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Meshmixerだけで3Dコピーデンチャー(総義歯の咬合床と排列試適が不要に!)

3/3更新 Meshmixerの手順部分を編集しました。

こんにちは、3D歯科です。
皆さんは総義歯の治療は得意でしょうか。

おそらくは臨床経験が長いほど、総義歯も得意!という先生も多いでしょう。

しかし、臨床経験が浅いドクターにとっては、総義歯は難しく感じるものです。

どの印象が正しいのか?咬合平面は?咬合高径を維持するにはどのようにすれば?

旧義歯で満足していたのに、少数歯残存から総義歯になるときに作成が難しい・・・
下顎が吸着せず安定しない、咬合採得でいつもズレてしまう・・・

また、総義歯は得意だがこだわってしまい、チェアタイムがかかりすぎる、
排列が技工士さん任せで、完成後に慌てることがある・・・
このような先生も多いかも知れません。

このような悩み、コピーデンチャーで対応できます。

もちろん、複雑な技工は不要!3Dプリントで簡単にできます。


今回の内容は、以下のようになっています。

1、コピーデンチャーについて
2、コピーデンチャーでの臨床活用法
3、3Dコピーデンチャーの作成方法
4、チェアタイム3回で総義歯完成、アルジネートなし!

ひとつでもタメになると嬉しいです。
よろしくお願いします。


1、コピーデンチャーについて

コピーデンチャーを用いる総義歯臨床は昔から様々な先生に紹介されてきました。
コピーデンチャー専用の材料(その名もコピーデンチャー!)も市販されています。

簡単にコピーデンチャーについての紹介です。

主に総義歯の症例について、患者さんの使用する旧義歯を
そっくりそのまま複製したものを使い、総義歯治療の難所
印象採得、咬合採得、排列試適を簡単にしようというものです。

対象としては、旧義歯も総義歯で、しかも調子の良かった患者さんや、
少数歯残存のケースで抜歯とともに総義歯になる、
旧義歯がパーシャルデンチャーの患者さんなどです。

今回紹介するケースも、上顎左右中切歯を抜歯し、
総義歯へ移行する症例となります。

2、コピーデンチャーでの臨床活用法

患者さんの旧義歯をコピーできたら、次に行うことは
コピーデンチャーを改造して患者さんの主訴に対応することです。

具体的には・・・

上顎総義歯が落ちてくる→ポストダム部分のリベース

下顎総義歯がカタつく→舌側への延長や咬合再構成

義歯の痛みへの対応→義歯の削合、粘膜調整

咬合高径、審美面での問題→テックのように削合、レジン添加で調整

などです。



その後、コピーデンチャーにて、咬合、痛み、審美に
問題がなくなったのを患者さんと確認したら

コピーデンチャーに接着剤を塗り、印象採得を行います。

コピーデンチャーが各個トレー 兼 咬合床
となるわけです。

具体的には、シリコン印象材が使えるならGCアドヒーシブを
トレー内面とトレーの縁を超えて1センチくらいまで塗り

シリコン印象材を薄く内面と、咬合面上にのせて
いつも通り患者さんに噛ませて硬化させます。

シリコンは保険ではちょっと使えない・・・アルジネートで・・・
という先生は、GCテクニコールボンドを代わりに塗り、
ゆるめのアルジネートで同様に印象し、
最後にワックスバイトなどを印象を外す前に採得します。

アルジネートの場合はワックスバイトでしっかりマウントできるようにした上で
上下に分けてコピーデンチャーに石膏を注いでしまえば
技工作業で石膏をマウントできます。

ここでポイントです。

アルジネートは先生たちもよくご存知の通り、石膏硬化後すぐ外す必要があります。
つまり院内でマウントまで行う先生なら問題ないですが、
技工を外注する先生は、模型をコピーデンチャーから外してしまうと
技工士さんがマウントできなくなってしまうことに注意しないといけません。

そのため、アルジネートの代わりにソフトライナーを用いることができます。

ややゆるめのソフトライナーを印象材代わりにコピーデンチャーに注いで
患者さんに、機能運動をさせます。

その後硬化したらバイト材を使って咬合採得を行い、
印象を外したら唾液などを洗い流し、湿箱か袋に入れて離水を防止します。

そのまま石膏を注ぐところ以降は技工サイドへ任せると
コピーデンチャーのついた石膏模型をバイト材でマウントし
技工操作がスムースに行うことができます。


3、3Dコピーデンチャーの作成方法

さて、ここから先が本題です!

3D歯科 はこのコピーデンチャーの製作を簡単にし、
また印象精度を向上させる目的で使用しています。

使うものはフリーソフトのMeshmixerと
口腔内に入れる3Dプリント用レジン液、
そして何より、義歯をスキャンするスキャナーです。
(デスクトップでも、口腔内スキャナーでもOKです)

先程の説明では、コピーデンチャーを作成後にリベースやCRで調整すると書きましたが、
3D歯科 としては旧義歯を(非破壊編集で)調整してから
スキャンしコピーする方法をお勧めします。


3Dコピーデンチャーを作る準備から解説します。

まずは来院された患者さんの旧義歯を、
削合調整とソフトライナーで下準備します。

このケースでは上顎前歯抜歯当日に、少量のユニファストで人工歯をとめ、
吸着を得るために大きくソフトライナーでリベースしています。


患者さんが義歯に悩みを持って先生方のところへ来たとき、
応急的には、ソフトライナーで対応できることも多いのではないでしょうか。

総義歯が安定しない、少数歯残存でクラスプや歯が取れて安定しない、
粘膜にキズができて義歯を入れられない・・・

まずは痛みの部位をいつも通り削合したのちに、
ソフトライナーを床全体にリベースのように適応します。

そして、そのソフトライナーを機能印象として、
患者さんに数日使ってもらうか、その場で嚥下などの機能運動をさせます。

その場で行う場合・・・

上の総義歯;ぎゅーっとドクターが押し込んでから咬合させ、そのまま唇を閉じさせる

下の総義歯;タッピングさせ、開口させ浮き上がりそうならドクターが軽く開口状態で10秒押し込む。そのまま咬合させ唇を閉じさせる。

とにかくバイトが浮かないよう注意が必要であることは、リベースと同様です。

抜歯部分の周囲は全てソフトライナーで
義歯らしい形を頬粘膜を術者が動かして付与しています。

万が一、バイトが著しくズレて咬まない場合、上か下の旧義歯に
ワックスかシリコンバイト材を入れて安定させます。

そしてソフトライナー付きのこの義歯をスキャンして取り込みます。

ポイント!
この際の義歯のスキャンですが、口腔内スキャナーのモデルにより
エラーが出たりスキャナーが研磨面を認識しにくかったりと
なかなか難しい場合があります。
そこで、口腔内に入れても安全な「ポリグリップパウダー」を使用します。
軽く乾燥させたソフトライナー付き粘膜面と、
乾燥した研磨面に指に水をつけて、そこにポリグリップパウダーをまぶし
余剰部分は義歯を軽く叩いて振るい落とします。
そうすると圧倒的に早く、正確にスキャンできます。
ポリグリップパウダー法」と覚えてください!
スキャンパウダーやスプレーは旧義歯に使用は躊躇いますが、
もともと義歯安定剤なのですから安心です。吸着しやすくなった状態で義歯をお返しできるわけです。
もちろん、ファストンでもいいのですが・・・

これです!ペーストではないです。
このくらい振りかけてから、余剰をはたき落とします。
今回は水をつけて・・・はほとんどやっていませんが、
上顎研磨面は少量の水で模様を描いてからパウダーをかけると
その部位が浮き出てスキャンの指標になり、スキャンエラーが減ります。
コピーデンチャーも同様に膨らみがつきますが全く問題になりません。

これでチェアサイドで行う操作は終了です!
あとは患者さんにすぐに旧義歯をお返しします。
もちろんソフトライナー付きで返して構いません。


さて、時間が取れるときにMeshmixerでの編集に移ります。


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無料公開はこちらまでとなります。

必要な操作は 3D歯科 のブログに文章で記載しています。
もし操作に不安のある先生は、解説画像付きの有料noteを
ぜひご覧いただければと思います。
こちらには 3D歯科 のブログで紹介しきれなかった
細かいポイントを紹介しています。
もしよろしければ、noteも購読いただけると嬉しいです。

また、今回解説に使用する上顎義歯のSTLデータも
この先でダウンロードできるようにしています。

(患者さんにはこちらでの掲載の許可を取りましたが、
 研究用途のみで使用し、再配布や共有、アップロードは
 絶対にやめてください。協力いただける方のみダウンロードください)

<2022年3月6日、今週日曜日 まで無料公開中です!>
2022年3月末まで1000円にて公開いたします。

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