「パルスマーケティング」についての考察−4
”未知のブランドの購入に躊躇しないのはコモディティ化しているから。であれば,ブランドはそこから早急に抜け出す必要がある。”
考察3において,二つの疑問を提示した。
それは
・「なぜ,今の時代、多くの人は未知の商品を買うことに躊躇しないのか」
という視点と,
・「なぜ,消費行動が暇つぶしのような情報検索をするからスタートするのか」
の二つであった。
前者の「なぜ,今の時代、多くの人は未知の商品を買うことに躊躇しないのか」という疑問については,実はすべての商品カテゴリニーにその傾向があるのではなく,商品のカテゴリーによって傾向は異なっていると考察することができた。つまり,一概に「今の時代、多くの人は未知の商品を買うことに躊躇しない」とは言えないのである。
では,どのようなカテゴリーは未知の商品に対して躊躇し,どの様な商品に対しては躊躇しないのであろうか。それを考察するため問1についての数値を並べてみよう。
洋服(48.0)
生活家電(36.8)
ソフトドリンク(35.6)
情報家電(35.3)
ヘアケア用品(34.9)
ビール類(29.2)
生鮮食品(27.9)
自家用車(-)
次に,私的な感覚であり多分にお遊び的ではあるが,ブランドや商品・品質による個体差認識を加味してポジショニングマップを作ってみると以下のマップを作ることができる。
縦軸には未知のブランドに躊躇をする・しないを取り上記の数値をそのまま当てはめてプロットした。横軸には商品やブランドの品質の個体差が大きい・小さいをとり,とってみても機能や品質の差はさほど大きくないと思われるものを左に,実際に手にとって確認をしないと品質の差が大きく出ると思われるものを右に置いた。洋服や生活家電などは,商品の品質的な際はあまり出てこないと考えられるだろう。およそ,国内で販売されている商品であれば,安かろう悪かろうといった商品は今時存在をしていないし,基本的機能としても性能としても,メーカーやブランドによって大きな差異はあまりない。一方で,生鮮食品については,産地や個体差,あるいは生産過程や流通販売過程などにおいて,個体の品質差が大きく出てくる。賞味期限などもその品質差に大きく関わってくるであろう。プロットする位置は正確とは言えないが,概ねこのような傾向が出てくることは想像できるであろう。
ここでは,左上の象限にあるカテゴリー群を「品質的コモディティ商品」と呼んでみたが,要は「機能や製造方法,色や素材等,どれを選択しても今どき壊れることはないし,失敗することは少ない」という様な商品群であるといえる。
コモディティ化については,恩蔵直人『コモディティ化市場のマーケティング論理』有斐閣(2007)に詳しいが,近年の市場においてはグローバル化や規制緩和,技術革新によって製品の差別化が困難になってきている。それをコモディティ化と呼ぶが,コモディディ化は企業の競争力を失わせ価格競争に陥りやすい。従って,企業はコモディティ化からどの様に抜け出し,強いブランドを作っていくのかが各企業の課題となっている。
つまりは,コモデティ商品であると消費者から認識されているのであれば,企業はその位置に安住をしていてはダメで,早急に抜け出す必要があるのだ。
若干横道にそれる様ではあるが,パルスマーケティングの考え方として示唆された消費行動の変化である「今の時代、多くの人は未知の商品を買うことに躊躇しない」をより深く考察してみると,実は
・未知の商品を買うことに躊躇しないとはいえず,カテゴリーによって異なる。
・未知の商品を買うことに躊躇しないのは,ある意味でコモデティ化しているカテゴリーである。
ということが,乱暴ではあるが読み取れた。
パルスマーケティングではマーケティングの視点について「買ってもらう気にさせる」点に着目をしていた。コモディティ化しているのであれば,買ってもらう気にさせるためには,おそらく価格競争を起こせば不要不急の状態でも買う気持ちにさせることができるであろう。しかし,買ってもらう気にさせるといった販売に特化する施策アイディアを考えていく方向性は,プロモーション競争や価格競争の激化を生みかねない。
知らないブランドを買うことに躊躇をしない理由が「コモディティ化」にあるのであれば,買う気にさせるためには「価格競争」が最も手早い。しかし,価格競争を仕掛けることは収益確保や企業価値の向上のためには好ましくないのである。
その場合,企業の行うべきマーケティング戦略の本質は,いかに消費者に価値を認めてもらい競合他社との価値的差別化をはかることによってコモディティ化から脱し,選ばれ続けるブランドとしてのポジショニングを確立すべき点に本来あるのではないだろうか。
(考察ー5に続く)
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