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木と紙の文化。日本人が世界初の木製衛星を作った。

Nature Briefingのティム・ホーニャック(Tim Hornyak)は2024年06月07日に、世界初の木製衛星は、より環境に優しい宇宙探査の時代の到来を告げるかもしれない。と報告した
日本の衛星は宇宙での木材の耐久性をテストする。

将来は木製の月面シェルターも計画されている。

ただし、宇宙空間で、障子の窓はできないだろう。

研究者らは先月、宇宙で木材をさらに活用する道を切り開くと謳う世界初の木製衛星を発表した。この素材は従来の衛星で使用されている金属よりも持続可能で、汚染も少ないと研究者らは述べている。

日本の京都大学と東京に拠点を置く伐採会社住友林業の研究者らは、2024年05月下旬に「リグノサット(LignoSat)」と呼ばれるこの衛星を披露した。長さ約10センチの立方体は、モクレン材のパネルで作られ、アルミ製のフレーム、太陽電池パネル、回路基板、センサーを備えている。パネルには、接着剤や金具に頼らない日本の木工技術が取り入れられている。

木材は可燃性であるため、宇宙での使用には直感に反するように思えるかもしれないが、その特徴は望ましい場合もある。宇宙船や宇宙ステーションを脅かす宇宙ゴミの問題が深刻化するのを抑えるため、ロケットの段階と衛星は意図的に地球の大気圏に突入して燃え尽きる。しかし、燃焼中にアルミニウムやその他の金属の粒子が放出される。今後さらに多くの宇宙船の打ち上げが計画されており、科学者たちはこの汚染が環境に及ぼす影響は未知だと警告している。

「リグノサット」が6か月から1年の使用期間を経て地球に再び落下すると、マグノリアは完全に燃え尽き、水蒸気と二酸化炭素だけが放出されると、研究チームの一員である京都大学の宇宙飛行士でエンジニアの土井隆雄は言う。
彼は木材のその他の利点を指摘する。木材は宇宙の過酷な環境でも耐久性があり、電波を遮らないため、アンテナを囲むのに適している。

また、木製部品を使用した宇宙船の前例もある。1962年に打ち上げられたNASAのレンジャー3月探査機には、月面に着陸する際にカプセルを保護するためのバルサ材のケースが付いていた。その探査機は故障し、月を逃して太陽の周りを回り始めた。

木材のパイオニア
「リグノサット」の設計、製造、打ち上げ、運用には約US$191,000 かかる。搭載されたセンサーは、木材の歪み、温度、地磁気力、宇宙放射線を評価し、無線信号を送受信します。衛星はJAXA(Japan Aerospace eXploration Agency/国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)に引き渡され、2024年09月にISS(International Space Station/МКС/Международная космическая станция/国際宇宙ステーション)に移送され、2024年11月に軌道に打ち上げられる予定だという。

2020年に、持続可能性の向上のために宇宙での木材の幅広い可能性についての憶測から始まったこのプロジェクトは、成長が遅い。

「最初の会話で、土井博士は月面に木造住宅を建てることを提案しました。」「木材林を育てるために、火星に木材でドームを建てる可能性についても話し合いました。」と、京都大学大学院農学研究科のバイオマテリアル設計研究室のチーム メンバーである村田浩二は言う。

火星や月への移住者は、他の開拓者と同様に、現地の材料、つまり火星の場合はレゴリス(表面の岩石質物質)、二酸化ケイ素、その他の鉱物を利用する必要がある。しかし、木材は一時的または恒久的なシェルターを作る上で役立つ可能性がある。村田は、JAXAと産業界のパートナーが、南極や月で使用できる木材を一部使用したシェルターを開発する計画を指摘する。

「木材の天然の放射線遮蔽特性は、宇宙居住施設の壁や外殻を設計して保護するために効果的に使用できる。」と、オーストラリアのメルボルンにあるスウィンバーン工科大学で工学材料を専門とするニサ・サリム(Nisa Salim, who specializes in engineered materials at Swinburne University of Technology in Melbourne, Australia)は語る。ニサ・サリムはこのプロジェクトには参加していない。「木材は効果的な断熱材で、温度を調節し、熱伝導を最小限に抑えて快適な室内環境を維持できます。木材は扱いやすく、再生可能で生分解性があり、宇宙探査の持続可能性の目標と一致しています。」 と言う。

ニサ・サリムは、木材の構造的完全性、安全性、耐久性は宇宙で確認する必要があると指摘した。

とくに気体の漏れなどは、生命を危険に晒す。

木材は、リグニンという有機ポリマーで結合したセルロースでできている。そのため、木材は複合材料として知られる材料のクラスの自然発生的なメンバーであると、このプロジェクトには関与していないカリフォルニア大学デービス校の材料エンジニア、スコット・J・マコーマック(Scott J McCormack, a materials engineer at the University of California)は言う。複合材料は航空宇宙産業でよく使用されるため、衛星での使用が検討されても不思議ではない。

「複合材料は強度対重量比が高いため、航空宇宙産業、そして衛星にも最適です。」とマコーマックは言う。しかし、月や火星の構造材料として木材がどの程度の性能を発揮するかについては疑問を抱いている。

「最初に思い浮かぶ懸念は、GCR(Galactic Cosmic Radiation/銀河宇宙放射線)と、それが時間の経過とともに木材の機械的特性を劣化させる可能性があることです。地球上の大気のおかげで、GCRはそれほど大きな問題ではありません。」

しかし村田によると、チームは火星でNASAの探査機キュリオシティが撮影したGCRと太陽から放出される高エネルギー粒子(太陽高エネルギー粒子)の測定結果、および地球上の木材に対するガンマ線の影響を研究したという。同氏は、火星の木材は数千年はもつ可能性があると考えている。「火星の放射線は、人間を含む生物にとって大きな問題です」と同氏は言う。「木材にとってはあまり問題にならないと思います」。

まさか、火星にログハウスを作ると言うわけにはいかないだろう。

doi: https://doi.org/10.1038/d41586-024-01456-z

転載および許可

https://www.nature.com/articles/d41586-024-01456-z

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