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日本の健康づくり対策~栄養・食生活②~

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えていきます。

前回に引き続き、日本での国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」の具体的な内容に触れていきたいと思います。
健康日本21(第二次)の基本的な考え方は
「全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現」のために、
健康寿命を延ばすこと、健康格差を縮めることです。

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厚生労働省HP内、健康日本21(第二次)の普及啓発用資料より

今回は社会環境(社会)の改善について書いていきたいと思います。
実はこれまでの国民健康づくり運動では、食環境にかんする目標はあまり設定されていませんでした。
なぜかというと、これまでは国や行政主導で、健康になるためにはこうしましょう!と掛け声をかけ、皆がそれについていく、という図式でうまくいっていたからです。そこから時代は変わり、今は国や行政と国民がそれぞれの責任と役割分担を決めて、健康寿命の延伸に向けて力を合わせて頑張りましょう!という協力体制で進めています。

意思の力だけで食習慣を改善するのは難しい

食習慣の改善に向けてやることがわかりました!明日から主食と主菜、副菜のそろった食事をとろうと思います!
と前向きに取り組もうと思った人が多くいたとしても、住んでいる場所や長い時間を過ごす地域に食の選択肢が少ない状態だとうまくいかないことがあります。近くにスーパー等の生鮮食品を扱っているところがなかったり、高齢者で買い物に行くこと自体が大変だったり、もしくは勤務先の近くにコンビニや飲食店があって、つい簡単に食べられるものや好きなものを頼んでしまったりするなどが例として挙げられます。
そういった環境の中ではバランスの良い食事を準備することの難易度が高く、1日・2日は頑張れたとしても、長くは続けられなかったりします。ですから、食習慣の改善に興味を持ったときに、簡単で続けられそう。と思えることが、改善促進にも大切なのです。

令和元年の国民健康・栄養調査では食習慣の改善に関する調査の回答をみると、改善のハードルを下げることが必要とされているのがわかります。

図1 食習慣改善の意思(20歳以上、性・年齢階級別)

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総数で見ると、食生活の改善行動に積極的に取り組むのは半数以下です。
そして20歳~69歳における一番のボリュームゾーンはなんと、
食習慣の改善に「関心はあるが改善するつもりはない」です。約4人に1人います。
その層が食習慣の改善の妨げとなっている点も調査しています。

図2 健康な食生活の妨げとなる点(20歳以上、男女計、年齢階級別)

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表1 健康な食習慣の妨げとなる点(20歳以上、性・年齢階級別)

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ざっくり青年期から中高年期にかけては、「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がない」、「面倒くさい」が上位に挙がっています。高齢者になると、「特にない」が半数近くになります。

このことからも、食環境を整えていくことの大切さを感じてもらえたかと思います。

栄養・食生活分野の目標(社会環境)

健康日本21の栄養・食生活分野の目標の中で、社会環境の改善目標は大きく分けて2つあります。

①食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業及び飲食店の登録数の増加

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(参考)
スマート・ライフ・プロジェクト
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/
スマート・ライフ・プロジェクト(栄養・食生活)
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/disease/nutrition/

食品メーカーや飲食店等に働きかけて、もともと販売している商品の内容を変えたり、新商品のコンセプトに食塩や脂肪の低減、食物繊維たっぷり等を取り入れたメニューを販売してもらったりすることです。

②利用者に応じた食事の計画、調理及び栄養の評価、改善を実施している特定給食施設の割合の増加

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特定給食施設とは、
食べる人が特定されている施設の給食を継続的に作っていて、栄養管理が必要なところです。
1回100食以上、もしくは1日250食以上の食事を提供しているところとされています。
病院や高齢者施設、保育園、社員食堂などが該当します。

これらの施設で管理栄養士・栄養士がいて、栄養管理をしているところを増やしていくことで、利用し続けた人が自然と健康になっていく環境づくりをします。

社会環境改善で目指すところ

社会環境に含まれる栄養・食生活の改善で目指すところは、
(1)社会参加の機会の増加
(2)健康のための資源へのアクセスの改善と公平性の確保
が挙げられています。

東京都健康寿命医療センター研究所 研究部長 医学博士 北村 明彦氏の書著
「100年時代の健康法」の帯にも
「人間の平均余命が延びるとき、健康寿命を左右するのは 筋力、栄養、社会参加だった」
と、社会参加も健康寿命を伸ばすことに関わるとされています。

100年時代の健康法 サンマーク出版
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3768-5
※読みやすくて一般の人方にもおすすめの一冊です

また、健康のための資源へのアクセスの改善は冒頭で書いてある通りです。健康な食習慣づくりが簡単に誰でもどこでもできることを考えています。

なお社会環境の改善は国として目標を掲げていますが、実際の環境整備は都道府県、市町村単位で、地域の文化や課題の違いを踏まえて行われるので、住んでいるところが具体的にどんな目標・取り組みが行われているのかは都道府県、市町村のホームページ等で確認してみてください。

国立健康・栄養研究所 都道府県健康増進計画
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/zoushinkeikaku/
ここに都道府県別の計画内容や、自治体の取組事例が簡単に見られます。

栄養・食生活の目標設定の考え方

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これだけだとなんだかわかったような、わからないような、という感じになってしまうので、次回は企業や地域共通の取組等を紹介していきたいと思います。

以上、参考になれば嬉しいです。

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今回の内容をより詳しく知りたい方は、以下をご確認くださいませ。

厚生労働省HP内、健康日本21(第二次)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html

令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

スマート・ライフ・プロジェクト(栄養・食生活)
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/disease/nutrition/

100年時代の健康法 北村 明彦著 サンマーク出版
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3768-5

国立健康・栄養研究所 健康日本21(第二次)分析評価事業
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/zoushinkeikaku/


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