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第5回 SaaSパッケージ導入のまとめ

カオスなSaaS業界

 皆さんがよく目にするタクシー広告の多くは、「経費精算の電子化」や「データ分析の可視化」といったSaaSのパッケージについての広告ではないでしょうか。「SaaS」とは「Software as a Service」の略で、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。ユーザー側にソフトウェアをインストールするのではなく、サービスベンダー側でソフトウェアを稼働させ、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアを利用出来ます。SaaS業界は国内市場でも堅調に成長を続け、特に業務領域だと、財務会計、人事給与、営業などのSaaS化が急激に進んでいるといわれ、まさにカオスなSaaS業界です。このカオスな世界の中で、どのようにして、パッケージの選定~導入を行っていけばいいのでしょうか。

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(出展:スマートキャンプ社「Horizon SaaS カオスマップ 2019年版」より)

①システム部門を巻き込んだパッケージの選定

 システム部門なしでSaaSパッケージの選定を実施してしまうと、導入時にトラブルが発生してしまうケースがあります。そのため、選定の段階から密にコミュニケーションをとり、システム部門から見た懸念事項や確認事項を洗い出してもらうことが重要です。SaaSパッケージ自体が既にベンダー側のインフラで稼働しているので、昔のようなオンプレミスのサーバ上で、アプリケーションをスクラッチで開発しているようなシステムではないため、実際にSaaSパッケージの導入時にはシステム部門で実施する作業はほとんどありません。システム部に丸投げするのではなく、システム部門を巻き込む。このスタンスこそがSaaSパッケージの導入における重要なポイント1つ目です。そして、システム部門への情報共有は出来るだけ早めに行うことが重要です。システム部門に早い段階で情報共有を行うことで、システム部門も積極的に協力してくれるようになり、お互いにWin-Winな関係になるのです。

②ノンカスタマイズで導入する

 SaaSパッケージはあらゆる企業が共通で利用しているクラウドサービスです。自社固有の要件を入れずに、既にある機能をそのまま使うことを強く推奨します。また現場部門の既存業務はあるべき姿で運用されているのではなく、過去の様々な経緯から、そうせざるを得なくなったものも存在します。
 そのため、最初から現場部門に不平不満を言われたくない、という理由で現状の業務を変えずにカスタマイズありきで導入する、というのは実は誰もWinにはならず、新しいシステムに合わせて業務も変えていき、さらにその中で現状の課題も解決していく、これがあるべき姿ではないでしょうか。

③全体最適を考える

 会社全体、部門横断でプロジェクトを推進したり、ツールを選定・導入していくのは、当たり前ですが、ベンダーではなく、クライアントの業務です。プロダクトの選定時に、他の部門でも必要としている人がいるか?SaaSベンダーからの機能紹介時に他の部門にも声がけを行い、情報共有すること、さらに導入後の検証結果についても自部門で閉ざすのではなく、他部門、もしくは全社共有を行うことが重要です。数値結果を全社に共有することで、同じ目的を持っていた他部門でも、同じツールを利用することも可能ですし、社内全体でITに関するナレッジも増えていきます。自部門だけが良ければいい、ということではなく自分たちのデジタルシフトに関する取り組みをオープンにしてくことが結果として自部門、または全社的なSaaSパッケージ導入の成功のカギになります。

まとめ

 先にあげた3つのポイントを押さえることで、SaaSパッケージの導入はより成功に近づきます。あとは、最後までやりきる強い意志を持って推進していくことが重要です。導入したら終わり、ではなく導入してからが本当のスタートになります。導入したパッケージをとことん使いこみ、また、SaaSベンダーのサポートも存分に活用しましょう。貴方が導入したツールをとことん使い込み、SaaSベンダーの担当者と二人三脚のような関係性を構築できれば、SaaSパッケージはただのツールではなく、貴方の会社のビジネスを大きく成長させるツールになり得るのです。

 最後に、本連載をお読み頂きましてありがとうございます。SaaSパッケージの導入にお困りの方、またはSaaSベンダーでクライアントへの提案にお悩みの方、まだまだ紹介したいことはたくさんあるので、その際はぜひお声がけいただければ幸いです。(終)

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第1回 カオスなSaaS業界
第2回 システム部門を巻き込んだSaaSパッケージの選定
第3回 ノンカスタマイズで導入するための業務要件の整理
第4回 全体最適で考える

深沢 七菜(Nana Fukasawa)
2012年4月新卒として大手小売業グループのシステム会社に入社。入社から5年間以上、インフラエンジニアとして従事。基幹システムからWEB系のシステムまであらゆるシステムの基盤を構築、保守、運用を担当。システムのセキュリティ資格取得の推進も実施。インフラだけではなく、もっとフロントや上流の業務を経験したいと思い、2017年8月に(株)デジタルシフトウェーブに入社。

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