見出し画像

【ITP/ATT/PCM】をざっくりまとめたけどほとんどPCMの話になったnote

最近広告業界を騒がしている
ITPとかの話をざっくりまとめてみた。

そんな記事です。

詳しい技術的な話には踏み込んでいなく
これまでの流れとか媒体の対応とかを中心に記載しています。

前半はやや退屈なITP年表で、
後半はPCM(Private Click Measurement)に焦点を当てて記載しています。

「ITPとかもう知ってるよ!」

という人は前半は飛ばしてもらって
後半のPCM部分だけでもご覧いただけると
何か参考になるかもしれません。

ITP/ATTなどの年表

◯2017年9月:ITP 1.0

・iPhone, iPad:iOS 11以上のSafari
・PC:macOS Safari 11以上

トラッカー判定された 3rd Party Cookieが24時間で削除

◯2018年9月:ITP 2.0

・iPhone, iPad:iOS 12以上のSafari
・PC:macOS Safari 12以上

トラッカー判定された 3rd Party Cookieは即時削除

◯2019年3月:ITP 2.1

・iPhone, iPad:iOS 12.2以上のSafari
・PC:macOS Safari 12.1以上

1st Party CookieもJavaScriptから発行されたものは7日間で削除

◯2019年4月:ITP 2.2

・iPhone, iPad:iOS 12.3以上のSafari
・PC:macOS Safari 12.1.1以上

『トラッカー判定されているドメインから、パラメータ(やフラグメント)付きで流入したページでCookie付与』を満たす場合、JavaScriptで発行された1st Party Cookieが24時間で削除

※ただし別ページに遷移した場合は、Cookieを付与し直すため、保存期間は7日に延長される

◯2019年9月:ITP 2.3

・iPhone, iPad:iOS 13以上のSafari
・PC:macOS Safari 13以上

以下条件すべてを満たす場合に、LocalStorageが即時削除
①トラッカー判定されているドメインから流入
②LPのURLにパラメータやフラグメントが付与されている
③サイト流入後に操作(クリック・タップなど)がない

※③の操作が行われた場合、LocalStorageの有効期限は7日に延長される。
ITP2.2の時の1st Party Cookieの延長条件とは異なる(こちらは別ページへの遷移)

2019年12月:Preventing Tracking Prevention Tracking(PTPT)

・iPhone, iPad:iOS 13.3以上のSafari
・PC:macOS Safari 13.0.4以上

以下条件を満たす場合、3rd Party Cookieの付与や読み取りが一切不可能になる

・サイト流入後のページで操作(クリック・タップなど)が過去にない

※これまでは「トラッカー判定された」などと記載していたと思いますが
これは「すべての 3rd Party Cookie」が対象になります。

2020年3月:Full Third-Party Cookie Blocking and More

・iPhone, iPad:iOS 13.4以上のSafari
・PC:macOS Safari 13.1以上

3rd Party Cookieの付与や読み取りが一切不可能になる(条件なし)

※1個前のPTPTと同様に、トラッカー判定されてるかどうかに関わらず、すべての3rd Party Cookieが対象

2020年9月:iOS14

・iPhone, iPad:iOS14以上のブラウザ機能を有するすべてのアプリ

Safari以外のブラウザでもITPが機能するようになる。
・ChromeやFirefoxなどの全ブラウザ
・FacebookやLINEなどのアプリ内ブラウザ
すべてがITPの対象になりました。

iOS14では他に、
バウンストラッキング(リダイレクトトラッキング)が不可になりました。
また、ATT(App Tracking Transparency)のベータ版提供もされてます(正式リリース&義務化はiOS14.5から)

2020年11月:Third-party CNAME Cloakingの規制

・iPhone, iPad:iOS 14.2以上のブラウザ機能を有するすべてのアプリ
・PC:macOS Safari

CNAMEレコードを用いた方法でも、Cookieの保存期間が7日間に制限される

2021年4月:iOS14.5

・iPhone, iPad:iOS 14.5以上

①ATTの正式リリース&義務化
②PCMの提供

ATTは「義務化」だが、PCMは「提供」であるということをまずは認識してください。

退屈な年表はここまでにして、
次からPCMの話をしていきたいと思います。

PCMって何よ

PCM(Private Click Mesurement)はWebKitで動く、Appleから提供されるレポート機能です。
(詳細は後ほど記載の公式サイトをご覧ください)

WebKitって何?というとレンダリングエンジンです。正確にはHTMLレンダリングエンジンと呼ばれます。簡単にいうと「WEBブラウザの脳みそ」にあたります。

HTMLやCSSを解析して画面に表示したり
色々役割をもつWEBブラウザの重要コンポーネントです。

このレンダリングエンジンは通常ブラウザごとに異なります。
例えばChromeやOperaなら『Blink』、Microsoft Edgeなら『EdgeHTML』、Firefoxなら『Gecko(一部Servo)』、Safariなら『WebKit』という具合です。

ただ、iOSで動かすためには独自ルールがあります。
iOSの制約で、『『iOSのレンダリングエンジンは常にWebKit(Apple開発)を使わなくてはいけません。Safari以外のブラウザもWebKitを使う必要があるということ』』です。

Safari以外のブラウザは、WebView機能を実装することで、ブラウザアプリとして存在しています。つまり、iOSではChromeもOperaもEdgeもFirefoxもレンダリングエンジンは「WebKit」になります。

これは、FacebookやLINEなどのアプリにおける、アプリ内WebViewにも同様のことがいえます。

「PCMはWebKitで動く」と書いたので、Safariだけの話か?と思った人もいるかもしれませんが、「iOS」ではすべてのブラウザ機能がWebKitで動くので、Safariだけの話ではないです。

なので、iOSすべてのWebViewで使えるように提供されています

もう一度書きますが
PCMは『義務化』とかではなく、『使っていいよ~と提供されている』ものです。(正確にいうと「使ってくれ〜」と推奨されているのですが)

Facebook広告などの影響が大きいので
なんかPCMって必須で導入しなくちゃいけなくて、ブラウザ全体(WEB広告とか全体)に影響するんじゃないの!?
と思うかもですが、一概にそういうわけではありません。

PCMの目的とは

PCMは、ドメイン横断でのコンバージョン計測に長らく利用されてきた、3rd Party Cookieに代わる計測手法になります。

3rd Party Cookieは即削除にしたから、代わりにPCMを提供しまっせ~

というわけ。

ちなみに、3rd Party Cookieは広告由来のみならず、すべてが即削除になっているため、PCMは広告に限らず使えるソリューションになっています。
(広告じゃなくても、ドメイン横断してサイト分析・解析したい場面ってあるよね)

で、このPCMを『WebKit』で提供したのでみんな使ってね~というのがAppleの方針というわけです。実際Safariではもう搭載されており、個人レベルで使えます。

これだけ聞くと「別のソリューション提供してくれて、Appleもいいとこあるやん?」と思いそうですが、、、そうでもないです。

このPCMとやらは『制限がめちゃくちゃあります』

詳細は後述しますが広告でいうと、
・ターゲティングが制限されたり
・コンバージョンイベントの数が制限されたり
・レポートがめっちゃ遅延したり
・ビュースルー計測に非対応だったり

とか。。。

う〜ん、使い勝手悪そうですね。。。

一旦ここまでまとめるとPCMとは

✔ 長らくドメイン横断のトラッキングに使われていた
  3rd Party Cookieに代わるものとして提供
✔ ただし制限が半端ないので、
 今まで同様の精度ではトラッキング不可
✔ レポート機能も退化する

というわけでトラッキング制限があったりレポート機能が使いにくいので、
広告媒体社としては「なるべくなら導入したくない」もの
なんですね。

Facebookのヘルプ読んだり、セミナー聞いたことある人だと
「でもFacebookはPCMが云々〜みたいな話もしてたけど・・・」
と思うでしょう。

そのことについてもおいおい話していきますが、まずは

『で、PCMって広告にどんな影響あるのよ?』

というところから出発してみましょう。

「WEB to WEB」と「APP to WEB」の話がありますので順番に話していきます。

(アプリインストールキャンペーンとかは、PCMではなくATT義務化の影響を受けて色々制限されています。各媒体やSDKベンダーが対応頑張ってます。が、ここではその話はしません。)

WEB to WEBの広告

まず、ブラウザで完結するパターン。
WEB上の広告をクリックして、コンバージョンもWEB上にある
ここのWEBというのは「ブラウザ」の機能を持っているということです。

大きな意味だと「Chrome」や「Firefox」なども
スマホの中のアプリの1つじゃん!となりますが、
ブラウザ機能を持っているため「WEB」といえます。

(逆に「Facebook」とか「Twitter」とか「LINE」とかは「WEB」ではなく「アプリ」扱いです。ただしアプリ内でリンクをクリックした場合はWebViewが開きます。
つまり『アプリからWEB』への遷移ですね。これは「APP to WEB」といって、「WEB to WEB」の話が終わったら見ていきます。)

WEB to WEBの広告」とは例えばGoogleの検索広告とか、
GDNのディスプレイ広告などをWEB上でクリック→コンバージョンもWEB上にある
、というパターンです。

このとき
「Google広告はPCMの影響を受けますか?」
というと受けないですし、PCMの機能を使う必要もないです。

なぜなら、先程も書いたようにPCMとは
ドメイン横断でのコンバージョン計測に長らく利用されてきた、3rd Party Cookieに代わる計測手法
なのですが、Google広告は計測に3rd Party Cookieを使ってないですからね。

既に1st Party Cookieでの計測手法を確立しています

だから3rd Party Cookieが使えなくても問題ないわけです。
問題ないのに、わざわざ制限ありまくりのPCMのお世話になることはないですよね。

Yahoo!も同様です。

※PCMの影響は受けないですが、普通にITPの影響は受けるので、1st Party Cookieでも通常24時間(MAX7日)しか保持されません。
これを回避するにはサーバーサイド発行のCookieを使う必要あります。

APP to WEBの広告

問題はこちら。
APP to WEBの広告です。

アプリ内の広告をクリックして、WEBに遷移しコンバージョンに至る
これも非常に多くあるパターンです。

例えば、Googleなら、
YouTubeアプリ⇒アプリ内広告⇒WebView⇒CVとか、
Gmailアプリ⇒アプリ内広告⇒WebView⇒CVとかです。

Facebookなら、
Facebookアプリ⇒アプリ内広告⇒WebView⇒CV
Instagramアプリ⇒アプリ内広告⇒WebView⇒CV
みたいな流れです。

これについては、媒体ごとに対応が異なる、というのが正解だと思います。

◯Googleの例
Googleは管理画面で自動タグ設定をオンにしている場合、
遷移先URLに「gclid=◯◯」というパラメータが付きますよね。
ここにいろんな情報を含んでいるわけです。

これはWEB to WEBのみならず
APP to WEBでも同様に以前までは「gclid」パラメータが付いていました。

ところが、ATT義務化の影響(PCMの影響じゃないよ)で
IDFAなどの情報が取れなくなりました。

今まで、YouTubeアプリ⇒広告クリック⇒WEB遷移、の場合でも
「gclid」は付いていてIDFA等の情報が使われていたのですが、
これはATTポリシーに反するので使えくなったわけです。

なので、Googleは「APP to WEBの広告」については
別のパラメータを使っています。

Google Analyticsをよく見ている人ならご存知かもしれませんが、
wbraid」というパラメータです。

先程の例でいうと、
YouTubeアプリ⇒広告クリック⇒WEB遷移では
gclidが使えなくなったので、新しくwbraidとういパラメータを使っているということ。

gtag.jsやGTMタグなどが導入済みであれば、wbraidから得た情報が1st Party Cookieにセットされます。

とはいえ、「wbraid」は当然ATTポリシーに準拠しているため、細かい情報までは取得出来ません。

細かい部分をどうしているかというと、Googleお得意のコンバージョンモデリング(推定コンバージョン)を使用しています。

推定コンバージョンというと、懐疑的な人もいるかと思いますが
Google以上に精度高くコンバージョンモデリング出来る企業はない、ということも事実だと思います。

Googleには膨大な量のデータと優秀な機械学習があります。
特にデータの量は半端ないです。(なんならAndroidというOSを持っているのですから、それだけで強い)

つまり、Googleは『APP to WEB』でも特にPCMとは関わってこないということですね。

参考:iOS 14 でのキャンペーン測定に関する更新情報

◯Facebookの例

じゃあFacebookは?という話。
FacebookもATTが絡んでくるのでそこからお話します。

そもそも、FacebookはATTの導入にも反対でした。
ですが、「拒否するとApple Storeから削除するわ」というAppleの強硬手段により仕方なく導入することになっています。

Googleの例でも少し記載しましたが
ATTはアプリ内だけの話ではなく、
アプリ⇒WEBを横断してトラキングすることも制限しています

Facebookでいうと、
FacebookやInstagram内の広告クリック⇒WEB遷移⇒コンバージョン
がトラッキングが難しくなるということ。
なのでアプリキャンペーンだけでなく、通常のウェブキャンペーンにもめちゃくちゃ影響が出るということです。

Googleは「新しいパラメータ」+「コンバージョンモデリング(推定コンバージョン)」で対応していましたが、Facebookはどうなのか。

もしかしたら、FacebookもGoogleのように新しいパラメータ開発や、推定コンバージョンで対応します!という方法もあったかもしれません。

実際、一部ではFacebookもコンバージョンの推定をしていますが、
iOSユーザーすべて(正確にはATTにオプトアウトしたユーザーすべて)のコンバージョンを推定値で対応するとなると、、、
やはりGoogle並のコンバージョンモデリングを実行するのは容易ではないですよね。

結局、FacebookはAppleの推奨する「PCM」機能を活用する形を取ります。

(『AppleはiOSという巨大OSを支配しているし、色々抜け道を探ってもまた規制されるだろう。ならここはAppleの推奨に従っておくか。。。』
というような思惑もあうかもです(ここは完全に筆者の妄想))

ここで、勘の良い人は気づいたかもしれません。
「あれ、でもFacebookはPCMをそのまま使わず、AEM(合算イベント)ってやつを使ってますよね?」

はい。次はその話をします。

FacebookのAEMって?

まず前置き。

さっきから

PCMは、ドメイン横断でのコンバージョン計測に長らく利用されてきた、3rd Party Cookieに代わる計測手法

と書いているので、PCMは「WEB to WEB」の話(WEBの中の話)なんでしょ?
と思われるかもしれませんが、実はPCM「APP to WEB」も存在
します。

「な~んだ!じゃあそれ使えば、ATTで『アプリからWEB』が制限されても、PCMで計測出来るじゃん」

アプリからWEB遷移はPCM『APP to WEB』でトラッキングして、以降のWEB上での遷移トラッキングはPCM『WEB to WEB』使えばええやん!(まあPCM使う時点でめちゃくちゃ制限はあるけど、とりあえず計測は出来るじゃん)」

と思いきや、ところがどっこい!

今のところ「APP to WEB」のPCMは
iOSアプリから『Safariブラウザ』への遷移
しか対応していません。

「は?」

これFacebook目線からしたら

①Apple「ATT入れろ~!入れないならApp Storeから削除する」
②Facebook「・・・ATT入れるよ」
③Apple「ATTは『APP→WEB』も制限するので、アプリキャンペーンだけじゃなくウェブキャンペーンにも影響でるよ」
④Facebook「分かった。Appleの推奨の『PCM(APP to WEB と WEB to WEB)』使うわ。めっちゃ制限あるけど苦渋の決断だわ。」
⑤Apple「でも、PCM『APP to WEB』はSafariしか対応してないんだわ~」

・・・

これにはさすがのFacebookさんも怒りますね。

つまり、Appleの用意したソリューションだけでは対応不可能だった、ということなんですね。

なので、Facebookは「PCM」の中でもマストで必要な部分は準拠しつつ、「APP⇒WEB」でも計測可能な「AEM」を開発した…せざるを得なかった。という話かと思われます。

PCM活用でマストで必要な部分って何よ?
という話は少々込み入っているので詳しくは公式サイトへ。
Introducing Private Click Measurement, PCM

※公式サイトは、PCMのWEB to WEBの話とか、APP to WEBの話とかも公式に記載あります。ちなみに、のちのち、Safari以外のブラウザでも『APP to WEB』対応予定のようです。「のちのち」じゃ遅いんだよ、という話ですが※

というわけで詳しくは公式サイト見て欲しいですが
めちゃくちゃ簡単にPCMマスト要件書くと

①ターゲティング等の細分化の粒度が256種類まで
②コンバージョン地点が16種類まで
③レポートされるタイミングはリアルタイムじゃない

①と②については
PCMを使う側が、『PCMに対応した計測エンドポイント』に送る情報を制御するということですが、
③は使う側ではアンコントローラブルなので、要件とはちょっと違うかもしれませんが。。。

あと、先にも記載しましたが、ビュースルー計測も不可です。

とにかく、Facebookは上記の要件は守りつつ、
「APP to WEB」「WEB to WEB」も計測出来るような手段として
『AEM(合算イベント)』を開発したということですね。

最初『合算イベント』と聞いたときは
「なんか面倒なのキター・・・」
と思ったことでしょう。

ただ、ここまでの背景を聞いた上だと
「あぁ、Facebookめっちゃ頑張った結果、なんとかAEM開発したんだな」
と少し優しくなれるかもしれません。

最後に

ITPからiOS14.5までの流れや
PCMについて記載してみました。

媒体の対応は現時点(2021年8月)での対応方法ですので
半年後や1年後には全く変わっているな~んてこともあり得ますので
その点はご了承ください。
※実際Facebookも推定コンバージョンのモデリングには力を入れているようです※

では今回は以上です。

Bye, Bye.


広告運用に関して詳しくお話を聞きたいという企業様がいらっしゃいましたら、こちらからお問い合わせをお願い致します。

私たちの会社で働く事に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ応募フォームよりご連絡ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?