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第16回デジタル進化生物セミナー

第16回デジタル進化生物セミナーのお知らせです。
9月24日17:00-
小林知里博士(森林総研)
「植物細工虫たちの夕べ 〜揺籃づくり職人・オトシブミの行動二型と刈り込み剪定師・カタビロハムシの産卵行動をめぐる生物間相互作用〜」

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植物を加工して生活する昆虫たちの生活をお楽しみください。


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###要旨##############################

植食性昆虫、すなわち植物を幼虫の餌とする昆虫は陸上生態系で非常に多様化し繁栄している。その中には、植物を単なる「餌」としてではなく、「素材」として加工に用いる、もしくは植物の様々な状態を昆虫が加工という形で「操作」する、という行動を進化させた昆虫たちが数多く存在する。これらは数千万年の植物ー昆虫間の共進化を経て形成されたものであり、複雑で謎だらけ、実にワクワクする関係性が隠されている。
 今回は、その中からオトシブミ科とカタビロハムシについてご紹介したい。
 オトシブミ科は、汎世界的に分布し、植物の若い組織を切って産卵するという特徴がある。中でも、オトシブミ亜科は、1枚の葉を切って巧みに折りたたみ「揺籃」と呼ばれる複雑かつ洗練された形の葉巻を作ることで有名である。呼び名からも想像される通り、この葉巻は卵や幼虫の餌およびシェルターとして機能する。このような葉巻を小さな虫が作るだけでも驚愕だが、さらに、揺籃の形成方法に「吊り下げ型」と「切り落とし型」という二型があり、状況に応じて両者を作り分けるという種まで存在する。エゴツルクビオトシブミでの揺籃二型について、主に3年間にわたるフィールドワークでのデータをもとに、作り分けの実態やその適応的意義を、寄生蜂・捕食者・植物との関係性から解説する。
 続いての話題は、カタビロハムシである。本種は、産卵する茎につく全ての葉を切り落とすという特徴的な産卵行動を持つ。幼虫は茎内部の主に髄部を食べて成長するが、茎の中の卵や幼虫にとって、そこに葉がついている状態とついていない状態では、いったい何が違うのだろうか?野外操作実験の結果からは、葉のついたままの茎では、卵〜摂食前幼虫の段階で50%が死亡し、残りの50%も幼虫後期手前で全て死亡するということがわかり、カタビロハムシにとっては茎についた葉っぱは「致死効果」も持つことがわかった。その「致死」の実態に迫るため、茎と葉のRNAseqを行い、遺伝子発現での違いを明らかにした。茎への産卵に対する植物の反応が、葉がある場合とない場合でどのように違ってくるのか?という謎に、植物の誘導防御や傷口への応答システムを軸に、さまざまな推理で迫っていく過程をお届けしたい。

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