示唆する曲となっています。

この曲は、俺たちがどのようにアルバムを作ったかを示す、最も真実味のある曲のひとつなんだ。
長い間、トラックリストの1曲目だったんだ。
アルバムのエグゼクティブプロデューサーであるPrgrshnも、俺のクリエイティブ・パートナーでもある従兄弟のJermaineも、みんなこの曲がイントロにふさわしいと思っていたよ。
でも、この曲は本当にメロディアスで、ソウルフルで、傷つきやすい曲で、イントロにふさわしいかどうかは分からなかったんだ。
これは元カノのことを歌った曲なんだけど、作った当時は彼女のことが心の中で一番な問題だったんだ。
マイクを触ろうとした瞬間に、これが出てきたね。
観客を最後に考えるということに通じるものがあるね。
以前は、アルバムを作るとき、ラッパーのように、最初の曲はラップをして、いかに自分がラップがうまいかをみんなに見せなければならないと考えていたんだ。
でもそれは、アートというより、エゴから来ている。
だから、この最初の曲はある程度、自分のエゴを殺すことについて歌っているよ。
自分の真実を語らせるということなんだ。

STORMZY - Fire + Water

2曲目の「This Is What I Mean」は、Wizkid「Essence」も手掛けたプロデューサーP2Jとの共同プロデュースで、冒頭は美しいピアノの音色ですが、途中からヒップホップのビートに移行し、クラブと相性ピッタリな曲となりました。

この曲からは多くのことを感じる。大好きな曲だ。
音が爆発するような感じ。
この曲ではいろいろなことが起きた。
Knox Brownという素晴らしいプロデューサーと、P2Jのこのコード進行から始まって。
この曲では、画家が様々なブラシや色を使うように、俺の好きなアーティストを全部使いたいというアイデアがあったんだ。
ただ詩を書くだけでなく、彼らの声を使って絵を描きたかったんだ。
それでP2JがJacob Collierの声をサンプリングして、それを不気味なものに変えて、それを元にして、曲とサンプルがどんどん壮大なものになっていったんだ。
それは最初の曲と同じように、時間とともに進化していくアイデアのひとつだった。
自分の魂や精神に響くような、気持ちのいいものを作ろうとしたんだ。
絵を描くのと同じで、キャンバスに赤を入れるのが正しいと思えばそうするし、青で覆い尽くしたいと思えばそうする。
この曲は、そのプロセスの証なんだ。

STORMZY - This Is What I Mean

おわりに

これまでの作品と比較すると、ハードなグライムのイメージを払拭し、R&Bやアフロビーツ調の楽曲が多く、ストームジーにとっては新境地への挑戦だったのかもしれません。
これらの楽曲が生まれた背景には、失恋を経験し、その内面を作品に描き出したことがあるようです。

1年前に元カノと別れて、その責任がまだ重くのしかかっていたんだ。
自分たちで作り上げた世界を壊滅させたことで、自分の手に血がついたような気がして、その感覚に耐えられなくなったんだ。
そしてある晩、海辺で俺は長いメッセージを書いたんだ。
罪滅ぼしではなく、説明責任を果たすためのメッセージだ。
その時点で贖罪を求めるのは大胆かつ利己的だったけど、本当の意味での癒しのプロセスの始まりのように感じられたんだ。
それは、たとえその時には知らなくても、俺を人間として、アーティストとして、再構築することになるプロセスだった。
このアルバムは「ファン」や「嫌いな人」「ヒップホップヘッズ」や「R&B好き」のために作られたものではないんだ。
誰のことも考えていない。
それを受け取るオーディエンスは、どんな形であれ、要求を満たす対象にはならなかった。
リスナーのことは一度も考えなかった。
率直に言って、今まで作ったものの中で最も利己的なものだ。
ピカソは、みんなが好むと思ったから特定の色合いの青を使ったのではなく、その青が彼の精神の中で湧き上がり、キャンバスにぶつからなければならなかったから使ったのだ。

こう、ピカソになぞらえて熱く語られたこのアルバムは、早くもUKアルバムチャートで1位となり、デビューアルバムから3作連続の首位獲得となりました。

彼の本音が凝縮された本作、ぜひ一度体験してみることをお勧めします。


今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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