タイトル正

シャウルマ グルジアジャンクフードの系譜【グルジア酔いどれ夜話/Siontak】

第十六夜

2015年4月に呼称をグルジアからジョージアへと変更した、南コーカサスの国。日本ではあまり馴染みのないこのジョージアへ、シルクロード旅行中にたどりついたSiontakさんのコラムです。ジョージアとはいったいどんな国で、どんな生活をしているのか!?

第2、4火曜日更新
<著者:Siontak>

ジャンクフードって不思議なもので、急ににとりつかれたように身体が欲っすることがある。健康に良くないし、大しておいしくないし、という認識とは裏腹に、たまに食べるハンバーガーはバカみたいにウマい。日本に帰った時、僕は必ず吉野家へ行ってジャンクな幸福をかみしめる。実のところはジャンクフードが大好きなのかもしれない。

ジャンクフードと呼ぶと聞こえは悪いが「伝統的なジャンクフード」というものは、そのままその土地その土地の「ソウルフード」と言えるような気がする。安く、手早く、お腹がふくれるウマいもの。つまり庶民の食い物であって、それは庶民の文化をかたちづくる。

江戸前文化の代表、握り鮨は腐ってしまいそうな魚をワサビや生姜、緑茶といった殺菌力を持つ食材でだましだまし食べていたとか、当時のファーストフードだったという話も見聞きする。「魚」に「旨い」と書いて「鮨」という表記も庶民的でわかりやすい。

握り鮨を江戸時代のジャンクフードだったと言い切るには勇気がいるけど、第二次大戦後の闇市は日本のジャンクフード史におけるルネッサンスだったのは間違いない。

米軍物資の流入で新時代のジャンクフードが続々生まれた。お好み焼き、たこ焼きなどの粉もんにとどまらず、うどんやラーメン、焼きそばなどの麺類も戦後のメリケン粉(小麦粉)の一般化でさらに普及したのだろう。

東京オリンピックで復興を世界に宣言し、その後マクドナルドが日本へ上陸する頃になると急速に欧米化していく庶民の味覚にあわせてジャンクフードの新定義は次の三点へ変化していく。

①肉 ②炭水化物(パン、米、麺) ③脂肪(チーズ) 

あえて付け加えるならば濃い目の味付けは大前提。ハンバーガー、アメリカ式ピザ、フライドチキン、フライドポテトなどを筆頭に西洋のジャンクフードが大挙し、そこにはもれなくコカコーラがついてきた。

その一方でかつてのジャンクフードであった鮨、天ぷら、蕎麦といったものは高級化を遂げていく。

新世代ジャンクフードが出現することで旧世代ジャンクフードは高級な伝統料理に格上げされていく仕組みがあるのかもしれない。

とまれ、ここでは「ジャンクフード」という言葉を肯定的な愛着を込めて使っている。

メキシコ発、アメリカでジャンクフード化したものにブリトーがある。僕は本場の味を知らないけれど、台湾に住んでいた頃アメリカ人のやってるカフェでよく食べていた。

ブリトーに似たジャンクフードがグルジアにもある。そしてこれこそがソ連崩壊後の新生グルジアの歴史を物語るジャンクフードであり、グルジアを代表するジャンクフードだと僕は考えている。

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