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「ギャンブル好き」は実は「理論派」?広告の興味関心でターゲットにするユーザーと一般的なイメージの乖離について解説

ディスプレイ広告やSNS広告の運用をしていると、興味関心ターゲティングを利用する機会があります。「この商材は運動器具だから、フィットネスに興味関心がある人に訴求するのが良いだろうからその辺りをターゲティングしよう」といったように、字面やイメージでターゲティング設定をし、効果検証をする…といった流れになることがよくある印象です。

Yahoo!やFacebook広告には、興味関心ターゲティングとして「ギャンブル好き」に類するセグメントが用意されていますが、このセグメントにカテゴライズされるユーザーとは果たしてどのような人たちなのでしょうか。
前述のように言葉から感じるイメージでは、『パチスロ店や競馬場に出入りして、分の悪い賭けにもスリルを求めて後先を顧みず賭け事に興じる……』といったイメージが浮かんだ方々も多いかと思います。とある有名な漫画にも「狂気の沙汰ほど面白い…!」という台詞もありますね。
中にはそういう方も実際にいるとは思いますが、筆者の周りで「ギャンブル的な要素」を持つ遊びをしている方で、そういう傾向を持っていると感じる人はむしろ少ない印象です。

参考
JRA(日本中央競馬会)の2022年の売上は3兆2,539億707万6,200円だそうです。
この売上のうち「狂気の沙汰ほど面白い」と感じている人が支払った割合は分かりかねますが、大多数がそう、という訳でもないかも? もっと色々な人が参加しているかも? と考えるのは比較的自然に思えます。

というわけで、今回は改めて「ギャンブル好き」という層について考え、先行イメージと実際の興味関心ユーザーの性質に乖離があるのかどうか、乖離があるとしてどのような乖離があるのかを考えてみようと思います。

プロスペクト理論について

いきなりですが質問です。

▼ゲーム①
・コインを投げて、表が出たら10万円差し上げます。裏が出たら何も差し上げません。
・不参加の方には5万円差し上げます。

あなたはこのゲームに参加しますか?
反応は人によって異なると思いますが、傾向としては不参加を選ぶ人間が多いようです。
何もしなくても5万円も貰えるわけですからね。とてもおいしい。

では次の質問です。

▼ゲーム②
・コインを投げて、表が出たら10万円いただきます。裏が出たら何もいただきません。
・不参加の方には5万円いただきます。

あなたはこのゲームに参加しますか?
こちらの場合、傾向としてはゲームに参加する人間が多いようです。
「不参加で5万円むしり取られるなんて不条理なんだ!納得いかない!」という気持ち、理解できます。

つまり傾向をまとめると下記のようになります。

ゲーム①:ゲームに不参加(最大10万円のチャンスを捨てて、5万円の受取)
ゲーム②:ゲームに参加(確定5万円の支払いを捨てて、支払い0円に挑戦)

この「人は利益の最大化よりも損失を回避しようとする性質を持つ」ということを理論化して説明したものがプロスペクト理論です。

(解説)
ゲーム①では、不参加で確定で手に入る5万円が「既に自分に確定した利益」と感じるため、裏が出た場合を「損失」と感じ、それを回避する心理が働いています。
反対にゲーム②では、不参加だと確実に損失を被る状況となっているため、損失を避けるために、より大きな損失を被る可能性はあるものの、ゲームに参加する心理が働いているということになります。

社会にあるギャンブルは基本的に胴元となる団体が存在するため、ギャンブルに勝利する確率は原則、参加者の方が低くあります(参加者全員で考えた場合)。加えて、強制的に参加しなければならないようなものもないと言っていいため、「損失を回避するために参加するギャンブル」をしなければいけない場面はないといえます。
ここまでの話から考えると、ギャンブルに参加するような人は「損失を恐れない人」「合理的でない人」のような印象で、おおよそ先行イメージと近しいと考えられます。

期待値について

先ほどのゲーム①と基本は同じですが、やや現実に近付けるため若干スケールやバランスが異なる場合を考えてみます。

ゲーム③
・コインを投げて、表が出たら100万円差し上げます。裏が出たら何も差し上げません。
・参加費として10万円いただきます。
・ゲームには好きな回数だけ参加することが出来ます。

「ゲーム①の時は不参加派だったけれど、今回は参加したい」と考えた人がいるかと思います。

そのような方々がどのように考えているのか。おそらく次のように考えているでしょう。

「ゲーム参加時の期待値は+45万円で、不参加よりも儲かる可能性が高い」
「不参加以上の利益が確定した段階で、ゲームを止めればいい」

つまり「長期的に見たとき、その選択を取り続けていれば得である確率が高い」という計算の上で参加を決めていると考えられます(あくまでも「確率が高い」というだけで、「確実に得になる」というわけではありません)。

一口に「ギャンブル好き」と言っても、スリル面が好きな人もいればお金稼ぎが出来るという投資面が好きな人もいます。
ギャンブルのどういった面が好きかにもよりますが、「お金を稼ぐ」という投資的側面を好んでいる場合、この期待値という視点はとても重要です。なぜなら期待値が投資金額を上回っているギャンブルは、挑み続けることで長期的には利益が回収できる確率が高い、ということになるからです。

競馬等の公営ギャンブルは不確定要素も多々含まれるため、すべての要素を数値化し期待値を計算できるものではありませんが、期待値の高いと考えられる賭け方を考え参加/不参加を決める、つまり「勝算が高い勝負だけする」姿勢は、かなり理知的にも映ります。最初にイメージした「ギャンブル好き」とは少し違っているかもしれません。

他にも「利益を得られる可能性が高いと考えられる勝負には積極的に挑戦をするタイプ」と捉えることも出来るかもしれません。この捉え方だと「ギャンブル好き」は「バイタリティやアグレッシブ性が高い人材」とも言え、場合によっては会社の採用広告等で成果を挙げる可能性もあるでしょう。
字面だけを見たとき「『ギャンブル好き』を採用広告のターゲティングに加えましょう」というのはやや却下されがちな内容にも見受けられますが……提案の背景をきちんと説明できれば、検証する価値がある場合も存在するのではないかと筆者は思います。

まとめ

というわけで、今回は「ギャンブル好き」を例として考察を進めてみました。
ギャンブルに興じている人の中には「ロジカルな思考を前提とした、バイタリティやアグレッシブ性に秀でた人々も少なからず存在しているだろう」ということが分かりましたね。しかしながら「狂気の沙汰ほど面白い層」≒「スリルを求めて後先を顧みず賭け事に興じる層」が含まれることもまた事実らしいと言えそうです。
実際の運用で言うと、モニタリングでパフォーマンスを計測したりすることで、運用する商材にとって有効かそうでないか確認し、有効そうであれば前述のような仮説を立てて導入提案する、といった形が良いかもしれません。

今回お伝えしたかったのは、「ギャンブル好き」に限らず、あらゆる興味関心分野について「自分が持っている先行イメージ像」「実際に興味関心を持っているユーザー像」に乖離が起きている可能性があります。
自身が興味関心の薄いジャンルやカテゴリに属するユーザー像を正確に捉えることが出来ているか、また興味が強い分野でも、自分を基準に全体像を捉えてしまっていないか、今一度見つめなおしてみてはどうでしょうか?

広告代理店で働くマーケターは、クライアントから依頼される色々な商材について最適なターゲティング・配信手法を検討し提案することになります。あまり詳しくないジャンルの商材を依頼されるケースもあるでしょう。
その時、自分の既に抱いているイメージだけで決めつけていないか、イメージに引き摺られて情報収集や仮説検証を怠っていないか。
情報をアップデートする良い機会となりえますので、ぜひ先入観に囚われず、仮説と検証を進めて良き広告運用ライフを送れればと思います!

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