第14回デジタル進化生物セミナー
西尾治幾博士(滋賀大学 データサイエンス)
「植物自然集団におけるエピジェネティクス研究」
2021年6月25日金曜日15:00-(日本時間)
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--要旨-------------------------
発表者は、大学4回生での研究室配属以来、分子生物学(3年)→生態学(9年)→データサイエンス(3ヶ月)と異分野を渡り歩いてきた。というのも、発表者は分子生物学的手法による実験結果だけから生物学を議論することに違和感を覚え、実際に野外に生育する生物を対象とした研究の必要性を感じたからだ。発表者は、京都大学生態学研究センター・工藤研究室において、アブラナ科の多年草ハクサンハタザオの自然集団を対象として、遺伝子制御に密接に関わるヒストンタンパク質につく化学的修飾(ヒストン修飾)の時系列データを計4年分取得してきた。本発表では、この野外エピジェネティクス研究を中心に紹介する。
発表者は、ハクサンハタザオの自然集団を対象に、花成制御遺伝子FLCにおける活性型および抑制型ヒストン修飾の2年間の季節動態を解析した。非線形時系列解析、数理モデリングなどを用いて、植物がFLCの長期的な発現動態の制御を通して、開花期間を決める仕組みを明らかにした(参考文献1)。また、ゲノムワイドなヒストン修飾の季節動態・日内動態をChIP-seq法により解析し、変動環境下において頑健な遺伝子制御を実現する仕組みを全遺伝子レベルで明らかにした(参考文献2)。
また、遺伝子の進化的古さとトランスクリプトームの関係を調べたところ、冬には進化的に古い遺伝子が、夏には進化的に新しい遺伝子が優先的に発現していることを示す結果を得た。現在、複数植物種間でヒストン修飾の季節変化を比較することで、季節的な遺伝子制御の進化プロセスを明らかにすることを目指している。
参考文献
Nishio H*, Buzas DM, Nagano AJ, Iwayama K, Ushio M, Kudoh H*. Repressive chromatin modification underpins the long-term expression trend of a perennial flowering gene in nature. Nature Communications 11, 2065 (2020).
Nishio H*, Nagano AJ, Ito T, Suzuki Y, Kudoh H*. Seasonal plasticity and diel stability of H3K27me3 in natural fluctuating environments. Nature Plants 6, 1091–1097 (2020).
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