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Netflixドキュメンタリー「チアの女王」で考えさせられた事盛り沢山レビュー

1月にNetflixにてこのドキュメンタリーにハマってました。


「チアの女王」

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これは、アメリカのテキサス州にあるナバロ大学というアメリカチアリーディングの強豪校のチアリーディング部に密着したドキュメンタリーです。

チアリーディングといえば、海外の青春映画やドラマはわりとお馴染みの存在。

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特にハイスクール物によく出てきますが、スクールカーストの頂点的イメージで華やかでアイドル的な印象。

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このドキュメンタリー、シーズン1が公開された当時、アメリカで大評判だったそうで、私もずっと気になっていたのですがなかなか観る機会がなく。
今年たまたま「年明けに観て元気と気合をもらおうかな」ぐらいな軽い気持ちで観始めたのですが、

全然とんでもなかった!!!

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本当にとんでもなくハードな内容のドキュメンタリーで、

私チアのイメージが完全に変わりました!

と同時に、

10代のドキュメンタリーの作り方として非常に考えさせるものがありました。

というわけで、私なりに感じたことをnoteにまとめてみたいと思います。

※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、結末を知りたく無い方はご注意下さい。

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まず、このドキュメンタリーで肝なのは彼女の存在。

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総コーチに就任後、ナバロ大学を常勝校にのし上がらせたモニカ・アルダマ。

彼女の元に全国から集まった生徒達が「ハード」なんて言葉が軽く感じるほど非常に厳しく大変な練習をこなし、優勝を目指す生徒達の日常が描かれます。

なので基本スポ根といえばスポ根ドキュメンタリーなのですが、

とにかくパフォーマンスがハンパ無く凄いんです!!

作品中でも紹介されますし、YouTubeにもたくさん動画があがってるのでわかりますが、私の知ってるチアリーディングの100倍くらい凄かったです!リフトとかバク転があるのは知ってましたけど、このパフォーマンス

どこ観ていいか分かんないじゃん!!(笑)

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パフォーマンス観た後にこんなポーズ観ても、もう麻痺しちゃって簡単に見えちゃうくらい。実際は難しいはずだけど。でももう本当それくらい凄いんですよ!!

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リフトなんて当たり前。女の子がポンポン宙に浮いて投げ飛ばされて、キャッチされて、男子もバク転するわダンスするわ何人も下で支えるわ。上でも下でも常に誰かが宙に浮いてるし!

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しかも男女共に動きがめちゃくちゃキレイで力強い!

そして私はこれを全然知らなかったんですが、

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私が驚いたのは、チアリーディングがアメリカでは完全にビジネス化していて、物心ついたころからスクールに通う子達がたくさんいること。子供達からしたらカレッジの全国大会に出るような選手はスターのような存在。日本にもあるとは思うのですが、規模が違うような印象を受けました。

なのに、チアリーディングは大学を卒業後はほぼ続けていく術がありません。本当に人生の一時だけにすべてをかける競技なんです。

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で、なんでこのドキュメンタリーがそんなに面白かったかと言うと、そこに集う生徒たちは私が持っていた「チア」のイメージとはかけ離れた子たちばかり。非常に貧しい家庭で育った子、親が育児できず祖父母に育てられた子、自分を抑えることができず非行に走る子など。
それぞれ「生きてくるのさえ大変だっただろう」というような子たちがナバロ大学に集い、モニカの指導を受けて練習を積んでいます。

そこに出てくる子たちはとても個性的。

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それぞれ一人ずつ語りたくなるくらい、性格も個性も違います。けど、目標は一つ。全米チアリーディング大会の優勝です。


特に私がハマったのがこの子

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ガビ・バトラー。チームの中でも絶対的な人気とカリスマを誇る、まさにチアをするために生まれてきたような子です。

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彼女は既にチア界では人気の子で自分のインスタグラムやYouTubeチャンネルを持ち、子供達からはあこがれの的のような存在です。

彼女を観ていると、その圧倒的なスキルと安定感、なにより演技中の自信あふれる態度に目が釘付けになります。

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こういう子、日本でももっとこういうタイプの子が人気出てもいいのにな~と思いました。エキゾチックなイメージで褐色の肌でとても健康的。
理屈じゃなく目が行ってしまう子っているんですよね。彼女は親が過保護とは言いませんが、かなりコントロールしてチアに打ち込んでいる印象。
口うるさい親にいろいろ言われながらも、非常に冷静に自分の将来を考えています。

対照的なのが

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このレキシー。過酷な育ちのせいか、ナバロに来るまでは非行を繰り返してきたような子。素晴らしい才能があり、モニカもスタメンに選ぶほどの逸材なのに、考え方が短絡的ですぐに危なっかしいというか。技術が素晴らしくても、やはり内面も求められるスポーツだとよく分かります。

で、このドキュメンタリー

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シーズン中に起きる出来事が本当に劇的で。スタメンの選考から信じられないくらいハードな練習、そして肝心な大会の様子まで。

シーズン1はコーチのモニカと共に先に書いたメンバーのインタビューやコーチングの様子から、特に後半になると大会までの鬼のような練習。

そして最終回はもちろん、全国大会になるのですが、この最終回だけでも信じられないくらい劇的で、

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まずもって一番大事なデイトナの大会がまさかのアメリカチアを牛耳る団体からの取材NGで撮影クルーが入れず素人がスマホで撮ったみたいな映像しかない!!

そんなことある⁈せっかくの決勝のパフォ映像が!!

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その団体が契約してるチャンネルサービスでしか良き映像では観れないみたいだけど。

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パフォ中に生徒が怪我して中断→やり直しみたいな展開で凄いドキドキしました!!本当に大変な競技です。決勝のガビちゃんをもっとちゃんと観たかったな。

そしてシーズン2はさすがにもうちょっと落ち着いてるかと思ったら、

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シーズン1が全米中で大人気になり全国的に知名度が上がったナバロ校。モニカも選手も完全にセレブのよう。そこに対抗するトリニティというライバル校にもしっかり密着するようになり、この2校の激闘が焦点となります。このトリニティのコーチは黒人男性で、まだ就任してそれほど年月も経っていない中、どうするのかも面白かったです。

そしてなんといっても驚きすぎて言葉も出なかったのが

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ナバロ校のメンバーで非常に明るさと人の良さで一番といっていいほど人気だった選手、ジェリーが未成年男性への性犯罪容疑で逮捕されてしまうんです。本当に本当にびっくりして、その事について取り上げた回は観終わった後呆然としてしまいました。彼は非常に貧しい家庭から育った子で、このチアでの努力から大学の奨学金を得るようにまで成長したような子で。

恐らく誰も予想してなかった事だと思います。当たり前か。なんというか、この回はとても辛かったです。被害にあったのは同じくチアリーディングをしている双子の男子学生ですが、インタビューに応えています。そこで浮かび上がるのは、チアリーディングに潜む闇。私は観ていてアメリカの体操界に起きていた女子選手への性的虐待の問題が少し頭に浮かびました。もちろんこの件は生徒同士の事なので全然違うのですが。

ナバロ校にとっても打撃は計り知れなく、大会前にモニカはもちろんメンバーにとっても大変辛い出来事になってしまいました。

また手塩にかけて育ててきた生徒と意思疎通が上手くいかず、誹謗中傷をあびて傷つくモニカの姿も映しだされます。

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日本にもこういうスポーツしている10代の子たちのドキュメンタリーってあると思うのです。
数多く見ているわけではありませんが、私が見かけたテレビの物などは、どうしても友情や根性的な部分が強調されたり、生徒の内面にフォーカスしすぎたり。
でも、このドキュメンタリーでは私には全く違う感覚でした。視点がとても一定でクール。べたつかず、一人一人を誇張して写しません。
10代後半から20代前半なので大人ではありますが、一定の距離を常にとり、インタビューシーンや練習シーンも甘い音楽が流れたり、変なナレーションは入りません。
もちろん生徒全員を追うことはできないので、特定の生徒に限定されはしますが、その生徒に対してもダメなところはひたすらダメに映りますし、生い立ちも包み隠さず話します。
本人の語っていることを冷静に流し、起きた出来事を淡々と追っていきます。

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総コーチのモニカについてもそれは同様。本人や夫のインタビューなどもありますが、基本は彼女に対しても一定の距離を置いて描いています。
そうすることで、なぜ彼女がこれだけの成績を上げることができるかが逆によくわかります。
生徒に対してとても厳しいです。どなったりするわけではありませんが、要求が非常に高い。練習はとことん練習させます。

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ではなぜモニカについていくのか。生徒は口をそろえて「モニカだからついていく」と言います。それはなぜか。
こんなに厳しいのに。ケガばかりで肉体の限界まで酷使するのに。

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生徒に与える絶対的な安心感。そしてブレない指導。目標に向かって努力することの大切さ。
その分自分にもとても厳しい。大きなプレッシャーと戦っています。
そして引き受けた子たちの将来やチアでの経験が子の人生にとって、非常に大きいことをとても自覚しています。
日々の積み重ねが非常に大事だと教え込みます。
一人一人について細かく観察し、スタメンメンバーの選出には非常に頭を悩ませ、技術はもちろん、精神的な面についてもとても考えています。

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彼女の両腕とも言えるサブのコーチもとても面白いです。

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この指導について、私自身、自分の息子にすら「できるかな」と思わせられたくらい献身的です。けど、その献身の仕方は精神が未熟な子供と分かっていながらも、一人一人を変に子供扱いせずに、自分で考えさせ、対等に扱うというような印象でした。

もちろん優勝という目標があるので、チーム一体にことの喜びもあるとは思うのですが、つい上から目線で指導してしまいがちになりそうな中でこの姿勢を保つのは大変なことです。

モニカのこのうちに秘めた情熱や生徒達に対する冷静だけど愛がしっかりある対応。私も観ていて学ぶところがありました。

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どうしてこのドキュメンタリーがこんなに人気があるのかと思ったんですけど、先に書いたどんな事が起きても常にこの冷静さを保ちながら、ありのままを伝えるような内容だったからじゃないかな、と思います。華やかな面では無く、モニカも生徒達も非常に悩み、練習を積み、チアリーディングに打ち込む事で一瞬だけど一生の喜びに向かって日々を送ります。

生徒の過酷な状況は今のアメリカを映し出す部分が大きかったのかもしれません。その姿に感情移入する人達が多かったのではないかな、と。

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それと同時にこのモニカの指導やインタビューに見える強靭な意志と生き方も人々にいろいろと感じさせるものがあったのではと思います。

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長々書いてきて全然まとまりませんでしたが、非常に面白くいろいろと考えさせられたドキュメンタリーでした。とにかく競技めちゃくちゃ大変なことになってますので、気になった方は良かったら観てみてください!


おまけ

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モニカ、このドキュメンタリーで人気になって、なんとDWTSに出ていた。

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