ホントの非国民
映画監督の山田洋次さんが、今の日本社会の危うさについて語っている。
営業している店を公表して、いじめる。みんなが互いに監視する。そんな国には絶対にしてはいけない。「非国民」という言い方で、優しい日本人はとれほど苦しめられたことか。
なるほど。「非国民」は、主に戦争中に使われた言葉だ。そういう意味では、今も戦時下に近い。一般市民による「自粛警察」たちの活動を、山田監督は憂いているのだろう。
私は、この「優しい日本人はどれほど苦しめられたことか」が、とても心に刺さった。そう、苦しめられるのは「真面目で」「ちゃんとした」「優しい人」が多いのだ。
いきすぎた自粛警察
私は、過度な自粛警察こそが非国民だと思う。休業要請をしているのに開店を続けるパチンコ店などは例外で、これらに対して自粛警察が活動するのは、まあ、やりかたが法を犯さなければ容認してもいい、と、個人的には思う。
自粛警察の被害にあっているのは、ルールを守って営業している店も多かった。これが、今、憂うべき「経済活動の低下」による「倒産・閉店」を加速させることは、ちょっと考えれば誰でもわかる。
なので、自粛警察がこうした人たちを追い込むことは、非国民にあたる行為だ。
ルールの下で、できる限り店を開けてもらって、人々もルールの下で、できる限り通う。それが今、そしてこれから、求められることだ。
個人的な正義感を振りかざすな
木村花さんの件もしかり。個人が抱くちょっとした嫌悪感を「個人的な正義感」に変換し、みんなが叩いてるから「大義」だと勘違いして「振りかざす」。しかも、ネット上で。匿名で。よってたかって。嫌悪感を抱いた対象が、視聴率をあげるための演出でつくられた「ニセモノ」だったとしても。
私も特定の個人を攻撃してはいないし、するつもりもない(総理大臣と検事長のことは皮肉ったが)。もししてたら、それこそ攻撃対象にしてほしい。
いきすぎた自粛警察や、インターネット上で個人を攻撃する人たちを、これからは「非国民」と名付け、それらがウィルス同様、撲滅されることを、強く願う。
「これを機会に、一気に」の順番
木村さんの件は、二度と起きてほしくない。でも、このままだときっとまた同じことが起きる。ようやく国も動き出した報道を見た。どこまで本気か。日本人の悪い癖で、2ヶ月たったら下火になってしまうのは、本当に嫌だ。
「この機を生かして」は、9月入学に向けて盛んに言われるが、こちらに対応する「法整備と刑事罰における厳罰化」のほうが、プライオリティが数百倍高い。人の命に直結することだから。
関わる政治家、官僚、法律家、インターネット業界の皆さんには、1日も早く対応策を策定して、成立させて、実行して欲しい。
簡単に助けを求められること
人任せばかりもよくないので、私なりに方法を考えた。
今朝の新聞に
「総務省が有識者会議を4月から立ち上げ、被害者が裁判なしでプロバイダーから任意で発信者情報を得やすくする方策などの検討を始めていた。
とある。まずは、これだと思う。裁判してお金がかかる/開示請求が通っても、加害者特定が数ヶ月〜1年を要するようでは、解決はおぼつかないし、抑止力にもならない。
この専用窓口こそ、国がきちんと整備して、税金で運営して、被害者の負担額をゼロにするよう制度設計してほしい。
さらに、法律家によって「被害認定要件」を明確にし、それを速やかに公表することを提案したい。例えば、
1)誹謗中傷/攻撃に該当する「単語」「フレーズ」の規定
2)それを受けた回数(一人から繰り返し、は重罪)
3)集団化したものも、一人一人の罪を重く
罪の軽重は、法律家に「法」の観点で定めていただくしかないが、ポイントは上記の3)の集団化。これは、集団で叩いていることが認められた場合、開示請求やIPアドレスの特定は、1回でもアクションした人物を「加害者」として行うもの。
加担した人間は「地獄の果てまで追いかける」という姿勢が抑止力には大切だ。
また、デジタル文字は、指先で簡単に描けるのに「凶器」になりやすい。「死ね」「殺すぞ」は、言葉で言われるより、デジ文字で見るほうが嫌な感じがする。
そして、こうした基準や法律は、SNSで広く周知・伝播し、時代の変化や運用に合わせて、常に変化/進化させていく。基準や条文は、常に変化する。
悪いヤツは、法に触れない方法を編み出す。だから、それにタイムリーに対処する。イタチごっこになるかもしれないが、放置せず、一つずつ潰していく。それこそ、そっち側の警察に名乗りをあげるネット民が増えてほしい。
木村さんのご家族にとって、大切な家族を失われた悲しみが消えることはないだろうし、その心情を推し量ることも他人には難しいが、「速やかな法整備」と「有効な対策の実現」が彼女にとって、一番の供養ではないかと、私は思う。
彼女のご冥福を、心からお祈りいたします。
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