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レジ袋有料化が無意味な理由

レジ袋有料化の理由

政府は、令和2年7月1日から全国で一律にプラスチック製の買物袋の有料化に踏み切った。
有料化の対象となるのは、購入した商品を持ち運ぶために用いる、「持ち手のついたプラスチック製買物袋」(以下、「レジ袋」と呼ぶ。)である。事業者はレジ袋1枚につき1円以上の価格を設け、この売り上げの使途については事業者の自由となる。

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出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html)


環境省HPからはレジ袋有料化の理由は、大きく分けて以下の2点と読み取ることができる。

①海洋プラスチックごみの削減
②プラスチックごみの排出量削減

これらに対し今回のレジ袋の削減政策がこれらにどのような貢献をするのか。

①海洋プラスチックごみの削減について

環境省によれば海岸へ漂着するプラスチックの漂着ごみのうちレジ袋が占める割合は重量比で、0.4%である。他のごみは、「漁網・ロープ」が41.8%「ブイ」が10.7%「飲料用ボトル」が7.3%などいずれもレジ袋の割合よりもかなり多い値となっている。これだけ大々的に予算を使い、さらに国民や事業者に多大な不便を押し付けて、レジ袋の削減政策を行っても、海洋プラスチックごみ全体から見ると、漂着ごみの削減効果は限定的であるといえる。それならばむしろ、漂着ごみの41.8%を占める「漁網・ロープ」の削減・回収などにさらに力を入れたほうが有効ではないだろうか(漁網の削減などについては水産庁がすでに行っているところではあるものの、さらなる施策を行うほうが有効ではないだろうか)。

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出典:環境省(https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf)


②プラスチックごみの排出量削減について

レジ袋削減はプラスチックごみの排出量削減になるだろうか。スーパーやコンビニでもらったレジ袋を多くの国民はゴミ袋として再利用していることと思う。レジ袋が無料でなくなった今、ゴミ袋として使うレジ袋が家庭で不足しているのか、ホームセンターなどでポリ袋(レジ袋)の販売コーナーが大きく拡充している光景が見受けられる。これは、ポリ袋(レジ袋)の販売需要が大きくなっていることを示している。どういうことか。つまり、国民は、ゴミ袋として再利用していたレジ袋が、無料でもらえなくなってしまったため、ゴミ袋として使うレジ袋をわざわざ買っているということになる。これでは、本当にレジ袋の削減になっているのか分からない。
多くの国民がレジ袋をゴミ袋として再利用してきたが、レジ袋をゴミとして燃やすと環境に悪いのだろうか。日本では、廃プラスチックの約85%をリサイクルできているとしている。しかし、このリサイクルのうち約7割は「サーマルリサイクル」と呼ばれるリサイクルである。この「サーマルリサイクル」とは何か。簡単に言えばプラスチックを細かくして、ごみ焼却場の燃料として燃やすのである。熱回収などとも呼ばれる。つまり、リサイクルのために集められた廃プラスチックの大半は他の製品に生まれ変わることなどなく、単に燃やされていることになる。その理由は、プラスチックは石油由来であるから、燃料として使うと効率がよく、優秀なためである。これは同じ石油由来のレジ袋も同様である。

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出典:プラスチック環境利用協会(https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf)

また、焼却場では800度以上の高温で燃やすため有害物質もほとんど出ない。こうした日本におけるリサイクル事情を鑑みて考えると、レジ袋は十分に「エコである」といえるだろう。


レジ袋有料化の弊害

レジ袋を有料化することにより、「レジ袋は必要ですか」と確認するオペレーションの増加、袋詰めスペースの確保問題や万引きの増加など各事業者において経済的負担となる弊害が挙げられている。さらに、昨今のコロナ禍の感染予防対策に鑑みて、各国がレジ袋の無料化に舵を切り替えている中で、日本だけが時代の流れに逆行し、レジ袋有料化を推し進めた。


日本政府に求めること

レジ袋の有料化は上に述べた通り、効果があるようには考えにくく、デメリットばかりが目立ってしまうように思われる

政策を打ち出す場合には、上述のような各事業者など現場における諸問題をあらかじめ予測し、社会・経済全体にとってどれだけの利益になるかを考えるべきであり、省庁横断的に執り行われなければならない。しかし、現状の各省庁の業務過多な体制の中では、社会全体を見通した政策は難しく、お手上げ状態であろうと推察されるため、国家公務員の定員数を含めた中央省庁の組織体制を見直すべきではないだろうか。

また、コロナ禍において日本だけが時代に逆行した施策をしたように、一度走り出したら止めることができない現状の体制に対して、政策の予算組みなどついて一度立ち止まったりと柔軟に対応する仕組みづくりをする必要があるのではないだろうか。


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