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NASAの探査車キュリオシティ、火星でオパールを発見。

Forbes JAPANは2023年01月11日に、2012年から火星で活動しているNASAの探査車キュリオシティ(Curiosity)のデータを新たな手法で分析している研究チームがfracture halo(フラクチャーハロー)と呼ばれる明るい色の亀裂帯にオパール(Opal-Gemstone)が存在することを確認したと報告した。

地球上でオパールは、シリカ(Silica/二酸化ケイ素/silicon dioxide/組成式はSiO2/無水ケイ酸)が水によって変成され、形成される。

SiO2は、温度や圧力で結晶構造が変化する「相変態」を起こす特徴がある。
7631-86-9 (シリカ)
14808-60-7 (石英)
14464-46-1 (クリストバライト)
15468-32-3 (鱗珪石)
112926-00-8 (シリカゲル、沈降シリカ)
60676-86-0 (石英ガラス)

この研究では、地下の巨大な亀裂群が、地表よりも居住の可能性の高い環境を提供していた可能性が確認された。

NASAは2012年に、探査車キュリオシティを火星に送り込んでゲールクレーター(Gale Crater)を探査した。

ゲールクレーター(Gale Crater)の緯度、経度
5°26'24.00"S, 137°42'0.00"E

ゲールクレーターは大型の衝突盆地で中央に巨大な層状の山がある。
キュリオシティが火星表面を走査する中、研究者らは火星の一部に広がる亀裂を囲む明るい色の岩石を発見した。
亀裂は探査車の画像で地平線の彼方まで続くものもあった。
最近の研究によって、これらの広く網羅された亀裂群が、近代のゲールクレーターに最後かもしれない水が豊富な環境をもたらしていたことがわかった。
この地表近くの水が豊富な環境は、地表の状態がはるかに過酷であった時にも居住可能性の高い状態を提供していた可能性がある。

Journal of Geophysical Research: Planetsに掲載されたASU(Arizona State University/アリゾナ州立大学)NewSpace博士号取得者で、現在米国政府の研究物理学者であるトラビス・ゲイブリエル(Travis Gabriel, research physicist for the US Government)率いる最新の研究で、複数の機器のアーカイブデータが分析され、探査の初期における明るい色の岩石付近に特異な状態が見つかった。

On an Extensive Late Hydrologic Event in Gale Crater as Indicated by Water-Rich Fracture Halos
Travis S. J. Gabriel,
Craig Hardgrove,
Cherie N. Achilles,
Elizabeth B. Rampe,
William N. Rapin,
Suzanne Nowicki,
Sean Czarnecki,
Lucy Thompson,
Sergei Nikiforov,
Maxim Litvak,
Igor Mitrofanov,
Denis Lisov,
Jens Frydenvang,
Albert Yen,
Roger C. Wiens,
Allan Treiman,
Amy McAdam

Geophysical Research Letters
Volume127, Issue12
December 2022
e2020JE006600

First published: 19 December 2022

https://doi.org/10.1029/2020JE006600
2020JE006600-sup-0001-Supporting Information SI-S01.pdf24.6 MB

何年も前にキュリオシティは偶然、その輝く亀裂の真上を通過した。それはゲイブリエルとASUの大学院生や共著者のショーン・ツァーネキ(Sean Czarnecki)らが探査車研究チームに参加するはるか以前のことだった。

チームは古い画像群を見て、彼方まで伸びる巨大なフラクチャーハローを発見した。
機器データの分析に新たな手法を適用することで、研究チームは興味深い事実を発見した。
それらのハローは、ミッション期間のずっと後にまったく異なる岩石ユニットで見つかったものと見た目が似ているだけでなく、その組成も類似していた。ほとんどがシリカと水から構成されていた。

「アーカイブデータの新たな分析結果は、ミッションのずっと後期に観察されたすべてのフラクチャーハローと驚くほどの類似性を示しました。」とゲイブリエルはいう。「これらのフラクチャーネットワークが非常に大きく広がっており、そこがオパールで満たされているに違いないことは大きな驚きです。」

ドリル穿孔地点のバックスキンとグリーンホーンから採取したコアサンプルをミッション開始から何年も経ってから観察したところ、それらの明るい色の岩石は、研究チームがそれまで見てきたものと比べて非常に特異であることが確認された。

ゲイブリエルらはアーカイブデータの分析に加えて、これらの明るい岩石を再び研究する新たな機会を探し求めた。

明るい色のフラクチャーハローの穿孔地点、ルバンゴにキュリオシティが到着すると、ゲイブリエルは探査車の機器を使って詳細な測定を行い、そのオパールに富む組成を確認した。

火星の地表近くに伸びる岩盤を横断するオパールに富んだハロー(MALIN SPACE SCIENCE SYSTEMS/NASA/JPL-CALTECH)

このオパールの発見が重要なのは、シリカが水溶液になっている状態で形成された可能性があるからである。

砂糖や塩が水に溶けるのと同じプロセスである。
塩が多すぎたり、状態が変化すると、容器の底に固体が溜まり始める。地球では、湖や海の底でシリカが水溶液から析出し、温泉や間欠泉で作られる。イエローストーン国立公園で見られるものと似た状況である。

ゲールクレーターのオパールは火星の近代に形成されたと科学者は考えているため、火星表面近くの地下にある亀裂群は、表面の過酷な環境よりもずっと住みやすかったかもしれない。

「ゲールクレーターで見つかった広大な亀裂群を見ると、居住可能性が高いと考えられるこの表面近くの状態がゲールクレーターのその他多くの領域や、火星の別の領域にも広がっていると期待するのは理にかなっています。」「こうした環境は、ゲールクレーターの中で古代の湖が干上がってからはるか後に形成されたのかもしれません。」とゲイブリエルはいう。

火星でのオパール発見は、未来の宇宙飛行士にとっても有用であり、今後の探査ミッションがこの広大な水源を利用できる可能性があるという意味でも重要である。オパール自体は主に二酸化ケイ素と水という2つの要素から成り、水分の割合が重量比で3~21%、そこに鉄などの不純物がわずかに含まれている。

これは、細かく砕いて加熱すればオパールが水を放出することを意味している。以前の研究でゲイブリエルは他のキュリオシティ研究者らとともに、このプロセスを正確に再現してみせた。火星の他の場所にもオパールが存在することを示す衛星データによる有力な証拠と相まって、この物質が将来の火星探査における貴重な資源になる可能性はあると伝えている。

オーストラリアでは、アンモナイトなど、貝の化石などと共に、オパールが見つかっている。

https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2020JE006600


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