見出し画像

第4回 全体最適で考える

 前章ではSaaS導入の重要なポイントの2つ目である、「ノンカスタマイズで導入するための業務要件の整理」についてご紹介させていただきました。今回は「全体最適で考える」ということについて解説していきます。

社内に複数のMAツールが導入されていた

 SaaSパッケージはクラウドサービスになるので、選定さえ終わってしまえば、導入作業は比較的容易に進めることが出来ます。そのため、クライアントのシステムやツールの整理を行うと、BIツールが営業部、マーケティング部、経営企画室でそれぞれ独自で選定し導入していた、ということが発覚するケースがあります。見ているデータはほとんど同じなのに、複数部門で、それも別々のMAツールが導入されているのです。これだと余計なコストもかかりますし、それぞれの部門の担当者毎にツールベンダーと打ち合わせをするわけですから、効率的ではありません。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

そもそも、SaaSパッケージベンダーが縦割り

 SaaSパッケージベンダー自体が、セールス・カスタマーサクセス・サポート部門といったようにフェーズ毎に縦割りになっています。そのため、クライアントは導入を決める前の課題の洗い出しや要件の整理の段階でとりまとめを行ってくれるセールス担当者とは、契約が締結してしまうと、それ以降で話をすることはほとんどありません。なぜならば、導入後はカスタマーサクセスがクライアントの窓口になるからです。そうなると、当初相談していた現状の課題を把握しているのはセールス担当者だけで、契約が締結されると、カスタマーサクセスにバトンタッチされてしまうのです。導入後、当初想定していた以上の効果が出たとしても、その結果はカスタマーサクセスからクライアント担当者へ報告されるのみで、それをSaaSベンダーのセールス担当者が他部門へ提案したり、全社的な導入を推進することはありません。それはSaaSベンダーがクライアントの導入フェーズ毎に組織が縦割りになっているからです。そうして、結果として各部門にMAツールやBIツールは異なるものが導入されていくのです。

全体最適かつオープンに考える

 会社全体、部門横断でプロジェクトを推進したり、ツールを選定・導入していくのは、当たり前ですが、ベンダーではなく、クライアントの業務です。プロダクトの選定時に、他の部門でも必要としている人がいるか?SaaSベンダーからの機能紹介時に他の部門にも声がけを行い、情報共有すること、さらに導入後の検証結果についても自部門で閉ざすのではなく、他部門、もしくは全社共有を行うことが重要です。数値結果を全社に共有することで、同じ目的を持っていた他部門でも、同じツールを利用することも可能ですし、社内全体でITに関するナレッジも増えていきます。自部門だけが良ければいい、ということではなく自分たちのデジタルシフトに関する取り組みをオープンにしてくことが結果として自部門、または全社的なSaaSパッケージ導入の成功のカギになります。

画像1

 今回は「全体最適で考える」について、解説させていただきました。これで、SaaSパッケージの導入の成功にさらに近づいたと思います。
 次回は、今までの解説についてのまとめを行います。

(つづく)

★関連記事
第1回 カオスなSaaS業界 
第2回 システム部門を巻き込んだSaaSパッケージの選定
第3回 ノンカスタマイズで導入するための業務要件の整理

深沢 七菜(Nana Fukasawa)
2012年4月新卒として大手小売業グループのシステム会社に入社。入社から5年間以上、インフラエンジニアとして従事。基幹システムからWEB系のシステムまであらゆるシステムの基盤を構築、保守、運用を担当。システムのセキュリティ資格取得の推進も実施。インフラだけではなく、もっとフロントや上流の業務を経験したいと思い、2017年8月に(株)デジタルシフトウェーブに入社。

▼お問合せやセミナーのご依頼はこちらまでお気軽にご連絡ください。

▼デジタルシフト実践者から学ぶ「デジタルシフト塾」塾生募集中です。

デジタルシフト塾