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「博士論文が書けない」とはどのような状態か?Part2(博論計画(プロポーザル)が立てられない編)

久しぶりの投稿となってしまった事情

 前回の記事から約3ヶ月が経過してしまいました。僕とリアルで交流のある方や、ツイッター(X)をフォローしてくださっている方はご存知かもしれませんが、家族の急な長期入院により、家事負担が倍増してキャパシティオーバーになっておりました。
 幸いにして、妻は1ヶ月ほどで入院でき、命の危険からも遠ざかりました。ただ、引き続き妻への負荷が掛からないよう殆どの家事を担っている関係上、クリエイティブな時間は1週間のうちに僅かにしか持つことができず、そのクリエイティブな時間も学会関係の仕事に費やさざるを得ませんでした。
 そんなこんなで、授業期間が終わるつい先日まで、しばらくnoteから遠ざかってしまっていました。

前回の振り返り

 前回の議論では、経営学分野で博論の執筆を許可される条件について整理した上で、「博論が書けない」という状態を3段階に分解しました。
 経営学分野で博論の執筆が許可されるのは、原著論文3本という話をよく聞きます。そのうえで、「博論が書けない」という状態を分解してみると理論的には次の3つの段階に分解することができます。すなわち、①博論計画(プロポーザル)が立てられない、②博論を構成する原著論文が書けない、③原著論文はボチボチあつまってきたが、大きな1本の筋にまとめられない、の3段階でしょうか。
 以降では、この3段階のそれぞれが、現実的にどの程度起こりうるのか、そして解決策はあるのかについて検討したいと思います。
 久しぶりの投稿なので(+その他諸々のタスク等など…の事情)、上記の論点を一気に記事にすることが難しいので、申し訳ありませんが上記の3段階を分割した記事としてアップさせて頂きます。以下では、まず①の「博論計画(プロポーザル)が立てられない」について。

博論計画(プロポーザル)が立てられない!?

 「博論計画が立てられない」という段階は、理論上は直面しうる段階ではありますが、突き詰めて考えると少々おかしな状況とも言えるかもしれません。なぜならば、殆どの博士後期課程(少なくとも経営学系)では、院試の時点で研究計画書の提出を求められるはずですし、(少なくとも建前上は)それに合格したからこそ博士後期課程に在籍しているはずです。
 それゆえに、この段階で躓いている院生は決して多くないはずですが、逆に言うと、修士(博士前期)→博士(博士後期)のタイミングで、"これだけは絶対にやらない方がいい"ということに果敢にチャレンジしてしまう院生を見てきました。サンプルは少ないですが、ある一定の期間、毎年コンスタントに見たような気がします。
 それは、修士論文で取り組んだテーマと全く違うことを博士課程で取り組もうとしてしまうということです。この罠に陥ってしまった人は、かなりの高確率で博士課程をフェードアウトしていく運命にあるように思います。(※ちなみに、僕の観測範囲はビジネススクールから博士課程に進んだ人に偏っている為、バイアスが掛かっていること承知でお読みください)
 それはなぜかと言うと、修士課程の2年間で蓄積してきた知識は割と馬鹿にならないからです。仮に修論の出来に納得がいっていないとしても、それは、修論のテーマそのものに問題があるとは限らず、テーマに基づく構成概念の選択、研究方法の設定、概念の操作化、分析結果に基づく考察、考察から導き出される理論的貢献の導出など、様々な点において改善の余地が残されているに違いありません。
 それにも拘わらず、「修論の出来に納得していない→テーマを大きく変える」という自殺行為に出る人が少なからずいらっしゃいます。しかし、繰り返しになりますが、修士課程の2年間で蓄積してきた知識は決して馬鹿にできません。それと完全に決別するには、5年-10年という年月をかけてピボットを繰り返す必要があるように感じます(経営学限定の話題として言及していますが、期間の長短は、経営学の中でも分野によるかもしれません)。

補足

 ※一応補足しておきますと、上記の記事とは対照的に、修士→博士で大きく研究テーマを変えて、見事博士学位を取得した研究者のことも複数名存じています(母校以外にも)。そうした方の経験へのヒアリングを総合して要約すると、指導教員の変更や共同研究との出会い、論文投稿の過程における優秀かつ献身的なシニアエディターとの出会いなどに恵まれていたようです。


中間まとめ

 以上のように、社会人MBA編に続くシリーズに続いて、予期せぬ事情によって、シリーズ化せざるを得なくなった「博論が書けない編」もシリーズ化せざるを得なくなってしまいました。
 次回は、博論を構成する原著論文が書けない編です。博論執筆前の院生を想定した記事なので、国内ジャーナルへの査読付き論文掲載を想定したテーマです。
 とは言え、なかなか難しいテーマですので、当座、博論執筆(提出)に向けた査読付き原著論文の執筆(投稿)に論点を限定しつつ、そのうちに国内ジャーナルへの論文投稿全般に話題を広げた記事も書いていきたいと思います。
 
 久々の投稿となってしまいましたが、今後もフォローをよろしくお願いします。
 

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