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2023読書感想文②(新解釈 コーポレートファイナンス理論)

こういう面白い勉強ができるならば、経済学部もありだったなと心から思いました。

高校の勉強では近現代史が一番夢中になれたという理由で、政治系のコースも選べる法学部に進学しました。結果、大学で学んだことが生かせている公務員の職に就くことができ、全く未練はないのですが、この本を読んで、「もっと大学で経済関係の授業もとっておけば、視野が広がったかな。」と少し後悔をしました。

とても面白い本です。(以下、ネタバレと思われる個所があるかもしれません。)

1 3行で感想

コーポレートファイナンスについて基本から現在のトレンドまで網羅しつつも、教科書的な堅苦しさもなく、複雑な数式も出てこない。経済学や投資に興味のある人、資本主義に疑問がある人が知識を得られる本。

2 読み始めたきっかけ

個別株への投資を始めたこともあり、「決算書の見方」のような本をたまに読んでいます。前に読んでからしばらく経ったこともあって、Twitterでお勧めの本を調べていたら「新解釈 コーポレートファイナンス理論 「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?」(宮川壽夫著)が、面白いと流れていたこともあり、購入しました。

3 面白かったポイント①「資本主義って良い仕組みなの?」

資本主義って?と、子どもに聞かれたら、どう答えますか?
今いる日本は資本主義のはずで、それなりに幸せなので、良い仕組みだと思う。けれども、その理由を聞かれるとスラスラとは答えるのは難しい。この本では、資本主義の世の中は、おカネがぐるぐる回るため、世の中は豊かになるので良い仕組みではないか、と説明している(と私は理解しました)。

私を含めた一般市民は、給料から、生活費や税金を払って、残ったお金をビジネスチャンスを抱えた企業に投資をします。企業は事業を行って、投資した私たちが期待した見返り(資本コストと呼ばれています)を実現し、期待以上の稼ぎはさらなる事業に再投資します。

そして、思いつくビジネスチャンスがなくなったら、配当という形で、投資した人にお金を返します。投資した人は、そのお金を新たなビジネスチャンスを持っている別の企業に投資します。

こうやってお金がぐるぐる回っていると、誰しもに必ずチャンスがやってきます。この本では、「今日のチャンスを逃してもカネが天下を駆け巡ってさえいれば次のチャンスがやってくる。」と表現していますが、これが繰り返されると、期待された見返りが積み重なった分だけ、世の中の資本が増えている、豊かになっているということができます。

もちろん資本主義は万能ではないし、ビジネスチャンスが失敗に終われば、期待した見返りは手に入りません。ただし、投資をしてそれが回れば回るほど世の中は豊かになっていくと言われると、なんだか希望が持てます。それを聞くと、資本主義って良い仕組みかもしれないと感じました。

ただ、投資した分だけ返ってくれば、個別株投資でも苦労はしないわけです。リスクに応じたリターンが返ってくると分かっていても、じゃあどんなリスクなのか、どんなリターンなのかは事前に分かったりはしません。この本でも「世の中の事象はランダムにしか起きない」と表現されています。

4 面白かったポイント②「株価の変動がランダムだと嬉しい?」

株をやっていると、今日の自分の持ち株がどうなっているのか、見るときはいつもドキドキします。上がっているのか、下がっているのか、自分にとっては、無くしても惜しくない範囲でやっているとはいえ、落ち着きません。

そんな中、「株価の変動がランダムだと嬉しい?」と問われてもピンときません。もちろんひたすら右肩上がりであることが一番ですが、そんなことはあり得ないとも分かっています。

この本では、過去の繰り返しが未来を創ると言っています。朝起きて株価を見たら3%下落していた、これが普通のことなのか、異常なことなのか、それは標準偏差で分かることになります。

過去のデータから、平均的な収益率(1年間でどれくらいのリターンが得られるか)と標準偏差(平均値からの散らばり具合)が分かれば、自分が持っている株価が、明日どれだけの確率で上がるのか、来年どれだけの確率で下がるのかを知ることができます。
(本ではもっとわかりやすく詳しく説明しています。)

しかし、「95%の確率で、来週の株価はー6%~7%の間で収まる。」と聞いても、何も安心できません。「いやいや数%大損する可能性があるのか。」「確実に儲かる方法はないのか」など、突っ込みがあるかもしれません。ただ、知っているということは大きいはずです。

この本では、こうした理論を学ぶことは、暗闇の中でローソクの炎を持つようなものと表現しています。計算はできても明日の株価は分からない、けれども何をすべきかの見当はつく、そうすると自分の基準をもって意思決定ができる、それが大事である。

株価は誰にも読めず、でたらめに動いている。そうだからこそ、人は理論を学び理解しようと努め、他人の言いなりにならず、自分の基準で決断することができる。そう思うと、ランダムであるということは自律ができるということにつながっていることになります。

5 まとめ

他にも、印象的な個所が多くあります。
リスクを把握する目的は、大きなリターンを生むチャレンジをするためのもの。生起確率が数%のリスクをあげつらう官吏は賞賛されるでべきかもしれないが、経営者には向かない。(公務員にとっては耳が痛い…)

市場は効率的であるが、勤勉、知的、独創的なものに対して報奨を用意して待っている(「インベストメント」からの引用だそうです)

コーポレートファイナンス理論に会計の知識は必要か。(恥ずかしながら、この本を読むまでは、私も近いものだと思っていました。) など

挙げればきりがないほど、「なるほど」と思うことが多いうえに、個人的には、最近FPで勉強したことが多く出てきたりと、親近感が湧く個所もあったりで、あっという間に読み終わりました。

正直に言えば、読み終えましたが、分かったことはそんなに多くはないと思います。こうやって、noteに書いている半分以上の理由は、自分が忘れないように、少しでも頭に定着するようにと祈るためのものです。

それでも、この本のエピローグに書いてある通り、理論は知ったから終わりではなく、知れば考え続けることが可能になります。考え続け、疑問を抱くことに意義がある。自己満足かもしれないけれど、学ぶことには意義があるんだと、最後まで背中を押してもらえるような本でした。

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