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豆満江国境(Tumen River border)が中国、ロシア、北朝鮮の関係を試す理由。

香港の英字新聞「SCMP(South China Morning Post/サウス・チャイナ・モーニング・ポスト/南华早报/南華早報)」のデジタル・エディターであるシア・ドリスコル(Shea Driscoll)は、2024年07月13日に、石江涛(Shi Jiangtao)の記事を紹介し、この水路を使って日本海に出るというのは中国にとって「夢」だが、近隣諸国は海上輸送に開放することで損失を被るのではないかと懸念していると報告した。

デジタル・エディターであるシア・ドリスコルの記事は、国際的に重要な記事を選んで紹介してくれるので、必ず読むようにしている。

中国は数十年にわたり、ロシアと北朝鮮に対し、豆満江(Tumen River)の一部を中国の貨物船に開放するよう説得しようとしてきた。この措置により、内陸の北東部、吉林省から海への直接アクセスが可能になる。
ロシアのプーチン大統領(Russian President Vladimir Putin)が最近北京と平壌を訪問した後の発言で、中国の期待は高まったかもしれないが、この問題は依然として三国関係の強さを試すものとなり得る。
ロシアと北朝鮮は北京との緊密な関係にもかかわらず、中国の船舶、特に海軍に重要な水路へのアクセスを許可することに依然として懸念を抱いており、一部のアナリストは、北京は西側諸国との関係をさらに損なうことを恐れて、両国に近づきすぎることに警戒している可能性があるとみている。

プーチン大統領が2024年05月に北京で中国の習近平国家主席と会談した後に発表された共同声明で、両国は、豆満江下流から日本海(Sea of Japan)、つまり東海(East Sea)への中国船の航行を許可することについて北朝鮮と「建設的な対話」を行うことで合意した。

日経アジア(Nikkei Asia)は先月、匿名の情報源を引用して、3カ国は「近々」この件について協議する予定だと報じた。

この川は北朝鮮と両隣国との国境の一部を形成しているが、ロシア国境沿いの17km(10.5マイル)の区間は、両国を結ぶソ連時代の鉄道橋があるため、貨物船の航行がほぼ不可能となっている。

プーチン大統領の最近の北朝鮮訪問中に、両国は新たな国境道路橋を建設する協定に署名した。一部の観測筋は、この動きにより古い橋が取り壊され、航路が船舶にとってよりアクセスしやすくなると考えている。

しかし、北朝鮮とモスクワが中国の船舶、特に軍艦にこの航路を開放したいと望むかどうか疑問視する声もある。

上海社会科学院のロシア・中央アジア研究の専門家李立凡(Li Lifan, an specialist in Russian and Central Asian studies at the Shanghai Academy of Social Sciences)は、数年にわたる協議を経て、中国が同川を開放することは「戦略的勝利であり、夢の実現」となると述べた。

「中国は豆満江の海上出口を通じて日本やヨーロッパへの貨物輸送を短縮し、コストを削減できる。

「ロシアは見返りとして、中国の支援を受けて極東地域を完全に開発することができ、中国の投資が流入して地域経済の成長を刺激するだろう」と李立凡は述べ、ロシアが西側諸国の制裁の影響に対抗するのに役立つだろうと付け加えた。
ロシアと北朝鮮は歴史的に、この地域で中国が影響力を強めることを嫌がってきた。

この地域では、19世紀にロシア帝国が中国の弱みにつけ込んで現在のウラジオストク港を確保した際に、中国がロシアに領土を譲ることを余儀なくされたという歴史的恨みがくすぶっている。

李立凡は、プーチン大統領が中国と協力して豆満江と海を結ぶ橋を開発することに同意したことで考えを変えたようだと述べ、北京が新しい橋の費用を負担するのであれば「平壌とモスクワがそのような申し出を拒否する理由が分からない」と述べた。

「新しい橋が建設されるとき、古い橋が取り壊される可能性はかなり高く、中国の観点からは望ましい。そうすれば大型貨物船の航行の障害がなくなる」と李立凡は付け加えた。

東京の国際基督教大学のスティーブン・ナギー教授(Stephen Nagy, a professor at International Christian University in Tokyo,)は、「豆満江を海運に開放することで、中国は輸出ルートの多様性、日本海への勢力投射能力、そして海運、資源、競争にとって重要とされる北極圏への潜在的なアクセスを獲得することになる。」と述べた。
しかし、ナギー教授によると、モスクワと平壌の両国は「自国の海域を中国海軍の艦艇が航行することを不快に感じるかもしれない。」という。

日本は、さらに不安をかき立てられることになる。

豆満江国境の鉄道鉄橋(Tumen River border railway bridge)
41°09'18.4"N 126°16'22.9"E
または、
41.155122, 126.273028

https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3270345/why-tumen-river-border-could-test-relations-between-china-russia-and-north-korea

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