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Killer Mike11年ぶりの新作「MICHAEL」で、彼の全てを目撃する!!

アトランタ生まれのラッパー、Killer Mike(キラー・マイク)は、2000年のアウト・キャストのアルバム「Stankonia」への参加で大きな注目を集めました。
それ以降、彼はソロとして5枚のアルバムを出すだけでなく、ブルックリンを活動の場とするラッパー兼プロデューサー、El-Pと組んでラップデュオのRun the Jewelsを結成し、その一員としても人々に広く認知されるようになりました。

そして今回、約11年ぶりのソロアルバム「MICHAEL」がリリースされました。この記事では、彼が新作アルバムに込めた熱い思いを掘り下げてご紹介します。

レーベル  : Loma Vista Recordings, Universal Music Group & VLNS LLC
リリース日 : 2023年6月16日
名前    : Killer Mike
本名    :    Michael Santiago Render
年齢    : 48歳


出身地   :    ジョージア州アトランタ

最新アルバムの制作秘話

キラー・マイクは、2012年にソロアルバム「R.A.P. Music」をリリースして以降、Run the Jewelsでのラッパーのキャリアを追求し、これまでに4枚のアルバムを発表しました。
Run the Jewelsのアルバムはすべて無料で提供されており、特に3枚目の「Run the Jewels 3」(2016)は、R&B/Hip Hopチャートで1位を獲得するなど、批評家からの高い評価を得ました。
そうした中、彼が今作をリリースするに至った理由について、次のように述べています。

俺はRun the Jewelsの片割れで、Run the JewelsはX-MENのような世界なんだ。
俺らの信頼できる仲間、Gangsta Booがいる。Zack de la Rochaがいる。
Josh Homme。Mavis Staplesもいる。
不気味なX-MENのように、Elと俺は必ずしも大きなラップシーンの枠にはまらなかった人たちだけど、俺たちは自分たちでこのワイルドでユニークなものを作り上げ、一緒にこの素晴らしいハイブリッドグループを形成したんだ。
でも、どんなキャラクターにもオリジンストーリーがある。
OutKastは俺の人生を変える機会を与えてくれた。一生感謝している。
でも、俺は彼らの付属品だったんだ。
みんながMichael(Killer Mikeの本名)のすべてを見る機会はなかったんだ。
みんなは音楽の中で断片的にしか俺を見ることができなかったんだ。

キラー・マイクアウト・キャストによって自身のキャリアが大きく飛躍したことに敬意を示す一方、自身が他の誰かに連なる存在として扱われ続けたとも語っています。こうした思いが彼の最新作のリリースを促しました。

新作アルバム「MICHAEL」は彼の本名に因んで名付けられ、アートワークには彼が9歳の時の写真が採用されています。彼はパンデミック中に自宅での時間を過ごす中で、自身を'マイケル'として広く紹介する機会がなかったことに気づいたと述べています。この新アルバムは、彼がそのような自己紹介を行い、そして彼が9歳だった時の経験を聴衆に伝えるチャンスを得たと彼は語っています。

このアルバムでは、俺はとても誠実だった。
俺は長い間、一線を歩んできた。
キャリアの初期は、どうすればMichaelでありながらCrunkな存在でいられるのかと考えていた。
そして、どうすればMichaelでありながらヒット曲を出すことができるのかということもね。
Run the Jewelsは、単に素晴らしいMCであり、チャートを追いかける必要がなく、俺に自由を与えてくれた。
俺たちは自分たちのサウンド、ブランドを築き上げた。
俺たちは最高のツアーバンドであり、最高のラップグループの1つなんだ。
ついに、Killer Mikeが認められたんだ。
そして、パンデミック中に家で座っているときに気付いた、俺はMichaelをみんなに紹介する機会がなかったことに。
今、俺にはそのアルバムカバーに描かれた光背と角を持つ9歳の少年の体験をみんなに見せるチャンスがある。
あのいたずらっ子で、神の言葉を知っている少年の経験をね。

アルバム参加メンバー

キラー・マイクの6枚目のアルバムには、シカゴ出身のプロデューサーであり、JAY-ZKanye WestDrakeなどのラップスターとの仕事で知られるNo I.D.がエグゼクティブプロデューサーとして参加しています。
No I.D.との関係について、キラー・マイクはスターウォーズの世界に例えて彼を自身の師匠として仰いでいることを明かしています。

俺のブラザーだよ。友達だね。
彼は俺の音楽のプロフェッサーXだ。
Dion(No I.D.の本名)は俺のルーク・スカイウォーカーにとってのヨーダだった。
彼は完璧な音楽の師匠だ。
彼は、自分自身のベストを引き出すために挑戦してくれる。
アルバムが出来上がった時、彼はこう言った。
「まだ深く掘り下げていない。俺はマイケルを知りたい。君はみんなにとってスーパーヒーローだ。どこが弱いのか?どこが傷つきやすいのか?人間らしいところはどこだ?」てね。
俺は「涙を流したこともあるよ。男であることがいかに難しいか」と。
彼はこう言ったよ。
「いや、いや、もっと深く掘り下げられる」とね。
俺は「本当に辛い話で唯一口にしないのは、母のことだけだよ。」と言ったよ。

今作は全14曲が収録されており、特筆すべき点は、アメリカ南部出身のアーティストであるAndré 3000Jagged EdgeCeeLo GreenFutureYoung ThugCurren$y2 Chainz6LACKFABOKaash Paigeなどが数多くゲスト参加しています。
さらに、西海岸出身のTy Dolla $ignBlxstMozzyも含めて総勢15組以上のゲストが参加しており、キラー・マイクNo I.D.の広範な交友関係を窺い知ることができます。

アルバムのハイライト

「DOWN BY LAW」

アルバムのオープニングトラックである「DOWN BY LAW」は、FutureMetro BoominDJ Khaledなどの作品を手掛けたDJ Moonがプロデュースしています。
この曲では、Curtis Mayfield「We the People Who Are Darker Than Blue」をサンプリングしたイントロが特徴であり、キラー・マイクのパワフルなラップと対照的なCeeLo Greenのソウルフルな歌声が絶妙に調和しています。
歌詞の中で、キラー・マイクは自身の経験と感情を率直に語り、社会問題についての深い洞察を提供しています。彼は自分自身の過去の行動について反省し、それがどのように彼自身と周囲の人々に影響を与えたかを語っています。また、彼は自分の信念と価値観を強く主張し、自分自身と他の人々がどのように成長し進化することができるかについての洞察を提供しています。

Killer Mike feat. CeeLo Green - DOWN BY LAW

Curtis Mayfield - We the People Who Are Darker Than Blue (1970)

「NRICH」

アルバムの4曲目である「NRICH」は、ベテランプロデューサーデュオCool & Dreが手掛けており、6LACKEryn Allen Kaneが参加しています。Eryn Allen Kaneはこのアルバムで3曲にも抜擢されており、共通の友人であるコメディアンのハンニバル・バレスが彼女にキラー・マイクの曲「Motherless」のフックを歌うことを提案したことから始まったと明らかになっています。
Eryn Allen Kaneは、ミシガン州デトロイト出身のシンガーであり、Chance the Rapperのミックステープ「Coloring Book」(2016)で客演として注目を浴びました。彼女は「NRICH」でその才能を発揮し、ソウルフルな歌声を披露しています。
この曲は、社会問題に対する鋭い洞察と、力強いメッセージを伝えるための美しい歌声が絶妙に組み合わさった、深みのある曲となっています。

 Killer Mike feat. 6LACK & Eryn Allen Kane - NRICH

「EXIT 9」

10曲目の「EXIT 9」には、西海岸出身のBlxstがゲスト参加し、美しいギターの音色と哀愁漂うビートが特徴です。Blxstの透明感のあるフックによって心地よいグルーヴが生まれ、キラー・マイクは成功や困難、成長と変化についてラップしています。彼は自身の経験を通じて進んできたことを語り、自身の信念や困難に立ち向かう姿勢を表現しています。以下は一部の和訳です。

I remember them days, makin' minimum wage
I was tryna maintain, look how far I done came
Pop champagne for the pain, I'm campaginin' for change
All the progress we made, bigger things on the way

最低賃金を稼ぐ日々を覚えている
俺は冷静になろうとしていた、俺がどれだけ進んだか見てくれ
痛みのためにシャンパンを開けよう、変化を求めて闘おう
俺たちは進歩した、もっと大きなことを成し遂げるんだ

Killer Mike ft. Blxst - Exit 9

「MOTHERLESS」

12曲目の「MOTHERLESS」では、キラー・マイクが亡くなった母と祖母への思いを歌ったナンバー。彼らの死とその後の喪失感、そしてそれが自身に与えた影響について率直に歌っています。さらに、彼らから受け継いだ教えや愛に対する尊重も歌われています。

祖母はラップにまったく興味がなかった。
でも母はラップが大好きだった。
祖母はこの世の何よりもイエスと教会を愛していたんだ。
母は神を信じていたけれど、神はどこかの木の中にいると信じていたし、人間の存在として自由を生きることにあると信じていた。
母は、俺ができるだけ良い学校に行けることを望んでいたけど、その学校は祖母の近所にあったんだ。
だから彼女たちの人生観はまったく違っていたけれど、俺が家族の絶対的な代表であってほしいという点ではとても似ていたよ。

またこの曲は、Traditional Folk「Sometimes I Feel Like a Motherless Child」をサンプリングしています。
ゲスト参加したEryn Allen Kaneは、この曲についてこう述べています。

幸運にも、私はこの曲を知っていたわ。
高校に通っていた時に歌ったことがあるの。
私はパフォーミングアーツスクールに通っていたので、色々なコンテストで黒人霊歌などを歌わなければなならなかったの。
だから、オリジナルは知っていたわ。
でも歌い始めると、少し緊張したわ。
彼は部屋に入ってきて私に説明してくれたの。
「これは俺の母についての曲で、俺は彼女の存在を感じたいんだ。君は共感できないかもしれないけど、身近な人を亡くした気持ちをチャネリングすることで、もしかしたら共感してもらえるかもしれない」ってね。

Killer Mike feat. Eryn Allen Kane - MOTHERLESS

Traditional Folk - Sometimes I Feel Like a Motherless Child (1899)

おわりに

キラー・マイクは2000年代初頭にメジャーデビューを果たしましたが、その後のキャリアではあまり注目されることはありませんでした。
しかし、Run the Jewelsとしての活動ではチャートを狙わないオリジナルなスタイルが高い評価を受け、今作では再びソロキャリアの追求に取り組んでいます。

彼は今回のアルバムについて、「このアルバムは白人にとって黒人の南部文化やヒップホップを体験するよい機会である。」と述べています。

もし君が白人であれば、このアルバムは黒人の南部の文化や音楽、ヒップホップに触れられる絶好の機会なんだ。
それは素晴らしいことだ。
俺の友人にケンタッキー出身の白人がいる。彼は農場で育った。
彼には黒人の友達が1人いた。
彼らは一緒にN.W.A.を聴いていた。彼は今、金持ちだ。
すごい車とか持ってる。一緒に密造酒を飲んでいる。
でも、ラップミュージックが俺らを結びつけたから、彼は俺らがどういう人間なのかを文化的によく理解してくれたんだ。
彼は、俺が今まで会った白人の中で最もクールで、最も適応力のある男だ。

多くのゲストアーティストが参加する中でも、キラー・マイクは彼の独特な音楽スタイルをしっかりと維持し、新たな魅力をラップ音楽にもたらしました。彼の曲は、個性的な視点とメッセージが詰め込まれ、彼の才能の深さと、ラップキャリアの素晴らしい発展を描いています。ぜひ、彼の音楽の世界に足を踏み入れ、その深みを自分自身で探求してみてください。

今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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