見出し画像

【連載小説】新説 桃太郎物語〜第十九章  (毎週月曜日更新)

【第十九章 “決着”の巻】

桃太郎は薄れゆく意識の中で、赤鬼の変化に気が付きました。

そして、先ほどから桃太郎に焦点が合っておらず、なにやら肩越しの奥の方に気を取られていることに気がつきます。

桃太郎はここは好機と見て、自分の喉元の赤鬼の手を両手でしっかりと押さえました。そして、一気に反動をつけると、背中側から大きく一回転しました。

手を押さえられた赤鬼は思わず桃太郎の喉元から手を離してしまいました。そして勢いそのまま、赤鬼の頭上に回った桃太郎は、勢い勇んで叫びました。

『…赤鬼っ!!これで本当に最後だぁーーーーっ?!?!?』

桃太郎はそう叫ぶと、赤鬼の首筋に先ほど突き立てた脇差を、上から思いきり踏みつけました。

「っぬぉわぁぁぁーーーーーーーーっ?!?!?」

脇差は赤鬼の身体の奥深くまで突き刺さり、そのまま断末魔の叫び声を上げてその場に倒れ込みました。

赤鬼が大の字に倒れたその近くには…

先ほどまで崖に向かって宙を待っていた…

古びた着物が落ちていました…。

…………………………………………………………………………………………………………………

その場にいた誰もが、倒れた赤鬼を注視していました。

しかし赤鬼は、再度ゆっくりと身を起こします。

「…にっ…、…人間よ…。…おっ…お前の力…、…しっ…しかと受け止めた…。」

桃太郎は息を飲みました。正直もう戦う力は残っていなかったのです。

すると赤鬼は笑みを浮かべました。

「…わっ…ワシの…まっ…負け…だ…。。。」

そう言うと、後ろに大きく倒れ込みました。

『…やった…。…とうとうやりやがった…。』

『…やったのね…。』

『…桃太郎っ…。』

猿、雉、犬が桃太郎の背中に呟きました。桃太郎はゆっくりとこちらを振り向きました。

『…やった…。…赤鬼を…、赤鬼を倒したぞぉぉぉぉーーーーーっ?!?!??!』

『桃太郎っ!!!』『桃太郎っ!!!』『桃太郎っ!!!』

三人は桃太郎に駆け寄り、抱き合い心の底から喜び合いました。

こうして桃太郎と赤鬼の極限の中の壮絶な死闘は、今まさに幕を閉じたのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?