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「ザ・ディプロマット」もしかして今一番観るべきドラマ?外交について描いた異色の政治ドラマが面白い

昨年末にこのドラマを観ました。

「ザ・ディプロマット」


あらすじ等はこちら


昨年からNetflixで配信が始まった海外ドラマです。結構地味なドラマだと思うので、私も配信開始当初は全然気付かなかったドラマなのですが、

今年のエミー賞やゴールデングローブ賞で主演のケリー・ラッセルが女優賞でノミネートされていて、「意外とノミネートされているよね」と思って気になってきた作品でした。
1シーズン10話と割と短いので(韓国ドラマ感覚だと笑)、「サクっと観れるかも」と思って観始めてみたら1話から面白かったので、年末に観終わることができました。でも昨年の年間ベストを考える時期には間に合わなかったので、レビューは今年に回しました。

この作品、地味といえば地味なのでたぶん観ている人はだいぶ少ない気がします。
政治ドラマは私は普段全然得意でないジャンルですが、観始めてみると結構大事なことを描いているというか、特に「今観ておいてよかったかも」と私は思ったので、短めにはなりますが感想を書いてみます。

※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、ドラマの詳細や結末を知りたくない方はご注意ください。

(GG賞のケリー・ラッセル素敵でした)

外交についてあんまり考えたことがなかった

このドラマで「なるほど」というか新鮮に感じたのが、外交について描いているところです。あんまり私が深く考えたことがなかったこともあって。ここでは外交の仕事と外交に携わる人に求められる事についてなどが題材になっています。

主人公の女性ケイト・ワイラーは、元はアフガニスタンなどに赴任経験があるかなりやり手の外交官。見た目の線の細さや美しさとギャップがあって、中身はかなり硬派なタイプ。そんな彼女が抜擢されるのが英国大使館の任務。英国にとっての「アメリカの顔」となるわけです。

外交官の仕事や大使館の仕事って、分かっているようであんまり詳細まで理解が及んでいなかった私は、このドラマでその仕事の一面を見ることができた気分になりました。
話の筋はともかく、仕事の流れや必要なスキル、求められる役割について「しっかりと描いているのでは?」と思います。

大使館のトップである彼女は自国の利益と立場を発揮し、大統領をはじめとした上役や他国の外交官とそれぞれの国の対面や思いが出た交渉に伴っての話の進め方、時には自分の国のトップとのやり取りや説得も必要になります。
外交官や大使館の動きで「国と国との関わり方が変わってくる?」とまで思わせる、非常に重要な仕事だと認識させてくれます。
頭のキレや有能さはもちろんのこと、こういった対外政策の仕事は話し方、人柄、説得力を持てる人物かが物をいう職業だというところが面白くて惹きこまれました。

面白かったのが、英国大使館に決まるとVougeの撮影が待っていたところ。その撮影を嫌がるケイトのうんざりした感じが良くて。でも、今ってこういう仕事も必要なんですよね。ファーストレディや注目される女性政治家が表紙を飾ることも珍しくなくなってきたので。
撮影現場から早く逃げ出したいケイトの雰囲気にちょっと風刺も込められていると思います。

政治とはやっぱり人間関係

このドラマを観て改めて思ったんですけど、「政治って人間関係の世界だな」と。それもパワーの世界なので濃くて、私はそういう事が本当に苦手なので「うっとうしい」というか(笑)。相手の性格や考えて仕事の仕方などを見ながら会議したり交渉し、その中で自分の持っていきたい方向に話を進めなくてはいけない。
なので、一見「人との駆け引きが巧みな人が有利」に見えるかと思いきや、それだけではダメで「情熱や人柄も物を言う」というあたりも見せてくれるのが逆にリアリティがあるように見えて面白かったです。
逆にメンツをつぶされたり気に入らない者が相手の場合はやり込めたり恥をかかせたりなど、そういう面ももちろんあります。

あと人だけではなくて「国」としてのメンツというか、例えばこの物語はイギリスの空母が何者かに爆破される事件からスタートするのですが、それがどこの国からの仕掛けなのか分からず「イランだ」とあたりを付けて報復したいイギリス、応援を依頼され最初は引き受ける方向だったアメリカ、自分たちではないと主張するイラン、ではロシアかと推測する流れ。で、ロシアは「各国に対して脅威でいたい」として、、、。
今の世界情勢と完全にリンクさせてるところがあって、ちょっと見ながらうなってしまいました。私のような政治や国際情勢に疎い人間ですらつかみやすかったです。

ケイトは駐英大使として自国アメリカの大統領やイギリスの首相とやり取りしなければならないのですが、特にイギリスの首相がある人物の助言に従って行動しているというような背景は「うわー」って感じでした。論戦すべきはその背景の人物だったのね、みたいな。

そこに恋愛を絡める⁉︎


先ほど「駆け引きだけではない」と書きましたが、とはいえこのドラマでびっくりしたのはそんな切羽詰まった仕事の中で、恋愛の要素も入ってくるところ。

離婚する予定だったケイトと夫とのちょっと影がチラつく夫婦関係のもつれに、ケイトとイギリス外相との雰囲気が「あれ?」ってなって。「こんな時に?」と思いつつ、でも「こんなに緊迫して大変な状況だからこそ、起きそうかもしれない」というか。
あと大使館の部下のスチュアートとCIAのエイドラの関係など。でも、こういったところがないとずっと外交の話だとそれはそれで息がつまるので、ほっとするところでもあります。

ケリー・ラッセルの頑張りと脇キャストの魅力

ちょっとでも話についていけなかったりすると観るのがしんどくなりそうなこの政治ドラマをシーズン最後まで面白く観れたのは、ケイトを演じるケリー・ラッセルの頑張りがやっぱり大きいかな、と思います。

ケリー・ラッセルといえばまだ「フェリシティの青春」が真っ先に浮かんでしまうような私ですが、その後映画では「ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた」も良かったし、「猿の惑星」にもM:i:lll」にも「スター・ウォーズ」にも出たし、

ドラマ「ジ・アメリカンズ」では共演したマシュー・リスも結婚したし(私はシーズン1で挫折したけど笑)。そんな彼女のいいところが光る演技だったかな、と思います。

中身が硬派で真面目で、だけど頭が固すぎるわけでもない、人を説得したりするようなハートもあり、困った旦那ともなんだかんだ協力し合う。彼女が駐英大使に任命されたのにはもっと大きな職に指名するための見極めのためですが、それだけ有能であり、それに足りそうな人物と思わせる説得力が彼女の演技にはあります。もう私も「ケリー・ラッセルといえばこのドラマが浮かぶようになるかな」というくらい、いい演技で各賞のノミネートをつかんだんではないかな、と。ケリーは今回製作総指揮にも名前があるので意気込みは相当だと思います。

またクセのある同じ外交官のダンナを演じるのは洋画などでよく見かけるルーファス・シーウェル、ケイトといい雰囲気になる外相デニソンを演じるデヴィッド・ジャーシー、他にも「どっかで観たことあったような」みたいな役者を脇に揃えていて、それぞれ派手ではないですけどいい演技です。イギリス首相とアメリカ大統領役は誰がやっているか、観てみるのも面白いと思いますよ。

「ホームランド」の制作陣 こだわりが見える

この映画、制作のトップはデボラ・カーンという女性で海外ドラマ「ホームランド」も制作した方ですね。あれももはや懐かしい域ですけど、あのドラマも主演のクレア・デーンズの熱演と一時期先が気になって仕方なかったドラマでした。
「政治や世界情勢の仕事の間で揺れる女性のドラマ」ということで似ている雰囲気があって、制作側もこだわりを持って作っていると思います。「ホームランド」ってしかもアルカイダの話だったよな~。最後まで観てないんですけど、すみません。
デボラ・カーンは今Netflixと独占契約しているそうなので、 「ザ・ディプロマット」 以外のドラマも出てくるかも。優秀ですね。

「え?」っていう終わり方 続きが気になる

この「ザ・ディプロマット」 、ラストが「え?」っていう終わり方なので、このままシーズン2がないと困るんですけど!(笑)。たぶん大丈夫だと思うけど、海外でもあんまり話題になってなかったと思うので、ケリーのノミネートパワーで何とか次も作ってほしいです。最近私も観ていた「マインドハンター」(フィンチャーが金かけすぎたドラマ)がついに正式に終わることになったらしいので(あんな尻切れトンボなところで!!!)、そういう事はないようにと願っています。

悲しいことに各地で戦争や内戦、そして虐殺のニュースが日々流れています。そこで苦しむ人たちの姿を見ながら胸が痛いのですが、「外交を正常化させる仕事ができる人の力がやはり頼りだ」と思います。その事を気づかせてくれるドラマでもありました。
この作品がそこまで切り込んで描けるか。現実は辛い状態が続いているので、少し希望を託しながら今後も鑑賞していけたらと思います。

気になった方はぜひ観てみてください♪

おまけ

キャストの相性、結構いいドラマだと思います♪

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