猫との対話

マリコ 4. タイヤの傍を離れない理由

最近とてもご機嫌なマリコ。余り人が好きではないマリコがようやく私の夫にも懐き、私が散歩している時間帯を上手に狙って塀の上で待っててくれるようになった。

通りすがりの多くの猫好きさんたちは、わーーっ可愛いーー… と言って直ぐに猫に触れたがる。マリコはそれが大っ嫌いなのだ。だから「ミャー」ではなく、「ガーー!」と人間を威嚇して塀の奥へと引っ込んでしまう。

私はそんな猫特有の感覚が何となく分かるので、先ず猫たちと目が合ったらそっとテレパシーで「ご機嫌如何?」と話し掛けてみる。感覚の鋭い猫ならば、大抵「ミャー」と返事をしてくれる。

昨日私がマリコの縄張り近くを自転車で通り掛かると、案の定マリコが塀の上から目ざとく私を見つけて地面に降りて来た。
── あら、今日もご機嫌よろしゅう、マリコさま。

すかさず「ミャーン」と、ちょっと甘えた声で返事をくれるマリコさま。そして数分が経過すると私の自転車の周囲をクンクンさせながら、うろうろし始めた。
自転車が倒れるんじゃないかと言う程の勢いで額をガンガンタイヤにぶつけて来るので、「マリコ、危ないからやめなさい。」と言うとその瞬間、前輪と地面の隙間にバタンとお腹を見せて寝っ転がったまま動かなくなった。

── 寂しいの?マリコ。行かせたくないのかな、マリコ…。
── でも私ね、これからお昼ご飯を買いに行かなきゃならないのよ。

するとマリコは耳をピクンとさせながら「聴こえないわ」とでも言うように少しだけ細目をあけて、私の様子を探って来る(笑)。

可愛いやつめ…。

画像1

今年の3月頃、マリコが私の家のベランダに3匹の仔猫を連れて現れたので、マリコには家族が居る筈。でもマリコはいつもぽつんと独り、塀の上で太陽を見上げて鳴いている。

孤独を愛しながら、それでも心のどこかがすっぽりと空洞になったまま埋まらない…、どこか今の私の心境に似ている気がして私はマリコが他人(いえ、他猫?)とは思えなくなり、ついついかまってしまうのだ。

そろそろ私の自転車が寿命を迎えそうな勢い。今年の夏は家の更新諸々があり、昨年の夏からのほぼ一年間大きな出費を徹底的に控えて来た我が家だった。なのでタイヤのすり減った自転車もそのまま使い続けて来たが、一昨日運転中に一瞬枯葉にタイヤを取られ滑って転びそうになった。
そろそろ新車を買う時が来たが、今月は楽譜を書く用のデスクを購入しなければならないので、多分来月か年明けになるだろう。

そんな危うい自転車とは多分知らず、マリコは古びた自転車のタイヤと地面の小さな隙間から私の行動を可愛らしく妨害して来る。

── でも、もう行かなきゃいけないのよマリコ。またね…。

そう言うと、マリコはもう鳴かなかった。そっと自転車と地面の隙間から這い出て別の場所に移動し、私に背中を向けてそこで両足両腕を折り畳んだ。

♀ ── ふん、ニンゲンってホント勝手よね。


ふと、マリコの背中から声がしたが私はもう振り返らず、夕暮れ近くの賑やかな商店街へと急いだ。

この記事を書いていたらふと、moumoonのこの曲が聴きたくなってスイッチオン。
最近のmoumoonはメジャー歌手っぽくなってしまい、このYouTubeに見られるピュアな素人っぽさがなくなってしまった気がする。

英語の発音も好いけれど、それ以上に兎に角このみずみずしさがたまらない。


7 Nov. 2017 12:33 JST 😸

追記:
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