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「大企業とスタートアップの協業はうまくいかない」を打ち破る方法

先日の日経新聞で、私のコメントが一言紹介されていました。

といっても、これまでのようにCOMEMOでの投稿が取り上げられたのではなく、専門分野のIPOとM&Aについて日経新聞の記者の方から取材申し込みがあり、答えた内容の一部です。
せっかくなので、取材時にお答えした内容全体を記事にします。

大手企業がスタートアップを買収(関連会社化含む)する背景

大手企業が自社単独で成長し続けるのは困難というのは共通認識のようです。
それに伴い、過去数年はベンチャーとの業務提携や、オープンイノベーションプログラムの開催などに大手企業が躍起になっていました。
しかし、それは多くの場合「単なるママゴトに終わった(某大手企業オープンイノベーションプログラム責任者の言葉です)」そうで、その理由の一つが資本関係がなければお互い本気にならないということです。

そのため、出資する、買収するということが選択肢として上がってきます。
出資比率に正解はないですが、小さすぎてはお互い影響力がないし、100%買収する場合にも問題があります。

完全子会社化されると、多くの場合ロックアップ期間が過ぎれば売り手経営者は退任してしまいます。
これは経済的なアップサイドがないこと、自分で経営をコントロールできないことなどが理由です。
大手企業にはスタートアップを経営できる人材が中々おらず(そもそも世の中にほとんどいませんが)、結果的に上手くいかないです。

そこで、買収しつつも、売り手経営陣が持ち株比率を一定維持したままにすることで、アップサイドと経営のある程度のコントロール権を渡し買収後も中長期のコミットをしてもらいやすい仕組みを作れます。

スタートアップが大企業のグループ入りする背景

一つは、当然経済的なリターンです。
ただ、より重要なのは、スタートアップの「ビジネスモデル」と「目線の高さ」があります。

webだけで完結しないリアルと密接に絡んだビジネスなど、事業が複雑化することで単独で成功を目指すことが難しい領域にチャレンジしているスタートアップが増えています。
その場合、経営陣が短期的なリターンを欲していなかったとしても、大企業のグループ入りしながら大きな成長を目指すという選択肢が出てきます。

事実、開示情報によるとdelyの堀江社長はヤフーによる買収時に自身の株は1株も売却していません。
個人的なリターンを得ることが目的の一つならここで一部でも売却するはずです。
ここに目線の高さが現れています。

このように、大企業とスタートアップ双方のニーズに合致した戦略として、私が随分前から提唱している(がなかなか広がらない)二段階イグジット(M&Aにより株式等を一部売却し、その後も一定株式を持ったままIPOを目指すこと)が注目されてきていると考えます。
記事ではスイングバイIPOと紹介されてますが、これは二段階イグジットの形の一つで、特に大手による買収を指すと理解しています。

今後ソラコムなどがIPOすることでより認知が広まり、二段階イグジットを選択肢にいれる経営者は増えるはずです。
そしてこれが、「大企業とスタートアップの協業はうまくいかない」を打ち破る方法になると思います。

長くなってきたので記事を分けます。
後編では二段階イグジットの留意点などについて書きます。


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