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微生物と空気で作るタンパク質と昆虫食。

食料自給率が低いシンガポールは、先端技術を取り入れた都市農業やAI(Artificial Intelligence/人工知能)を駆使したスマート農場など、食料安全保障の強化に向けて多様なアプローチを取っている。

アジア経済ニュースNNA ASIAは2022年11月02日に、鈴木あかねが、2030年までに食料自給率30%を目指すシンガポールのハイテク食品・農業関連の最近の動向をまとめたレポートを公開した。

シンガポール食品庁(Food Authority of Singapore)は2022年10月26日に、フィンランドのフードテック(Foodtech/先端食品技術)企業ソーラーフーズ(Soler Foods)が開発した代替タンパク質粉末「ソレイン(Solein)」を、EU(European Union/欧州連合)が1997年に提唱した、これまで人間によって食用として消費されていなかった食品や食品原料を指す概念「ノベルフード(Novel foods/新規食品/new food products)」として世界で初めて認証した。

この認証により、ソーラーフーズは、シンガポール国内でソレインを販売できるようになる。
ソーラーフーズは2024年にフィンランドで「ソレイン」の商用生産を開始する。

「ソレイン」は「微生物と空気」から作られるタンパク質の粉末で、全ての必須アミノ酸を含有する。単細胞生物に二酸化炭素(CO2)、水素、酸素、ほんの少しの栄養素を与えることで増殖させて生産するため、従来の畜産のように大量の食料やエネルギーを必要としない持続可能な生産手法という。

成分は65~70%がタンパク質、5~8%が脂質、10~15%が食物繊維、3~5%がミネラル。乾燥大豆や乾燥藻類に近い成分となる。

シンガポールはタンパク質の供給源として、植物や菌類由来の代替肉、細胞培養で作る鶏肉や魚介類の開発を積極的に支援してきた。最近では食用昆虫の活用も模索し始めた。

シンガポール食品庁は2022年10月16日、食用昆虫の輸入や国内での養殖の認可に関する基本方針を公表。
2022年10月28日には、シンガポール企業庁が昆虫産業の現況に関する報告書の中で、シンガポールを拠点とする昆虫関連企業15社による資金調達額が過去4年で約US$4,000万(約59億円)に達したと明らかにした。

人間の食用だけでなく飼料や肥料用の昆虫関連企業も含まれるが、同国の昆虫産業に成長潜在性があるため、今後のR&D(Research and Development研究開発)にシンガポールを活用してもらいたい意向も示した。

都市農業の分野ではシンガポール食品庁が2022年10月27日に、先端技術を取り入れた5事業に計S$(シンガポール・ドル)780万(約8億1,000万円)を助成すると発表した。屋内農業や水耕栽培農業向けに、病害虫対策技術や栄養価の向上、鮮度保存技術など先端技術の発展を支援する方針だという。

シンガポール食品庁は2022年10月27日に、UAE(United Arab Emiratesアラブ首長国連邦)の農業企業ピュアハーベスト・スマートファームズ(Pure Harvest Smart Farms)とも提携。

砂漠地帯でもトマトやフルーツを栽培し、年中収穫できるようにしたハイテク温室を、赤道直下で熱帯性気候のシンガポールでも導入する。

日本人が経営に関わるシンガポールのイセ・フーズ・ホールディングスは2022年11月25日に、シンガポール食品庁から鶏卵農場の建設認可について原則承認を得たと発表した。AIやIoT(Internet of Things/モノのインターネット)などの技術を導入したスマート農場(Smart farms)を2024年にも稼働し、シンガポールの鶏卵自給率を現在の30%未満から50%まで高められるよう後押しする。

シンガポール食品庁のシニアディレクター(科学技術部門担当)、ニン・フーントン(Ning Hoon Tong, Food Authority of Singapore)は27日に行われた農業食品関連の科学シンポジウムで、「(シンガポールにとって)食料安全保障は無視できない課題」と指摘した。研究機関、企業、食品生産者などの関係者同士で協力し、国内の食料システムを強化するための新しい技術や生産体制を作っていかなければならないとの考えを示した。

シンガポールには、ビル内にスマート漁場(smart fishing grounds)もできている。

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