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定年退職したらもらえるお金(退職金)

公務員の退職手当は、民間でいうところの退職金です。人事院によると、退職手当は、職員が長期間継続勤務して退職する場合の勤続報償としての要素が強いものであり、国家公務員退職手当法に基づいて支給されるとしています。つまり長い間お疲れさまでしたというボーナスです。

地方公務員も定年になると退職金を取得できます。令和3年度に退職をし、退職手当を支給された公務員の1人当たりの平均支給額は全地方公共団体平均で約1,278万円、60歳定年等退職者に限ると約2,121万円です。
参考:令和4年地方公務員給与の実態 (soumu.go.jp)

私もこのままいくと退職金を取得できます。まだまだ先の話ですが、今までに手にしたことのないくらいの大金を一度に手にすることになります。有頂天になって、妙な使い方をしてしまいそうです。

また、大金を手にするだけあって控除や税制度も複雑ですし、個人型確定拠出年金のiDeCoや年金など老後の生活資金というくくりで考えると、もらうときの考え方も多種多様です。

地方公務員は、定年退職をしたときに退職金をどれだけもらえそうなのか、また、現時点の制度上で気を付けるべき点は何か、今回まとめておきたいと思います。

1 退職金(退職手当)の計算方法

公務員の退職手当にかかる、基本的な計算式は以下のとおりです。
退職手当=基本額+調整額
これだけだとシンプルすぎて、何も分かりません。

(1)基本額とは

まず基本額ですが、算定式は以下の通りです。
基本額=退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合

退職日の俸給月額とは、その名のとおり、地域手当など諸手当を含まない月にもらえる基本給のことです。

公務員は職位や年次に基づいて号給が定められており、号給に基づいて給料が支給されています。
参考:令和5年度国家公務員行政職俸給表

退職日に、自分がこの俸給表のどこにいるのかで、退職金の額が変わってくることになります。例えば課長補佐クラス(5級ー73号)だとすると俸給月額は408,300円です。

俸給に基づく給与の表は、国家公務員であれば人事院勧告に、地方公務員であれば条例で公開されています。なお、国家と地方でそんなに違いはありませんので、今回のnoteは国家公務員の俸給表を基に計算していきます。

次に退職理由別・勤続期間別支給割合ですが、民間会社と同様に、退職の理由が自己都合なのか定年なのか、はたまた処分によるものなのかで支給割合が変化します。

公務員は退職の理由に勤続年数を組み合わせて、支給額を決める割合としており、この割合も公表されています。その最大値は35年以上勤続し、定年退職または勧奨退職したことによる「47.709」となります。
参考:国家公務員退職手当支給率早見表

ここまでを例に当てはめると、定年退職間際の職位が5級73号で、35年以上勤めて勧奨退職した場合だと、約1947万円になります。(408,300円×47.709=19,479,584.7万)これが、基本額となります。

(2)調整額とは

続いて、調整額です。これは、在職期間中の貢献度に応じた加算とされており、その職位(部長、課長、課長補佐)によって額が異なります。

計算式は、人事院によると以下のとおりです

「在職期間の初日の属する月から末日の属する月までの各月毎に、当該各月にその者が属していた職員の区分(第1号区分~第11号区分)に応じて定める額(調整月額)のうち、その額が多いものから60月分の調整月額を合計した額です。」
参考:
退職手当の支給 (jinji.go.jp)

つまり、入庁してから退職するまでに、その人が一番高い職位(級)に在籍した月数に応じて、あらかじめ定められた調整額×60を退職金に追加しますというものです。

先ほどの例でいうと、例えば令和5年3月31日退職した人が、令和2年4月1日に5級(課長補佐)に昇格していた場合は、以下の通り調整額が加算されます。
①その人が一番高い職位に在籍した60カ月の算出
 ・令和2年4月1日から36カ月(5級でいた期間) 
 ・令和2年3月31日以前の24カ月(4級でいた期間) 
②退職手当の調整区分表から級に応じた額と在籍していた月数を60月分乗じる。
32,500円(5級の額)×36月+27,100円(4級の額)×24月=1,820,400円
調整額は約182万円となります。

ここまでの(1)の基本額と(2)調整額を合計したものが退職金の額です。
19,479,584.7+1,820,400円=21,299,984.7円
約2,129万円です。冒頭の全地方公共団体の60歳定年等退職者の平均が約2,121万円なので、非常に近い数値です。
計算式の参考:退職手当の計算例 (jinji.go.jp)

2 出世すると退職金は変わるのか

もうちょっと頑張って、さらに運もよく出世して本庁の次長クラスの8級、民間企業でいうところの本社の部長クラスの退職金はどれくらいなのでしょうか。

勤続38年で、定年退職間際の職位を8級40号として、月々の俸給468,000円です。先ほどと同様に、令和2年4月1日に8級に昇格して、定年まで勤め上げたとします。

まずは基本額ですが、俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合なので、468,000円×47.709=22,327,812円です。
次に調整額は、8級の額が59,550円、8級になる前の7級が54,150円のため、
59,550円(8級の額)×36月+54,150円(7級の額)×24月=3,443,400円
基本額と調整額を合計して25,771,212円です。

この約2,577万円と、先ほど5級で退職した場合の約2129万円を比較すると、448万円の差です。

これを高いとみるか低いとみるかは人によると思いますが、民間企業だと部長級と平社員で退職金に1000万円以上の差があることを考えると、公務員は退職金の格差はそんなにないのだと個人的には思います。
参考:部長とヒラで1000万円以上の差!驚愕の退職金格差が本誌調査で判明 | 週刊ダイヤモンドの見どころ | 週刊ダイヤモンド (diamond.ne.jp)

さらに言えば、本庁次長級の責任の重さや日々の業務の繁忙さを間近で見ているものとしては、もう少し差があっても良いのではないかなと感じます。

3 退職金にかかる税金と控除

さて、ここまで計算した退職金ですが、残念ながら丸々もらえるわけではありません。算定した金額から、所得税を取られることになります。

ただし、所得税の計算方法は、よくある速算表に当てはめてお終いではなく、多額のお金を特別に支払うためか、退職所得用の控除があります。最近話題にもなっていますが、この控除の式は、勤続年数に応じて控除の額が高くなるように変動するものになっています。

式自体はシンプルであり
在職年数が20年以下ならば、控除額=X(在職年数)×40万円です。
 ex:在職年数が15年ならば控除額は600万円
在職年数が20年超ならば、控除額=800万円+(X-20)×70万円です。
 ex:在職年数が38年ならば控除額は2060万円
20年を超えると1年あたりの控除額が、40万円から70万円に増えることになります。
参考:No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁 (nta.go.jp)

在職年数が長いほど、控除額が増えるため、長く働くことにインセンティブが働きます。これが、雇用の流動性を阻害して転職活動が活発にならず、賃金の上昇基調を押し下げているという意見もあり、退職控除の見直しも議論されているそうです。
参考:【退職金控除が改正!?】退職金「2000万円」は優遇措置がなくなるとどうなる? 引かれる税金を確認 (msn.com)

今現在は控除があるため退職金の控除を含めて計算すると、
2129万円-2060万円(在職38年分の控除)=69万円
さらに、退職金はここから更に半額にしてから速算表に当てはめるため、34.5万円です。これをよくある速算表に当てはめると、
34.5万円×5%=1.725万円で、2万円弱の所得税が源泉徴収されることになります。

あくまでも、机上のものであるため、万人に当てはまるわけではありませんが、退職控除の偉大さが分かります。

額面から少しの税金を引かれますが、算定した大部分が退職所得として支給されます。住宅ローンで借りる以外に、このようなまとまったお金を手にする機会はそうそうないので、どのように使うかは、支給される前に良く考えておく必要があります。

退職金以外にも、退職払い年金給付や人によってはiDeCoや財形年金貯蓄など、在職中に「老後のために」と、貯めておいたお金があるはずです。そのあたりの点は、また別の機会にどのように活用するか考えてみたいと思います。

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