見出し画像

NASA、量子コンピュータでデータやり取りを本格化。

NASAのカリフォルニア州パサディナにあるJPL研究所(Jet Propulsion Laboratory in Pasadena, Calif.)が公開している「NASA's Jet Propulsion Laboratory Day in Review」は2023年03月02日に、NASAの量子検出器は、世界最高水準の性能を達成したと報告した。

JPL研究所とCaltech(カリフォルニア工科大学)が開発した新しい検出器は、数千マイル離れた場所にある量子コンピュータ(Quantum computers)が膨大な量の量子データをやり取りする方法を変えるかもしれと伝えている。

量子コンピュータは、従来のコンピュータの何百万倍も速く動作することが期待されている。しかし、量子コンピュータが長距離通信を行うには、専用の量子通信ネットワークが必要である。

そこで、NASAのジェット推進研究所(NASA’s Jet Propulsion Laboratory)とカリフォルニア工科大学の科学者が開発したのが、光の量子粒子の膨大な数の単一光子を信じられないほどの精度でカウントできる装置である。PEACOQ(Performance-Enhanced Array for Counting Optical Quanta)検出器は、ホースから噴射される水滴のように、光子が当たる時間を100兆分の1秒単位で正確に測定することができ、1秒間に15億個の光子を数えることができる。この速度を達成した検出器は他にはない。

この結果を説明する研究の主執筆者であるPEACOQプロジェクトチームのメンバーであるJPLの博士研究員ロアナ・クライチュウ(Ioana Craiciu)は、「長距離での量子情報の伝送は、今のところ非常に限られています。」「PEACOQのような、ナノ秒の数分の一の精度で単一光子を測定できる新しい検出器技術によって、量子情報をより高速に、より遠くへ送ることが可能になります。」と述べた。

従来のコンピュータは、モデムや通信ネットワークを通じてデータを伝送する際、情報を「ビット」と呼ばれる「1」と「0」の羅列に置き換えてコピーしている。このビットは、ケーブルや光ファイバーを通じて、また光や電波のパルスを利用して宇宙空間に伝送される。

受信すると、ビットは再び組み合わされ、送信されたデータが再現される。

量子コンピュータの通信方法は、それとは異なる。
量子コンピュータの場合は、電子や光子などの基本的な粒子に量子ビット(qubits)として情報をエンコード する。
この粒子は、破壊されない限りコピーや再送信ができない。さらに複雑なことに、光ファイバーで暗号化された光子を介して伝送される量子情報は、わずか数十マイルで劣化するため、将来のネットワークの規模は大きく制限される。

このような制限を越えて量子コンピュータが通信をするためには、地球を周回する衛星に搭載された「ノード」と呼ばれる宇宙空間専用の光量子ネットワークが必要になる。

このノードは、もつれた光子のペアを生成して、数百マイルから数千マイル離れた地上の2台の量子コンピュータ端末に送信し、データを中継する。

NASAのSCaN(Space Communications and Navigation/宇宙通信・航法)プログラムの資金援助を受けて、JPLのマイクロデバイス研究所が製作したPEACOQ検出器は、絶対零度の1度上、つまり華氏マイナス458度(摂氏マイナス272度)に極低温で保たれなければならい。ナノワイヤーを超伝導状態に保つことで、吸収した光子を電気パルスに変換し、量子データを伝送することができるのである。

検出器は単一光子に対して十分な感度を持つ必要もあるが、同時に多くの光子の衝突に耐えられるように設計されている。あるナノワイヤーに光子が当たると、一瞬、次の光子を検出できなくなる「デッドタイム(dead time」も発生するが、各超伝導ナノワイヤーはデッドタイムをできるだけ短くするよう設計されている。

さらに、「PEACOQ」は32本のナノワイヤーを備えており、1本のナノワイヤーが「デッドタイム」になっても、他のナノワイヤーがその間を補うことができるようになっている。

「近い将来、PEACOQは、より高速で、より長距離の量子通信を実証するための実験に使用されるでしょう。」「長期的には、量子データをどのように世界中に伝送するかという問題に対する答えを提供することができる。」とロアナ・クライチュウは述べている。

つまり、多くのところで量子コンピュータは開発されているが、それで通信をするには、今のところ、NASAが不可決ということである.

ディープスペーステスト(Deep Space Test)
宇宙と地上を結ぶ自由空間光通信を実現するためのNASAの幅広い取り組みの一環として、PEACOQはNASAのDSOC(Deep Space Optical Communications/深宇宙光通信)技術実証のために開発された検出器をベースにしている。DSOCは、今年後半にNASAのプシュケー(Psyche)ミッションとともに打ち上げられ、地球と深宇宙を結ぶ広帯域光通信が将来どのように機能するかを初めて実証する。

DSOCは量子情報を通信するわけではないが、南カリフォルニアにあるカリフォルニア工科大学のパロマー天文台にある地上端末では、DSOCトランシーバーからレーザーで届く単一光子が深宇宙を移動する際にカウントするために、同じように極めて高い感度が求められる。

JPLの超伝導検出器の研究を率いるマット・ショウ(Matt Shaw)は、「同じような技術に新しいカテゴリーの検出器が加わったという感じです」と言う。「その光子が量子情報で符号化されていようが、深宇宙のレーザー光源から単一光子を検出しようが、単一光子をカウントしていることに変わりはない。

Missions program within NASA’s Space Technology Mission Directorate and SCaN.
Space Station to Host ‘Self-Healing’ Quantum Communications Tech Demo
Deep Space Optical Communications (DSOC) Technology Demonstration
JPL’s Microdevices Laboratory
News Media Contact

https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-quantum-detector-achieves-world-leading-milestone?utm_source=iContact&utm_medium=email&utm_campaign=nasajpl&utm_content=daily20230302-1
https://www.nasa.gov/feature/ames/quantum-supremacy
https://opg.optica.org/optica/fulltext.cfm?uri=optica-10-2-183&id=525546
https://www.jpl.nasa.gov/news/space-station-to-host-self-healing-quantum-communications-tech-demo
https://www.nasa.gov/directorates/heo/scan/index.html
https://www.nasa.gov/directorates/space-operations-mission-directorate
https://microdevices.jpl.nasa.gov/
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/exploring-together-nasa-and-industry-embrace-laser-communications
https://microdevices.jpl.nasa.gov/news/superconducting-nanowire-single-photon-detectors-for-dsoc/
https://www.nasa.gov/mission_pages/tdm/dsoc/index.html
https://www.jpl.nasa.gov/missions/psyche
https://www.nasa.gov/mission_pages/tdm/main/index.html
http://www.nasa.gov/directorates/spacetech/home/index.htmlhttps://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-quantum-detector-achieves-world-leading-milestone?utm_source=iContact&utm_medium=email&utm_campaign=nasajpl&utm_content=daily20230302-1
https://www.nasa.gov/feature/ames/quantum-supremacy
https://opg.optica.org/optica/fulltext.cfm?uri=optica-10-2-183&id=525546
https://www.jpl.nasa.gov/news/space-station-to-host-self-healing-quantum-communications-tech-demo
https://www.nasa.gov/directorates/heo/scan/index.html
https://www.nasa.gov/directorates/space-operations-mission-directorate
https://microdevices.jpl.nasa.gov/
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/exploring-together-nasa-and-industry-embrace-laser-communications
https://microdevices.jpl.nasa.gov/news/superconducting-nanowire-single-photon-detectors-for-dsoc/
https://www.nasa.gov/mission_pages/tdm/dsoc/index.html
https://www.jpl.nasa.gov/missions/psyche
https://www.nasa.gov/mission_pages/tdm/main/index.html
http://www.nasa.gov/directorates/spacetech/home/index.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?