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「D.P. -脱走兵追跡官-」が韓国ドラマのクオリティを見せつける!社会派とエンタメのバランスに脱帽状態



先日、このドラマを観終わりました。

「D.P. -脱走兵追跡官-」

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あらすじなどはこちら


このドラマは韓国ドラマで、昨年Netflixで配信が開始した作品です。Netflixの韓国ドラマはよく「Netflixオリジナル」と表されますが、その中にも2パターンあって、韓国の放送局やケーブルテレビで放送された作品がNetflix独占で配信されるものとNetflixが出資し完全にオリジナル作品として制作しているものとあります。このドラマは完全なNetflixオリジナルなので後者のパターン。


この作品、昨年配信開始時にはNetflixからのプッシュもあって知ってはいたのですが、私自身が戦争や軍隊を扱った作品が辛くて苦手なため配信開始時はスルーしてしまっていました。が、

毎年5月頃に行われる韓国の映画やドラマの大きな賞の一つ、百想芸術大賞のドラマ作品部門にこの作品もノミネート。ノミネート作品を「観れるものは観ようかな」と思って「どれから観ようかな」とTwitterでつぶやいたところ、この作品をフォロワーの方数名からオススメ頂いたので観てみることに。

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そして作品を最終回まで観て、自分の苦手意識を大反省することになりました。それくらい、

単純にエンターテインメント作品として抜群に面白い作品に仕上がっています。

テーマは非常に重いですが、「観てよかった」と心から思える作品です。その理由も併せて、感想を書いていきたいと思います。

※ここから先は思いっきりネタバレになりますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

※このドラマには暴力、いじめ、パワハラのシーンがあります。鑑賞にはご注意ください。

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(観終わって数日経つけど、まだ後引いてる。。。)

そもそも韓国の徴兵制度(兵役)って、韓国エンタメなどでもよく話題になりますが、実際にどういうところなのかは本国の方でないと具体的にはあんまり分からないところです。

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というか、「軍隊だし相当辛いだろうな」っていうのはもちろん分かりますけど。この作品は、そのあたりがリアルに描かれています。ここをリアルにしないと作品が訴えたいことの説得力がないですもんね。他の方のレビューや出演者のインタビューなんかを読むと「再現がリアルで、自身の徴兵時代を思い出した」などの声もあったようです。

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最初のシーンからパワハラ・暴力のシーンなんですよ。それもシンプルながら非常に緊張感があります。

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1話を観て主演のチョン・ヘインはなかなか演技が上手くていい顔してるし「いいな」と思ったものの、

「やっぱ無理かもしれん」と思いました。

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「脱走兵」というテーマ自体がもう辛いのが目に見えて分かるじゃないですか。。。やっぱり1話は重い感じがあって、「これ22話ぐらいまであったら観れんな」と思ったんです。
で、この作品の話数を確認したら、全6話と分かります。この作品、Netflixオリジナルなので本国で放送される作品とは前提が違い、短いシリーズなので「ならまだ大丈夫かな」と思えました。

で、2話に入るとちょっと様子が変わってきます。

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この同じくD.P.の先輩でジュノとコンビを組むことになるホヨルというキャラが出てきてから、この作品が非常に観やすくなります。このキャラが飄々とした割と明るいキャラクターで、ジュノとコンビを組んで脱走兵を捕まえる話になっていきます。そこがなかなかうまい作りになっていて。

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このク・ギョンファンがまた演技とても上手いのです。チョン・ヘインとのバランスもいい。バディ物として見せるような作りになって、ただ重苦しい現実を描くだけでなく、エンタメ作品としても俄然面白くなっていきます。

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そこで1話完結物のような流れになっていき、と言っても数話なのですが、ここで数名の脱走者のパターンを見せていきます。ちょっとドラマに安定感が出てきたところで

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次第に一番重い問題となる、軍隊内でのいじめにより精神的に不安定になったある兵士の脱走を追う大きな展開に発展していきます。恐らく一番描きたいテーマはここ。1話から登場する兵士を置いて感情移入をさせておきながら、後半から非常にスリリングかつ重い展開となっていきます。

私がこのドラマで最も感心したのは、そのドラマ自体の作りと社会問題を扱う制作者としての姿勢です。

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恐らくこのドラマのあらすじを読んだだけで、「辛いのはきついな」という私のようなタイプの者でも最後まで観れるように、ただ重いだけではない展開を踏まえることで、ドラマ自体の面白さを追求していきます。ここが凄いんですよね。

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全話観終わってからこのホヨルのキャラは原作の漫画にはおらず、ドラマで追加されたキャラだと知ったのですが、これは本当に大成功だったと思います!!ちょっとギャグというかコミカルさガ入ることで重いだけじゃないリズムが入り、ドラマに深みが出るんですよね。

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このエンターテインメントとしての幅の広さ。そして重いテーマとエンタメのバランス。これが無かったら私は恐らく脱落していました。もちろん社会問題を真正面から真面目に描くことも大切ですが、エンタメの要素を入れることで真摯さを失うこともなく、ドラマとしてもクオリティを上げようという姿勢。凄いですね。これはちょっと気が遠くなるようなレベルです。いうのは簡単ですが、実現するのは非常に大変だと思います。

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日本も、いや今やハリウッドですらこういう作品はもしかしたら制作が難しいかもしれません。ネットなどにより観客の批判やツッコミを受け止めがちな風潮を気にするような制作側だったら恐らく企画の段階でも通らないかも。しかも、過去から続く自国の闇を描く作品です。これは観客を信じてないとできないことだと思います。しかも一番観てほしいのは恐らく兵役で辛い思いをした方や家族、そして変わってほしい軍なのではないかと。作品の最後にそのメッセージシーンがあります。

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そして、役者の演技。これは言うまでもないのですが、主演ジュノを演じるチョン・ヘインの引きの演技と、先ほど書いたホヨルを演じたク・ギョンファンの人間味ある巧みな演技に加え、

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上官を演じたこの二人もただ高圧なだけでない演技を見せることで感情移入を徐々にさせていくあたりも上手いですし、

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なんといってもこのいじめにより精神をおかしくしてしまうソクポンを演じたチョ・ヒョンチョル、この彼は

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私、昨年に「連続ドラマ「調査官ク・ギョンイ」で毎週観てたんですよ。なのに2話が終わるまで彼と気づきませんでした!!もー韓国ドラマ、またこの展開よ!演技力が凄いのよ。

でTwitter漁ったら、

彼も思いっきりユ・ジェミョン、オ・ジョンセ系統でした。カメレオンどころじゃないよ。もう顔が違うじゃん!!ドラマ内で痩せてるし。

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このソクポンというキャラに込められた作者や制作側の思い。これは非常に重いです。ラスト含め。けどもう彼がどうなるか心配で続きが気になって仕方ありませんでした。このドラマを「途中脱落しちゃうかも」とか思ってた自分が。この展開の引きの強さは韓国ドラマならではですよね。そして最終回を観終わっても数日は引きずってしまうあたりも。彼もこの演技で百想芸術大賞の助演男優賞にノミネートされています。

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昨年は同じ韓国でNetflixの完全オリジナルドラマ「イカゲーム」が世界中の話題を席巻しました。こちらも私は苦手なジャンルでまだ観てないのですが、「やっぱり観ないとかな」と思ってきました。苦手意識は良くないですね!
「もしかしたら昨年話題になるべきはイカゲームじゃなくてD.P.だったのかな」と作品を観て思いました。「D.P.」は扱っているテーマだけではなく、エンタメ作品として一級品であることは間違いないと思います。「イカゲーム」も百想にノミネートされているし、とりあえず同じくノミネートされているちょっと別の作品を観てから検討しようと思います。
韓国ドラマ、観たいのいーっぱい溜まってるんだよね(笑)

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「D.P.」はシーズン2の制作も決まっています。観る前はあれほど「苦手なんだよな〜」とか思ってた自分が、今やシーズン2が楽しみで仕方ありません!!

「今面白いドラマは抑えておきたい」方にはまずオススメしたい作品です。気になった方はぜひ観てみてください!

おまけ

このドラマ、OPがほんと毎回観るたびに胸にきてスキップできないのよ。。。

おまけ2

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ク・ギョンハンはこのドラマで韓国で大ブレイクしたらしいっす!!


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