亜蘭知子をサンプリング!!The Weeknd - Out of Time (2021)をきっかけに、日本の歌謡曲サンプリングについて振り返る
1990年代にはG-FUNKなどの名曲にファンク、ソウルが多く使われ、2000年代にはKanye West(カニエ・ウェスト)のプロデュースワークでChaka Khan(チャカ・カーン)などの大ネタが使われるなど、音楽業界ではサンプリングが制作手法の主流となりました。
2010年代に入ると、名曲を聴いて育ったアーティストが、90年代をネタに曲を発表したり、名曲のリメイクが時代を超えて作られ続けています。
先日リリースされたThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)のアルバム「Down FM」(2022)に収録されている「Out of Time」もそのひとつで、80年代に多くの作品を発表した日本の歌手、亜蘭知子さんをサンプリングしています。
そのため、日本のメディアからの注目度も高く、今後の音楽シーンの中でも重要な曲のひとつになる可能性があります。
ここでは、この曲の元ネタと、これまでにサンプリングされた日本の歌謡曲について解説します。
レーベル : Republic Records & XO Records
リリース日 : 2022年1月7日
名前 : The Weeknd
本名 : The Weeknd / Abel Makkonen Tesfaye
年齢 : The Weeknd 31歳
出身地 : The Weeknd カナダ、トロント
The Weeknd - Out of Time (2021)
亜蘭知子をサンプリング
この曲の元ネタになったのは、青森県出身のシンガー亜蘭知子の「Midnight Pretenders」(1983)です。彼女の3枚目のアルバム「浮遊空間」(1983)に収録されています。このアルバムは、B'z、ZARD、大黒摩季をデビューさせた長戸大幸が共同プロデュースしています。
亜蘭知子 - Midnight Pretenders (1983)
またYouTubeではマッシュアップも公開されており、コメント欄には世界の視聴者の反応が記されています。
Oh wow! When J Pop is inspired by Black music all along, and now The Weeknd sampled a J Pop classic! Music really connects the world.
すごいなー。Jポップがずっとブラックミュージックにインスパイアされているのに、今度はザ・ウィークエンドがJポップの名曲をサンプリングしているなんて! 音楽は本当に世界を繋ぐんですね。
日本の歌謡曲をサンプリング
ザ・ウィークエンドがサンプリングする数年前から、アメリカの音楽シーンでは日本の歌が注目されており、ラップスターと呼ばれるJ. Cole(J コール)もサンプリングしています。
彼のアルバム「2014 Forest Hills Drive」(2014)に収録された「January 28th」は、イントロからコーラスグループHi-Fi Set(ハイ・ファイ・セット)の「スカイレストラン」をサンプリングしています。この曲は "ユーミン "こと松任谷由実が作詞、夫の松任谷正隆が編曲を担当しています。
J. Cole - January 28th (2014)
ハイ・ファイ・セット - スカイレストラン (1975)
2019年、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)がアルバム「IGOR」の「GONE, GONE / THANK YOU」で山下達郎の「Fragile」(1998)をサンプリング。タイラー・ザ・クリエイターは本作でグラミー賞の「最優秀ラップアルバム賞」を初受賞しています。
Tyler, The Creator - GONE, GONE / THANK YOU (2019)
山下 達郎 – Fragile (1998)
さらに "ブルックリン・ドリル"の先駆者とされるラッパーのSheff Gの「We Getting Money」(2019)は、太田裕美の「赤いハイヒール」(1976)をサンプリング。ピッチを下げてループされるフレーズがドリル特有の怪しげな雰囲気をメイクした1曲となりました。
Sheff G - We Getting Money (2019)
太田裕美 – 赤いハイヒール (1976)
同じくニューヨーク出身のラッパー、Benny the Butcher(ベニー・ザ・ブッチャー)のEP「The Plugs I Met 2」(2021)に収録さた「Plug Talk」は、佐井好子のシングル「胎児の夢」(1977)をサンプリング。
Benny The Butcher & Harry Fraud feat. 2 Chainz – Plug Talk (2021)
佐井好子 - 胎児の夢 (1977)
次世代ネオソウルシンガー、Jenevieveの「Baby Powder」(2020)は、イントロから杏里の「Last Summer Whisper」(1982)を大胆にサンプリング。YouTubeでの再生回数も1500万回を超え、この曲で彼女のことを知った人も多いのではないでしょうか。
Jenevieve - Baby Powder (2020)
杏里 - Last Summer Whisper (1982)
Jenevieveの記事はこちら。
番外編
カリフォルニア州バークレー出身のラッパー、Lil B(リルB)のミックステープ「Evil Red Flame」(2010)に収録されている「Lone Warrior」は、日本の歌姫、浜崎あゆみの「Dearest」(2001)をサンプリングしたものです。疾走感のあるフックとトラップスタイルを組み合わせた斬新なビートは、日本のマニアからも注目されました。
Lil B - Lone Warrior (2010)
浜崎あゆみ - Dearest (2001)
終わりに
「Out of Time」は公開から3日でYouTubeの再生回数が200万回を突破し、本家「Midnight Pretenders」の動画ページではザ・ウィークエンドに関するコメントで盛り上がっています。
超メジャーアーティストによる歌謡曲サンプリングの一件は、今後の音楽シーンに大きな影響を与え、日本の音楽シーンの再評価に繋がりそうですね。
これからも日本の楽曲のサンプリングが増えそうで楽しくなりそうです。
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